事業所得

必要経費に算入される資産損失
たな卸資産について生じた損失
たな卸資産について生じた損失の金額は、売上原価の計算を通じて自動的に必要経費に算入されるため、あえて損失額の計上をする必要はありません。
【受け取った保険金の取扱い】
たな卸資産について生じた損失につき保険金等を受け取った場合には、その受け取った金額を総収入金額に算入します。
固定資産について生じた損失
事業用固定資産等について生じた損失の金額は、その損失発生年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入します。
損失額=損失発生直前の未償却残額−損失発生直後の時価−廃材価額−保険金等
【原状回復費用】
原状回復費を支出した場合には、資本的支出部分を除いた金額が必要経費に算入されます。
必要経費算入額=原状回復費用−資産損失の基礎価額
*資産損失の基礎価額=損失発生直前の未償却残額−損失発生直後の時価
債権の回収不能額
債権者集会の協議決定や債務免除などにより、事業所得を生ずべき事業の遂行上生じた売掛金、貸付金などの切捨てがあった場合には、その損失の金額は、損失発生年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入します。
【事実上の貸倒】
債務者の資産状況、支払能力等から判断して、貸金等の全額が回収できないことが明らかな場合には、その貸金等の全額を貸倒損失として必要経費に算入できます。ただし、担保物がある場合には、この適用はありません。
【売掛債権の特例】
債務者との取引停止後又は最後の弁済があってから1年以上を経過した場合には、売掛債権の額から備忘記録を控除した残額について、貸倒損失として必要経費に算入できます。
事業廃止後に損失が生じた場合
事業所得を生ずべき事業を廃止した後において、その事業に係る損失が生じた場合には、その損失の金額は、その廃止年分又はその前年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入します。この場合には、その損失が生じた日の翌日から2月以内に更正の請求をする必要があります。
貸倒引当金
個別評価貸金等
不動産所得や事業所得を生ずべき事業を営む事業者は、個別評価貸金等について貸倒引当金を計上することができます。個別評価貸金等についての貸倒引当金の設定は、青色申告であることを要件とはしていません。
【長期たな上げがあった場合の引当金の計上】
会社更生法等の規定による更生計画認可の決定などにより、貸金等について弁済を猶予され又は賦払により弁済されることとなった場合
繰入限度額 事由発生年の翌年1月1日から5年以内に弁済される金額以外の金額 - 抵当権等によって担保されている部分の金額
【実質基準による引当金の計上】
債務者につき、債務超過の状態が相当期間継続し、業務に好転の見通しが立たないこと等の理由から取り立ての見込みがない場合
繰入限度額 取立ての見込みがない金額
【形式基準による引当金の計上】
会社更生法等の規定による更生手続き開始の申立てや手形交換所の取引停止処分などの事由が生じた場合
繰入限度額 貸金等の額 × 50%
*債務者からの受け入れ金額、抵当権等によって担保されている部分の金額、金融機関によって担保されている部分の金額及び第三者振出手形は、貸金等から除かれます。
一括評価貸金
事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者は、一括評価による貸倒引当金の設定が認められています。なお、不動産所得又は山林所得に係る債権については、一括評価貸金の引当金の計上はできません。
【繰入限度額】
(債権の額-実質的に債権とみられないもの)×5.5%
*債権の額=事業上の債権の額−個別評価貸金等の額
*実質的に債権とみられないもの=買掛金や融通手形など
【債権の額に含まれるもの】
割引手形、裏書手形、割賦未収金、融通手形(割引等したものを除く)
【債権の額に含まれないもの】
差入れ保証金、敷金等、手付金、前渡金等、前払給与、仕入割戻しの未収金など
総収入金額算入
必要経費に算入された貸倒引当金勘定の金額は、その繰入年の翌年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入します。
同一生計親族が事業から受ける対価
この規定は、同一生計親族間において恣意的に所得を分散させ、税負担の軽減を図ることを防止するために設けられています。
原則的取扱い
【事業主の所得計算】
@ 事業主が同一生計親族に対して支払う対価の額は、その事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入されません。
A その親族のその対価に係る所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、事業主の事業に係る所得の金額の計算上、必要経費に算入します。
【親族の所得計算】
その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その各種所得の金額の計算上なかったものとみなされます。
