口頭試問の「一般常識」で76万1千おまけ(承前)
(前回)、口頭試問の応答例のうち、受験者本人に関するものを紹介するだけで力尽きたことをお詫びする。
今回は、昭和14年11月刊行『今度改正施行される 口頭試問の受け方答え方』から、当時の小学校卒業見込者が、どんな「常識」を求められていたかを紹介していく。
帝国憲法・教育勅語の影響下、さらに支那事変勃発2年を経過した「非常時」の教育成果だ。
そこでは、教育勅語の「一番大切と思う行い」に、「『克ク忠ニ克ク孝ニ』」の行い」が模範解答とされ、さらに「日本男子たる者の国家に対する心得」に対しては、
少年の時から身体を強健にし、元気を養い、成長の後は見事に徴兵検査に合格して陸軍又は海軍に入り、名誉ある護国の義務を果たすことが出来るように心掛けなければなりません。
と答えることが求められている。
今日(戦後教育)の目で見れば無価値・有害にも等しかろう。そんなモノを紹介する意味はあるのか?
受験者自身に対する試問に、「あなたは何時生まれましたか」と生年月日を尋ねるものがあって、本書にある答えが「昭和2年9月10日です」となっている。
その頃生まれた人こそ、紹介していく「常識」を備えているべきとされた人達となる。どんな人がいるのだろう?
お手軽なトコロでウィキペディアの昭和2(1927)年の項を見れば、その年生まれの著名人がズラっと出て来る。主筆の趣味で主だった方々を挙げる(カッコ内の+は没年)。
2月8日 - 青木日出雄、航空・軍事評論家(+ 1988年)
雑誌「航空ジャーナル」の編輯・発行、航空機事故のTVニュース解説で知られた。
3月2日 - 渡辺晋、実業家、渡辺プロダクション社長(+ 1987年)
進駐軍相手のバンドマンから芸能プロダクションを創設し、「ナベプロ帝国」と称された勢力を築き上げた。
3月30日 - 堤清二、実業家・作家・詩人(筆名・辻井喬)(+ 2013年)
80−90年代の都市文化を”セゾン文化”で支えた。
ミリタリ趣味、お茶の間で見ていたTV番組、西武百貨店(の本屋)・バルコ(の模型屋)・西友(日々の食品・衣料)と、主筆の現在に少なからぬ影響を与えたことになる人達がいるので驚く。
しかし、この人達は、この本の本来の対象者では実は無い。学年が一つ上なのだ。その証拠に、私の持っている本には、もとの持ち主が「昭和三年一月十三日です」と書き込みがなされている。
そこで4月以降生まれをピック・アップすると、
5月1日 - 北杜夫、作家(+ 2011年)
5月1日 - 吉村昭、作家(+ 2006年)
5月18日 - 土屋嘉男、俳優(+ 2017年)
6月2日 - 飯干晃一、作家(+ 1996年)
8月18日 - 城山三郎、小説家(+ 2007年)
9月24日 - 長新太、絵本作家(+ 2005年)
10月5日 - 舛田利雄、映画監督
10月18日 - 馬場のぼる、絵本作家・漫画家(+ 2001年)
10月19日 - 童門冬二、作家
11月29日 - 長谷川慶太郎、経済評論家、国際エコノミスト
12月7日 - 辻信太郎、実業家、サンリオの創業者
12月16日 - 平田昭彦、俳優(+ 1984年)
12月20日 - 金泳三、第14代韓国大統領(+ 2015年)
12月26日 - 藤沢周平、作家(+ 1997年)
ウィキペディアの昭和2年生まれの著名人には載ってなかったが(2019.1.19時点)、映画「仁義なき戦い」の脚本家、笠原和夫もこの年の5月8日の生まれだ。原作の飯干晃一と同学年だったのだ。
東宝の特撮映画でおなじみの人がいて、有名な小説家が何人もいる。サンリオ創業者がいて、本屋のビジネス書コーナーを席巻してた評論家に、韓国の大統領(このヒトが一番の出世頭か)まで!
