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【太陽の帝国】 製作年 1987年、米 監督 スティーブン・スピルバーグ → オールウェイズ 激突! 出演 クリスチャン・ベール ジョン・マルコビッチ 伊武雅刀 |
【あらすじ】 1941年の上海。英国租界に住むジム少年(クリスチャン・ベール)は何不自由ない生活を送っていた。将来は零戦のパイロットになるのが夢というジムに両親はあきれていたが、迫り来る戦争の危機感は薄く仮装パーティーも盛大に行われた。しかし、日本軍の侵攻が開始され上海は大混乱となりジムは両親とはぐれてしまった。仕方なく自宅に帰るがいつまで待っても両親は戻ってこず、食糧も尽きてしまう。当てもなく上海の町に出かけ日本軍に降伏のポーズを見せるが相手にしてくれない。そんなジムを救ってくれたのはアメリカ人のベイシー(ジョン・マルコビッチ)とフランクだった。しかし、3人は日本軍に捕まり戦時捕虜収容所に入れられる。そこは食糧事情が悪かったため蘇州の収容所に移動させられ、飛行場の建設に従事させられる。1945年、終戦間近になるとジムは精神的にも肉体的にも大きく成長して、医者を先生に勉強しベイシーの使い走りをする一方、収容所所長の永田軍曹(伊武雅刀)にも取り入ってたくましく生きていた。連合軍の攻勢が激しさを増し、収容所の隣にある飛行場も攻撃され出撃しようとしていた特攻機は撃墜された。ジムたちは収容所から出され移動させられるが、ジムは一行と別れ再び蘇州の飛行場に戻った。飛行場で心をかよわせていた日本人少年と再会するが、脱走していたベイシーらの発砲で少年は死んでしまう。結局、ジムはこの飛行場でひとりぼっちで残っているところをアメリカ軍に保護された。戦災孤児の施設に収容されたジムのもとに両親がやって来るが、ジムの変わり様に2人ともとまどうのだった。 |
【解説】 原作はJ・G・バラードの自伝的小説であるが、バラードはSF作家としての方が有名で、人間の精神世界をテーマにしたニューウェーブSFの旗手と呼ばれている。中国で本格的なロケを行った最初のハリウッド映画だが、収容所のシーンはスペインで撮影された。日本軍の戦時捕虜収容所では暴力シーンも出てくるが、絶望的な悲惨さで満ちていた同監督の「シンドラーのリスト」(93年)に出てくるような虐殺シーンがないのはせめてもの救いである。ジム少年を演じたクリスチャン・ベールは成人後も「ベルベット・ゴールドマイン」(98年)「アメリカン・サイコ」(2000年)などで堅実にキャリアを重ねている。ベイシー役のジョン・マルコビッチは奇想天外な「マルコビッチの穴」(99年)で一躍日本でも名前が知られるようになったが、演劇の世界での活躍が長く「ジキル&ハイド」(95年)の主人公のように極悪人から気弱な男まで演じられる実力派である。 零戦こと三菱零式艦上戦闘機は1940年(昭和15年)8月19日に中国戦線で初陣を飾り、ソ連製の中国軍機27機を全機撃墜し損害ゼロという一方的な勝利をあげた。超々ジェラルミンを使った機体は軽快で、特に航続力と旋回性能については同時期の戦闘機で零戦を上回るものはなかった。太平洋戦争が始まると英米の戦闘機も歯が立たず、零戦を見たら逃げろと指導される有様だった。しかし、零戦の2倍の馬力のエンジンと厚い防弾鋼板を持ったグラマンF6Fヘルキャットが登場すると零戦も苦戦を強いられるようになった。後継機の開発が遅れたため、零戦も延命策とも言うべき改良が施されたもののギリギリに切りつめた機体に余裕はなく性能向上にも限界があった。大戦末期になると本作品に登場するように特攻機として使われ始め、まさに日本の運命と同調するような最後を迎えた。零戦は設計は三菱だったがエンジンは中島飛行機製で、戦時体勢になると中島飛行機でもライセンス生産されたため、日本の戦闘機では唯一1万機を越える大量生産となった。ハリウッド映画に登場する零戦はほとんどシルエットが似ているT−6テキサン練習機が扮している。 大戦後期に登場したノースアメリカンP−51マスタングは、第二次世界大戦における最優秀戦闘機の評価が定まってる傑作機だが、最初はイギリス向けの支援機として開発され輸出されていた。ヨーロッパ戦線での活躍が伝わりアメリカ陸軍も制式採用したが、それまでのエンジンに替えてスピットファイアに使われていたロールスロイス・マーリンエンジンを搭載したことで性能を飛躍的に向上させた。本作品の中でジム少年がP−51マスタングを”空飛ぶキャデラック”と叫ぶシーンがあるが正しくは”空飛ぶロールスロイス”が的を得たセリフではある。ジャイロ式照準器や後方警戒レーダー、Gスーツなど現在の戦闘機にも通じる先進のテクノロジーが使われており、D型からは一体成形ガラスで出来たバブル・キャノピーと呼ばれる風防が使われP−51マスタングの最大の特長ともなったが、終戦まで枠が多い風防を使用していた日本との工業力の差を如実に表している。 |
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