青色事業専従者給与の特例
青色申告者と生計を一にする親族(年齢15歳未満の者を除く)がその青色申告者の営む事業に専ら従事した場合には、「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載されている金額の範囲内で給与の支払が認められています。
【事業主の取扱い】
支払った給与のうち労務の対価として相当であると認められる金額は、その事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入します。
【親族の取扱い】
その事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入された金額は、その青色事業専従者のその年分の給与所得に係る収入金額として取り扱われます。
【承認申請等】
その年分以後の各年分の所得税につきこの規定の適用を受けようとする場合には、その年3月15日までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。なお、新規開業の場合には、事業を開始した日から2ヶ月以内の提出となります。
事業専従者控除
青色申告者以外の居住者と生計を一にする親族(年齢15歳未満の者を除く)がその居住者の営む事業に専ら従事した場合には、事業専従者1人につき次のいずれか少ない金額をその居住者の事業所得等の金額の計算上必要経費とみなされます。
@ 50万円(配偶者の場合には86万円)
A この規定適用前の事業所得等の金額/事業専従者の数+1
【事業専従者の取扱い】
その居住者の事業所得等の金額の計算上必要経費とみなされた金額は、その事業専従者のその年分の給与所得に係る収入金額とみなされます。
【手続き】
確定申告書にこの規定の適用を受ける旨及び必要経費とみなされる金額の記載が必要となります。
その事業に専ら従事するかどうか等の判定
【原則】
従事期間が1年を通じて6月を越えること
【特例】
青色事業専従者につては、従事可能期間の2分の1を超えること
【専従者とはなれない者】
@ 高校、大学などの生徒または学生である者(夜間の場合には専従者となり得ます)
A 他に職業がある者
B 従事能力があると認められない者
配偶者控除等の取扱い
青色事業専従者及び事業専従者については、その事業主に係る配偶者控除、配偶者特別控除及び扶養控除の適用は受けることができません。
消費税の処理
税込み経理の場合
納付すべき消費税額は、租税公課として必要経費に算入し、還付を受ける消費税額は、雑収入として総収入金額に算入します。
【必要経費算入時期】
原則として確定申告書の提出年の必要経費に算入しますが、未払経理によりその年分の必要経費とすることができます。
税抜き経理の場合
税抜き経理とは、「仮受消費税」と「仮払消費税」で処理する方法ですので、原則として、直接損益に関係する処理をする必要はありません。
【簡易課税を選択している場合】
簡易課税を選択している場合には、「仮受消費税」及び「仮払消費税」の差額と実際の納付額との差額をその年分の総収入金額又は必要経費に算入します。
控除対象外消費税の取扱い
控除対象外消費税とは、税抜き経理を採用している場合において、仕入税額控除の計算上、控除しきれない仮払消費税の額をいいます。
【経費に係る控除対象外消費税の取扱い】
経費に係る控除対象外消費税は、その年分の必要経費に算入します。
【資産に係る控除対象外消費税の取扱い】
@ 課税売上割合が80%以上の場合
控除対象外消費税は、その年分の必要経費に算入します。
A 課税売上割合が80%未満の場合
たな卸資産に係る控除対象外消費税は、その年分の必要経費に算入します。
20万円未満の少額控除対象外消費税は、その年分の必要経費に算入します。
イ及びロ以外の控除対象外消費税は、繰延消費税額として60ヶ月で償却します。
青色申告特別控除
不動産所得、事業所得、山林所得を営む青色申告者については、原則として、10万円の控除額が認められています。ただし、特例として、不動産所得又は事業所得を事業的規模で営む青色申告者については、取引を詳細に記録することを要件に、特別に65万円の控除額が認められています。不動産所得と事業所得の両方を営んでいる場合には、まず不動産所得から控除し、残りがあればその残額を事業所得から控除します。
(1) 65万円の青色申告特別控除
この65万円の控除が受けられるための要件は、次のようになっています。
不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
これらの所得の金額に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。
確定申告期限内に、ロの記帳に基づいて作成した貸借対照表を、損益計算書とともに、確定申告書に添付し、その適用を受ける金額を記載して提出すること。
(2) 10万円の青色申告特別控除
この控除は、(1)の要件に該当しない青色申告者が受けられます。

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