昭和3年の早生まれを見る。
1月2日 - 池田大作、宗教家・創価学会名誉会長
1月10日 - 森毅、数学者・評論家(+ 2010年)
1月22日 - 網野善彦、歴史学者(+ 2004年)
2月26日 - 中山昭二、俳優(+ 1998年)
3月3日 - 小島功、漫画家(+ 2015年)
3月9日 - 土方巽、舞踏創始者(+ 1986年)
3月10日 - 渥美清、コメディアン・俳優(+ 1996年)
3月12日 - 花登筺、小説家・脚本家(+ 1983年)
3月18日 - 光瀬龍、SF作家(+ 1999年)
3月27日 - 田辺聖子、小説家
この顔ぶれもスゴイ。本屋のあちこちから適当に本を引き抜いて並べるとこんな感じになりそうだ。生乾きのコンクリートに足を踏み入れてしまったような恐ろしさすら覚える。
これらの方々がなした仕事(その幅の広さに眩暈がする)を思うと、敗戦による価値観崩壊の深刻さを強く感じるとともに、人の価値観や思想は、小学校を出てから形成されるモノだと思えてくる。
戦後の民主主義教育をキッチリと受けたヒトでも”ネトウヨ”になるのだから、学校教育の外側、社会と家庭と交友関係の方が大切なのだ。
こうして、この世代の著名人を挙げ、彼らはどんな「常識」を求められていたのかと、読者諸氏の興味を引く計略は、かえってそれが今日では無意味・無価値なモノに過ぎない事を、強く印象づける結果となってしまったのである。失敗だ…。
余談はこれくらいにして本題に入る。
二 一般常識の試問
一般常識の試問は、主に我が日本帝国の臣民として平生心得て置かなくてはならぬことをのこらず挙げてありますから、よくくり返して、覚えておかなくてはなりません。
以下本文の注意事項を見ると、とかく「覚える」と書かれている。暗記中心の詰め込み主義と云うやつか。
第一 郷土に関する試問※答えは略
一、(問)あなたの市長(町長・村長)はどなたですか。
○自分の市長とか、町長とか、村長の名は必ず覚えておきなさい。
二、(問)県(府)知事は何という方ですか。
三、(問)この町の人口はどの位ありますか。
○自分の市(町村)の人口も必ず覚えておきなさい。
四、(問)あなたの住まいの近辺にある名高い神社かお寺か、
景色のよい所があったら言ってごらんなさい。
○自分の近所の神社や仏閣については一通り調べておきなさい。
五、(問)あなたの郷里かその近所で名高い人がありますか。それは何という方ですか。
○郷里から出た学者、政治家、軍人、実業家のことは先生やお父さんに
よく教わって覚えておきなさい。
一般常識の最初が、国家でなく郷土であるのは意外な感じがする。自分・郷土・国家と世界が拡がっていく意識を持たせようと云うことか。
郷土の名勝くらいは云えるようにありたいものだが、日本全国津々浦々、どこにでも名勝や偉人があるわけでは無い。そんな子供が何を答えるべきかは書いてない。
第二 国家に関する試問
[一] 皇大神宮について
一、(問)皇大神宮はどなたをお祀りしてありますか。
(答)天照大神です。
二、(問)何処にありますか。
(答)三重県(伊勢国)の宇治山田市にあります。
三、(問)御神体は何ですか。
(答)八咫鏡(やたのかがみ)です。
四、(問)皇室とはどんな関係がありますか。
(皇大神宮はどうして最も尊いのですか)
(答)天照大神は皇室の御先祖であらせられます。
(皇室の御先祖であらせ給うから)
五、(問)皇大神宮に対して、皇室はどんなに御尊敬なさいますか。
(答)皇族を祭主に御任命になり、毎年の祈年祭・神嘗祭・新嘗祭には
勅使をさし立てて幣帛を捧げさせられ、毎年の政始(まつりごとはじめ)
には第一に皇大神宮の御事をきこしめしされ、大事のある際には
必ず神宮に御報告になり、御宮は二十年目毎に御造営になります。
「国家」と云いながらも皇大神宮(伊勢神宮)と、皇室との関係を問う内容だ。「日本は神の国」と云う人のよって立つ所ですね。
[二] 国体について
一、(問)我が国の国体が世界のどの国よりもすぐれている点は何ですか。
(我が国体の尊厳なわけをお話しなさい)
(答)万世一系の天皇を戴き、皇室と臣民が一体になっていることです。
二、(問)皇統が万世一系であるとはどういう意味ですか。
(答)神代の大昔から、一つ御血すじの天皇がずっと引きつづいて
御位に即(つ)いていらせられることです。
「万世一系の国体」が、世界に二つとない、と云うことは出来る(その証明も否定も無意味だ)。そこを「すぐれている」と云い替えていた所に、戦前・戦中日本の不幸があったように思う。小学生相手ならともかく、いいトシをした大人までそんな風に思っていているから、身の程を忘れてしまうのだ。
[三] 皇室について
一、(問)今上天皇は第何代の天皇であらせられますか。
(答)第百二十四代です。
二、(問)何時にお生まれになりましたか。
(天長節は何時ですか)
(答)明治三十四年四月二十九日にお生まれになりました。
○天皇陛下は、昭和十五年、御年四十歳にならせられます
三、(問)御名は何と申されますか。
