現金基準

概要
所得税では、収入金額は権利確定主義により、必要経費は債務確定主義により計算するのが原則ですが、青色申告書を提出する小規模事業者については、現金基準により所得金額を計算できる特例が認められています。
小規模事業者の意義
小規模事業者とは、前々年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額の合計額が300万円以下の者をいいます。なお、所得の金額は、青色専従者給与又は事業専従者控除を必要経費に算入する前の金額です。
総収入金額
総収入金額は、原則としてその年に収入した金額となります。
たな卸し資産の家事消費等
たな卸し資産の家事消費、贈与及び低額譲渡の総収入金額算入、国庫補助金の総収入金額不算入については、従来どおりの適用となります。
売上高
売上高は、現金売上+売掛金・受取手形の現金回収高+前受金の合計額となります。なお、小切手の受取りによる売上も収入金額に含まれます。
手形の割引
手形を割引いた場合には、額面金額が収入金額となります。手形の割引による売却損は、必要経費に算入します。
売掛金等
適用開始以前に発生した売掛金も回収時に収入金額に算入します。この場合、売掛金発生時と回収時の2回にわたり収入計上されますので、二重計上分は、現金基準をやめた年分で調整することになります。
引当金
引当金が計上されている場合であっても、引当金を戻しいれる処理はしません。
必要経費
必要経費に算入する金額は、原則としてその年に支出した費用の額となります。
減価償却費等
減価償却費や資産損失は、従来どおり必要経費に算入できます。
貸倒れ損失
売掛金や受取手形の貸倒れ損失の計上はできません。ただし、貸付け金の貸倒損失の計上は認められます。
売上原価
売上原価は、現金仕入高+買掛金・支払手形の現金支払高+前渡金となります。なお、期首及び期末のたな卸高は考慮しません。
たな卸資産
適用時と不適用時のたな卸資産の差額については、やめた年分で調整することになります。
引当金
引当金は計上しません。
適用要件
現金基準の適用を受けるには、適用を受けようとする年の3月15日までに一定の届出書を提出しなければなりません。
青色申告特別控除額
特別控除額は10万円です。
先日付小切手を受け取った場合
先日付小切手で売上代金を受け取った場合であっても、その受け取った日に収入金額として計上します。

調整事項
現金基準の適用を受けないこととなった場合には、引当金や売掛金等について以下の調整が必要となります。
貸倒引当金等
現金基準の適用を受けないこととなった年の前年12月31日における貸倒引当金等は、適用を受けないこととなった年の前年から繰り越されたものとみなされます。したがって、現金基準適用年の前年において設定した貸倒引当金は、現金基準の適用を受けないこととなった年において戻しいれの処理をします。
売掛金等
現金基準による所得計算から権利確定主義による所得計算に変更した場合には、二重計上となっている収益や未計上となっている収益があるため、適用年の前年と適用を受けないこととなった年における売掛金等の額との差額をそれぞれ総収入金額又は必要経費に算入します。。
*@=適用年の前年12月31日 A=適用を受けないこととなった年の1月1日
【売掛金】
・@の売掛金>Aの売掛金・・・差額を必要経費に算入
・@の売掛金<Aの売掛金・・・差額を総収入金額に算入
【買掛金】
・@の買掛金>Aの買掛金・・・差額を総収入金額に算入
・@の買掛金<Aの買掛金・・・差額を必要経費に算入
【たな卸資産】
・@のたな卸資産>Aのたな卸資産・・・差額を必要経費に算入
・@のたな卸資産<Aのたな卸資産・・・差額を総収入金額に算入
取りやめの届出書
現金基準の適用をやめる場合には、その年3月15日までに取りやめの届出書を提出する必要があります。
割引した手形が不渡りとなった場合
割引した手形が不渡りとなったことにより手形代金を支払った場合には、その支払った金額をその支払った日の属する年分の収入金額から減額します。