起床・サービス朝食後、ロビーのHPでメールをチェックすると、昨日の発信メールの返信がたくさんあった。
実は、そのメールに積丹半島で撮った私自身の写真(6/8の写真集参照)を添付したのだが、それが結構好評
で
「先輩!ますますカッコイくなってきたっすねー!なんすか?そのカメラ目線は。 なまら羨ましいっすよー」
とか
「 いかにも北海道の勇者のような写真ですね。 それにしてもこの手の写真が君ほど似合うのはそうは居ませんぞ。」
というありがたいお言葉を頂戴したので、「そこまで言われたら仕様がない」と思い、写真屋で葉書サイズに
プリントしてもらい、きっと喜ばれるに違いないという確信のもとに、手持ちの住所録の範囲に送る事にした。
そもそも函館の名所は、ロープウェイのかかる函館山山麓に集中しているのだが、その辺りは以前にも行った
事があり、また坂道が多いこともあり、海辺の宝来町辺りを流している時、ふと、自転車屋が目にとまった。
そういえば、しばらく愛車の手入れをしていない。もしかすると昨日スピードが出なかったのは油切れが原因
かも知れないと思い、思い切って店の女性に頼んでみた。(どのように頼んで良いか分らず「実費で油を分けて
欲しい」というような事を言ったと思う) すると、主人は居ないが、適当にその辺にある油を選んで使ってくれ
という事になった。本当にありがとうございます。やはり自転車屋さんに悪い人はいない。
早速、低粘度のグリースを選んでスプロケット・チェーンリング、チェーン、ブレーキワイヤーなどに注油し、
ついでにそれらに付着した油と埃の固まりや汚れを持参のウェスで取り除きピカピカに仕上げた。
その奥さんから最近の自転車業界の様子やチャリダーの話題などを聞いた。とても面倒見の良い奥さんだ。
自転車屋さんの名前は「しまやサイクル」という。
その後、4km程離れた五稜郭公園の周辺をゆっくりと散策し、戊辰戦争の事等を想った。そういえば今回の
北海道旅行は、戊辰戦争の戦跡廻りでもあったのだ。
再度、駅方面に戻り、その戊辰戦争で戦死した土方歳三終焉の地とされる小公園を訪れた。
土方は若い女に人気があるらしく、前回来た時と同じく、その碑の前には綺麗な花が置かれていた。
写真を撮っていると、若い男が「自転車旅行ですか」と話し掛けてきた。彼はしばらく前から私の行動を見ていた
らしい。私の挙動から只の観光客以上のモノを感じて話しかけて来たという。
その話しによると彼は近くの漁村から出てきて市内の自動車整備工場で働いているのだが、五稜郭祭りでは
新撰組の一員としてパレードに参加しているのだという。永倉新八役だという。なかなか渋い役どころだ。
二番隊隊長という大幹部で組内随一の剣の使い手でもあり、確か大正期まで存命したという稀有な経歴を
もっている割には、近藤、土方、沖田などの陰に隠れている。そんな話をすると非常に喜んでくれ、今までは
自分の兄がトップでそのグループを主宰していたのだが、その兄が引退してしまったので、全く新規に自分が
中心になってグループを組織したいなどという計画を話してくれた。
そんな中に、結構な荷物を積んだ青年チャリダーが走り込んで来て話の仲間になった。その彼は福島から
自走で青森まで来て今日函館に上陸し、出発以来7日目だという。しかも自転車を始めてからまだ日が浅く
大して知識も経験もなく、いきなり長期の旅行に出てきたという。わたしとしては急に親しみが湧いてきた。
会津人としては幕府軍としての新撰組に親しみをもっており、予てより、どうしてもここには来なくてはと思っ
ていたという。こういう若者には更に親しみが増してくる。
その後、ツァーの過ごし方や自転車のトラブルお金の使い方などいろいろな話を交わしたのだが、私が昨日
からホテル泊まりだと話したところ非常に羨ましそうな顔をしたので、若い内からそんな軟弱な旅行をしては
いけないと諭してやった。彼はこれからライダーズハウスを探しに行くと言って先に出て行った。
その後、手持ちの文庫本が終わりそうなので、一冊買っておかなくてはと近場の本屋に行くと、なんとまた、
その彼に出会ってしまった。道路地図を探していた。地図はかなり高いのでどうしようかと迷っているようだ。
そこで「絶対必要だからここはケチってはいけない」とアドバイスをして買わせた。地図すら持たないで出てくる
とは無謀な事をするヤツだ。
店を出たところで改めてお互いの自転車装備をあれこれ話し合ったところ、彼が私のバックミラーを非常に気
に入ったようだったので、予備に持っていたモノを進呈した。早速装着してみるとドンピシャリで満足げだった。
そして、話が調理用の燃料に及び、私はそろそろボンベが終わりかけていて、どこかで買わなくてはいけない
というと、自分は今3つも持っていてお荷物になっていると言いながら、バックミラーのお礼の積もりもあったの
だろうか、ひとつ分けてくれた。本当に気持ちの良いヤツだ。その後無事に旅を続けているだろうか。
夜はホテル近くの居酒屋でイカのみそ焼きや帆立などの夕食を食べ、葉書の宛名書きをして過ごす。
問題はホテルでチェックしたメールにあった。
年下の友人のS君が、もし札幌に行くなら、自分の妻(彼女ともいささか面識がある)の実家がレストランを経営
しており、そこには妹がいるので、是非そこのハンバーグを食べて欲しい、というのだ。文面には丸山公園の
坂を登り切ったところにあるという事と店名が書かれていた。
心が動いたが、まだ最終的に決めるまでには至らず、念のためにそれをプリントアウトだけはしておいた。
これがまた後日、ドラマの原因になるのだ。 |