(答)裕仁と申されます。
四、(問)天皇陛下の御先祖はどなたですか。
(答)天照大神です。
五、(問)明治天皇は今上天皇の何に当たらせますか。
(答)おじいさま(御祖父)にあたらせられます。
六、(問)皇后陛下の御名は何と申されますか。
何月何日にお生まれになりましたか。
(答)良子(ながこ)と申されます。三月六日です。
○皇后陛下に就いては、特に女学校入学希望の方は
よく知っていなくてはなりません。
七、(問)皇太子殿下は御名を何と申し上げますか。
いつ御誕生になりましたか。
(昭和八年十二月二十三日は、どういう日でありますか)
(答)継宮明仁親王と申し上げます。
昭和八年十二月二十三日であらせられます。
(皇太子殿下がお生まれになった日であります)
八、(問)天皇陛下の御兄弟にはどんな方がおありになりますか。
(答)御弟に、秩父宮、高松宮、三笠宮のお三方がおいでになります。
九、(問)明治神宮はどこにあって、どなたをお祭り申し上げてありますか。
(答)東京市代々木にあって、明治天皇と昭憲皇太后の御二方を
お祭り申し上げてあります。
一〇、(問)明治天皇の御陵はどこにありますか。
(答)京都市の桃山にあります。
一一、(問)大正天皇の御陵はどこにありますか。
(答)東京市多摩にあります。
一二、(問)我が国の皇室と国民とはどんな関係になっていますか。
(答)建国以来君臣の分が明らかで、天皇は臣民を視たまうこと子の如く、
臣民は天皇を仰ぎ奉ること親の如くお慕い申し上げています。
云うまでもないが、ここでの「今上天皇」、「天皇陛下」は昭和天皇のこと。
女学校志望者は、皇后の生誕日を覚えておかないといけないとは知らなかった。
こうして見ると大正天皇の影が実に薄い。
[四] 国家について
一、(問)今年は紀元何年ですか。
(答)紀元二千六百年(昭和十五年)です。
二、(問)我が国体の世界に比なくすぐれている点を挙げてごらんなさい。
(我が国が世界に類のない立派な国だというのは、どんな点ですか)
(答)(一)万世一系の天皇をいただくこと。
(二)御代々の天皇は臣民を子の如く慈しみ給い、
臣民は天皇を親の如く慕い奉り、忠君愛国の精神の強いこと。
(三)未だ一回も外国から侮り(あなどり)を受けたことがないこと。
三、(問)我が国の大切な法律は何ですか。
(答)大日本帝国憲法です。
四、(問)帝国議会の成立をいってごらんなさい。
(答)貴族院と衆議院から成り立っています。
五、(問)帝国議会は何をする所ですか。
(答)国家の法律案や予算案を議決する所です。
六、(問)内閣総理大臣はどなたですか。
(答)陸軍大将阿部信行閣下です。
また「国家」について問うている。
今では米国はじめ、日本を侮る国がいくつも存在していることは誰でも知っている(昭和14、15年当時でも人知れずあったと思う)。
「大切な法律」、帝国憲法は次の項目で詳細が問われることになる。
[五] 憲法について
一、(問)大日本帝国憲法は一口にいえばどういうものですか。
(答)天皇陛下が、之によって我が国をお治めになる大法であって、
あらゆる法令の本となる最も大切な規則です。
二、(問)帝国憲法はどなたが御制定になりましたか。
(答)明治天皇です。
三、(問)いつ御発布になりましたか。
(答)明治二十二年二月十一日(紀元節)です。
四、(問)明治天皇はどういう御かんがえによって憲法を御制定になりましたか。
(答)皇祖皇宗の御遺訓に基づいて、国家の繁栄と臣民の幸福とを
お望みになる大御心から、臣民が永遠にしたがうべきものとして
御制定になりました。
五、(問)憲法の一番初めにはどういうことが示されてありますか。
(答)大日本帝国憲法は万世一系の天皇がお治めになることを示して、
我が国体の大本を明らかにされてあります。
六、(問)憲法と一しょに制定された我が国の大法は何ですか。
(答)皇室典範です。
七、(問)皇室典範にはどんな事が制定されてありますか。
(答)皇位継承・践祚・即位等、皇室に関する大切な事柄がきめられてあります。
「憲法」が大切である、と学校教育の場で説くのは、戦前も現在も変わらなかったのか。
[六] 祝祭日について
一、(問)四大節を挙げなさい。
(答)新年、紀元節、天長節、明治節。
二、(問)四大節はそれぞれ何月何日で、どういう日ですか。
(答)新年は一月一日の四方拝、三日の元始祭、
五日の新年宴会を合わせた祝日です。
紀元節は二月十一日で、神武天皇が大和の樫原宮で
御即位になった日です。
天長節は四月二十九日で、天皇陛下の御誕生日です。
明治節は十一月三日で、明治天皇の御誕生日に当たり、
御盛徳をしのび奉る日です。
○祝日については、必ず暗記しておかなくてはなりません。
三、(問)地久節は何月何日で、どういう日ですか。
(三月六日はどういう日ですか)
(答)三月六日で、皇后陛下の御誕生日です。
○女学校志望の方は、特に注意しておきなさい。
四、(問)陸軍記念日は何月何日で、どういう日ですか。
(三月十日はどういう日ですか)
(答)三月十日で、明治三十七八年の戦役(日露戦役)に、
