【バック・トゥ・ザ・フューチャー】
製作年 1985年、米
監督  ロバート・ゼメキス
出演  マイケル・J・フォックス クリストファー・ロイド リー・トンプソン
【あらすじ】
 1985年、マーティ・マクフライ(マイケル・J・フォックス)は、風変わりなブラウン博士(クリストファー・ロイド)が行う夜中の実験に立ち会うこととなった。スーパーの駐車場に現れたデロリアンはタイムマシンに改造されており、時速140qに達するとタイムトラベルが可能になる驚異の車だった。しかし、実験中博士にだまされたテロリストが襲ってきて博士は撃たれ、マーティはデロリアンで逃げているうちに1955年にタイムトラベルしてしまう。
 30年前のヒル・バレーの町で偶然にも自分の父親に会い、思いがけず父親が母親と知り合うきっかけを邪魔してしまう。この時代の博士にようやく会うことができ、1週間後の落雷でタイムトラベルに必要な電気も得られることがわかった。だが、父親と母親の出会いを妨げたため少しずつ未来が変わり始めており、マーティは2人のキューピッド役を演じなければならなくなった。内気な父親をけしかけ、マーティに一目惚れしてしまった母親をなだめ、ビフ・タンネンの邪魔をかいくぐり、運命のパーティ会場でようやく2人をくっつけることに成功した。一方、博士は落雷する時計台の前で作業に余念がなかったが、マーティは博士に未来の悲劇を手紙で知らせようとする。しかし、博士は未来を知るとろくな事はないと破いてしまう。風が出てきてケーブルが外れるが間一髪で接続し、デロリアンは1985年にようやく戻ることが出来た。撃たれたはずの博士も30年前の手紙をこっそり見ていたため無事で、マーティ家はなぜか以前よりもリッチでハイソな家庭になっていた。
【解説】
 日米で公開された年の年間興行成績1位となった本作品は、Part3まで製作され、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは人気のアトラクションともなっている。
 主演のマイケル・J・フォックスはカナダ出身で、82年から始まったTVシリーズ「ファミリー・タイズ」で一躍人気者となった。本作品は当初「メンフィス・ベル」にも出演していたエリック・ストルツ主演で大半の撮影が済んでいたが、明るいキャラクターを望んでいたゼメキスと製作総指揮のスティーブン・スピルバーグの意向で急きょ主役交代となり、フォックスは昼は「ファミリー・タイズ」を撮り、夜は本作品の撮影と大忙しだった。その後、映画では今一つぱっとしなかったが、TVシリーズ「スピン・シティ」ではゴールデン・グローブ賞やエミー賞を受賞して気を吐いていたが、98年パーキンソン症であることを発表し全米のファンにショックを与えている。
 ゼメキス監督は最初冷蔵庫をタイムマシンに考えていたが、子供が真似して閉じこめ事故を起こすのを懸念して取り止め、ガルウイングドアのデロリアンを見て直感的にひらめき、スポーツカーをタイムマシンにするアイデアが生まれた。デロリアンは元GMの副社長だったジョン・Z・デロリアンが独立して北アイルランドに設立したDMCで1981年から作られた車で、デザインはイタルデザインのジュージアロが手掛けており、そのため同時期に彼がデザインしたロータス・エスプリやいすゞ・ピアッツァによく似ている。ボディはFRP(強化プラスチック)をステンレスで覆った特殊な構造をしており、エンジンもリアに置かれている。順調に生産が続けられていたが、資金が不足したため未完成なまま市場に出され不評を買ってしまい、さらに、デロリアン氏が麻薬所持容疑で逮捕されたため会社は倒産。結局、8600台あまりが世に送り出されるに留まった。
【米ビッグスリー以外・その1】
 20世紀初頭、アメリカでは自動車メーカーが数百社も存在したがエンジンを他社から供給する小企業が多く、1929年の大恐慌でそのほとんどは姿を消してしまった。その中で1902年に設立されたマーモンは、第1回のインディ500マイル・レースで優勝したり、自動車技術協会から表彰されたりしてスピードと性能は申し分なかったものの市場には受け入れられず1933年に姿を消した。
 ドイツ系アメリカ人のデューセンバーグ兄弟が1913年に創立したデューセンバーグは、インディ500マイル・レースで3回優勝するなどレースカーとして知られるようになり、少壮の実業家イリット・ロッバン・コードによって買収されてからは超豪華なツーリングカーを生産するようになり、ハリウッドスター(2台だけ作られたスペシャル・バージョンはクラーク・ゲーブルとゲーリー・クーパーがそれぞれ乗っていた)や王侯貴族から寵愛を受け、富と名声の象徴として君臨した。しかし親会社のコード社が苦境に陥り1937年に倒産した。