【トゥルーライズ】
製作年 1994年、米
監督  ジェームズ・キャメロン →  アビス タイタニック
出演  アーノルド・シュワルツェネッガー ジェイミー・リー・カーチス
【あらすじ】
 米秘密諜報機関オメガ・セクターの諜報員ハリー・タスカー(アーノルド・シュワルツェネッガー)
は、スイスの武器商人の館に潜入しコンピュータのデータを盗み、警備から激しい銃撃を受けながらも脱出に成功した。自宅に帰ったハリーはコンピュータのセールスマンという平凡な夫を演じていたが、妻ヘレン(ジェイミー・リー・カーチス)は退屈し、娘のディナは不良になりかけていた。そんな中、ハリーは核爆弾を入手したらしいテロリストの手がかりを探るため古美術商ジュノーのもとを訪れるが、帰りにテロリストの一味に襲われる。激しい銃撃戦の末、リーダーのアジズを追いつめたものの逃げられる。
 一方、ヘレンはサイモンという怪しい男と密会しているらしく、ハリーは2人が落ち合ったところを部隊を率いて急襲し正体を隠して尋問するが、ヘレンは夫を愛していると告白する。真意を確かめるべくホテルに呼び出すが、テロリスト一味が襲ってきて2人とも捕らえられる。アジズはハリーに核爆弾の所持を証明させようとするが、夫の正体を初めて知らされたヘレンは状況もわきまえず激怒する。ハリーは相手の隙をつき逃げ出すが、ヘレンは捕まってしまう。ヘレンを人質に逃走するテロリストの車列にハリアー戦闘機が攻撃を加え、ハリーはヘリから間一髪でヘレンを救出する。その直後さっきまでいた島で核爆発が起きた。
 アジズがディナを人質にマイアミのビルに立てこもっていると連絡を受けたハリーは、ハリアー戦闘機で現場に急行しアジズと死闘の末、ディナの救出にも成功した。1年後、舞踏会場にはスパイ活動に励むタスカー夫妻の姿があった。
【解説】
 キャメロン監督と今やカリフォルニア州知事のシュワルツェネッガーが3度コンビを組んだ超大作で、フランスの小作品が元となる企画をシュワルツェネッガー自身が持ち込み実現した。
 アーノルド・シュワルツェネッガーはオーストリアの出身で、ボディービルのヨーロッパチャンピオンとして渡米し、身体をさらに鍛える一方大学に入学し経営学と国際経済学を修めている。映画界もその筋肉美を放っておかず渡米直後から出演していたが、「イントルーダー/怒りの翼」のジョン・ミリアス監督の「コナン・ザ・グレート」(82年)とキャメロン監督の「ターミネーター」(84年)で寡黙なヒーローの演技が注目を浴びた。以後の活躍は説明するまでもない。本来の彼は寡黙ではなく陽気でおしゃべりが大好きなため、「ツインズ」(88年)「ジュニア」(94年)といったコメディーにも果敢に挑戦し、コメディーの才は本作品にもいかんなく発揮されている。シュワルツェネッガーの上司にスペクタクルの大御所チャールトン・ヘストン、情けない詐欺師サイモン役に「タイタニック」などキャメロン作品の常連ビル・パクストンが顔を見せている。
 V/STOL(垂直/短距離々発着)機の研究は1950年代から行われ様々なタイプが登場したが、実用化し現在も現役なのはハリアーのみである。イギリスのホーカー・シドレー社が1960年頃から実験を繰り返していたテスト機が基になっており、1号機は1966年に初飛行した。エンジンはロールスロイス社のペガサス・エンジンで、4個の変向ジェットノズルの向きを変えることにより、空中停止はもちろん固定翼機でありながら後退することも可能である。機体姿勢を安定させるために機首、尾部、両翼端にも補助ノズルがあり、微妙なコントロールを行っている。最大速度は音速以下だが、旋回中に推力変向ノズルを動かすことで小さな旋回半径で相手より優位な射撃位置につくことができ空中戦では強さを発揮できる。1982年のフォークランド紛争でハリアーと塩害腐食対策を施したシーハリアーは24機のアルゼンチン機を撃墜し、空対空戦での損失ゼロという成績を収めた。
 開発に資金を出していたアメリカも海兵隊の上陸・揚陸作戦支援のためにハリアーを採用したが、航続距離や搭載量に満足できず、マクダネル・ダグラス社(現ボーイング)が主翼をさらに大型化し複合材なども使って改良したハリアーUとも言えるAV−8Bを開発し、1983年から実戦配備した。主に強襲揚陸艦で運用されて支援攻撃、対地攻撃などの任務についているが、夜間戦闘用に熱映像装置を取り付けたナイトアタックハリアーや、機首にレーダーを搭載し空対空戦闘能力を向上させ艦隊防空も行えるAV−8B+などのタイプもある。
 この作品には本物のハリアーも登場するが、シュワルツェネッガーが乗っているものは実物大の模型で、「アビス」で潜水艇の実物大の模型を作ったスタッフが実際のハリアーから型を採り繊維ガラスなどの素材で完成させたものである。