奉天の大会戦に我が陸軍が大勝を得て、此の戦争の
勝負をきめためでたい日です。
五、(問)海軍記念日についてお話しなさい。
(五月二十七日はどういう日ですか)
(答)五月二十七日で、明治三十七八年の戦役(日露戦役)に、
日本海で、我が連合艦隊が露国の艦隊を破って、世界の海戦に
今までにない大勝利を得ためでたい日です。
今だと覚える祝日が多くて困るところだ。
四大節が名前と性格を変えて今も祝日に残っていることがわかる。
陸軍記念日が「戦争の勝負をきめた」とあるので、海軍記念日が「今までにない大勝利」となって双方の顔を立てているのが面白い。
[七] 国歌と国旗について
一、(問)国家「君が代」のわけをお話しなさい。
(答)天皇陛下の御代が、いつまでも永く続いて、小さい石が大きい巌となり、
それに苔が生えるまで、いつまでも栄え給うようにと
お祝い申し上げた歌です。
(天皇陛下の御代がいつまでも栄えますようにと、お祝い申し上げる
心をうたった唱歌です)
二、(問)国旗はどういう場合に立てますか。
(答)祝祭日、記念日、国家に関する儀式などのある時に立てます。
三、(問)国旗に対しては、どんな心掛が大切ですか。
(答)国旗を大切にして、敬意を失わないように心掛けます。
四、(問)国旗を大切にするのはなぜですか。
(答)国旗は其の国を代表し、建国の歴史と国民の精神と理想とを
表するものであるからです。
五、(問)外国の国旗に対する心得をお話しなさい。
(答)自分の国の国旗を大切にすると共に、外国の国旗に対しても
敬意を表さなくてはなりません。
修身科に「国歌」の項目が立てられたのは、1933年から使用が始まった第四期国定教科書だと云う(『文部省の研究』)。
「君が代」の「君」の解釈について、それは天皇ではないとする主張を聞いたことがあるが、こう云う解説がある以上、チャンチャラおかしい。
国旗を大切にする意味を突き付けられると、それをあえて毀損する行為の裏側にある、実行者の抱える怒りの大きさが理解できるだろう。
[八] 教育に関する勅語
一、(問)教育勅語は何時お下しになりましたか。
(答)明治二十三年十月三十日。
二、(問)どなたがお下しになりましたか。
(答)明治天皇。
三、(問)どんな事をお示しになっていますか。
(答)日本国民の守るべき道です。
四、(問)教育勅語にお示しになった行いの中で、
一番大切と思うものは何ですか。
(答)「克ク忠ニ克ク孝ニ」の行いです。
五、(問)教育勅語の中に仰せられた
(1)「兄弟ニ友ニ」とはどういう意味ですか。
(2)「朋友相信シ」とはどういう意味ですか。
(答)
(1)兄弟は仲よくむつましくせよという意味です。
(2)朋友は互いに励ましあい、共に信儀をつくして交われと
お諭しになったのです。
六、(問)教育勅語に「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」と仰せられてありますが、
それはどんな事ですか。例を挙げて説明しなさい。
(答)今度の支那事変に、我が皇軍の将士は一身一家をかえりみず、
君国の為に支那軍と戦っているし、国民は一致協力して
銃後の護りに努力しているのが、それであります。
七、(問)若し国に事変の起こった場合に、国民はどんな覚悟が必要ですか。
其の意味を教育勅語の中に、何と仰せられてありますか。
(答)「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」と仰せられてあります。
八、(問)良い日本人となるには、どうしたならばよいと思いますか。
(答)教育勅語の御趣旨を深く心にとどめ、至誠を以て
これ等の諸徳を実行することにあります。
九、(問)我が日本帝国をますます立派にして行くには、
どんな心掛けが必要ですか。
(答)教育勅語の御趣旨を国民全体が実行するように
心がけることであります。
教育勅語の是非も折りにつれ話題になるところだ。しかし、これが敗戦で否定された「大日本帝国憲法」・「国体」とセットになったものである事を考えると、これの復活・擁護はスジが違うと思う。
[九] 靖国神社について
一、(問)靖国神社はどこにありますか。
(答)東京市の九段坂の上にあります。
二、(問)靖国神社にはどんな方々をおまつりしてありますか。
(答)明治維新の頃から今に至るまでの戦役や事変に、
国家の為に身命を捧げた忠勇な臣民をお祀りしてあります。
三、(問)招魂祭とはどういうお祭りですか。
(答)戦役や事変に身命を捧げた人々の御魂を
お招きしてお祭り申す祭りです。
四、(問)靖国神社のお祭りはいつ頃ですか。
(答)春と秋と一年に二回あります。
五、(問)靖国神社に参拝する時は、どんな心持ちで礼拝しますか。
(答)君国の為に一命をすてて尽くされた神々に対して、
厚く深い感謝の心をささげ、なお神となって我が国を
御守り下さいます様にと願って礼拝します。
君国の為に一命を捨てざるを得なかった神々は、アメリカと戦った日本を護って下さったのだろうか?
正道を踏み外した国家を護る、そんな都合のよい神様はないだろう。学業を怠けたのを棚に上げ、天神様に合格祈願しても無駄なのと同じことだ。
この解説を読むと、この神社が明治維新の産物なのだと改めて思う。どこかに国家から切り捨てられた人々の恨みを鎮めるお社が、人知れずあるのではないか?
[一〇] 明治神宮について
一、(問)明治神宮はどこにありますか。
(答)東京市の代々木にあります。
二、(問)どなたをお祀り申してありますか。
(答)明治天皇と昭憲皇太后の御二方をお祀り申し上げてあります。
三、(問)明治神宮のお祭りは何時ですか。
(答)毎年十一月三日、明治節の日です。
四、(問)明治神宮に参拝する時は、どんな心持ちで礼拝しますか。
(答)今日の盛大な大日本帝国の基(もとい)を開かせ給った感謝の念と、
なお我が日本をお護り下さる様に御願いして礼拝します。
今では東京都内屈指の初詣のメッカである(色んな意味で不敬な表現だなあ…)。個人的願望を祈念したり、御利益を期待するところとは思えない。国民ひとりひとりの幸せなくして、国家の隆盛はあり得ない持論から見れば、それもアリなのだろうが…。
[一一]国民の務について
一、(問)日本国民として一番大切な心得は何ですか。
(答)忠君愛国です。
二、(問)日本国民の二大義務は何ですか。
(答)兵役の義務と納税の義務です。
三、(問)日本国民として必ず守らなければならない
大切な義務が三つあります。何々ですか。
(国民の三大義務とは何々ですか)
(答)兵役に関する義務、納税の義務、議員を選挙する義務です。
四、(問)兵役の義務とはどんな事ですか。
(答)満十七歳から満四十歳までの男子は、皆兵役に服するのです。
ですから男子は満二十歳になると徴兵検査を受けて、
合格した場合は現役に服し、国家有事の際は現役兵は勿論、
予備役、後備役にあるものは召集に応じて出征します。
五、(問)あなたは兵役の義務についてどんな覚悟を持っていますか。
(答)帝国軍人としてお国の為にじかに尽くされることの名誉に喜び、
忠君愛国の精神を以て兵役の義務を果たしたいと思います。
六、(問)あなたは忠君愛国ということをどうしたら行うことが出来ましょう。
(あなたの様な子供でも、忠君愛国の精神を表すことが出来ますか)
(答)平生自分の修めるべき学業を真面目に勉強し、身体を健康にして
善良有為の日本人となれば、それが忠君愛国になります。
七、(問)なぜ国民は納税しなければならないのでしょう。
(答)国家又は自治団体としてなすべき事に必要な費用を
国民が納めるのが当然でありますから。
今の為政者が泣いて喜ぶ答えばかりだ。治める側から見れば、こんな都合の良い話はない。納税(所得税の源泉徴収は昭和15年から)設問の答えは税務署員が聞いたら泣くよ。
「善良有為」の人となることが「忠君愛国」だと云う。要は働いて税金をキッチリ納めること、次の世代を育むことだ。そこは現代社会でも変わらない。
他所の国の悪口を云い、溜飲を下げるような行為が愛国的とは(まだ)書いてない。