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【激突!】 製作年 1971年、米 監督 スティーブン・スピルバーグ → 太陽の帝国 オールウェイズ 出演 デニス・ウィーバー |
【あらすじ】 デビッド・マン(デニス・ウィーバー)は、知人から借金を取り立てるために車で向かっていたが、前方を走る低速の巨大なタンクローリーを追い抜いた。しかし、相手も抜き返したのでムキになったデビッドはもう1回抜き返し、ガソリンスタンドに入った。すると、タンクローリーも横に止まり給油した。デビッドは変な奴ぐらいに思っていたが、先に発進するとすぐに追い掛けてきて前をふさがれた。約束の時間に間に合わないため、側線を使って強引にタンクローリーを追い越すが、今度は凄まじい速度で追い掛けてきて煽られた。デビッドはたまらず脇に逃げると、ドライブインで休憩することにした。しかし、いつのまにかタンクローリーも引き返してきていた。デビッドは疑わしいドライブインの客にふざけるなとばかりに食ってかかったが、人違いで逆に殴られた。タンクローリーが発進していったので、デビッドも店を出た。踏切で列車の通過を待っているとタンクローリーが体当たりしてきた。デビッドはブレーキを必死に踏んで、間一髪で列車との接触を免れた。土手に乗り上げたデビッドの車の横をタンクローリーは悠然と走っていった。尋常ではない行為にデビッドはドライブインで警察に電話しようとするが、タンクローリーが引き返してきて電話ボックスをなぎ倒した。デビッドは車に飛び乗り一目散に飛ばしたが故障したのかみるみる速度が落ちてきた。もはや自分が対決するしかないデビッドは脇道にそれ、崖の上でタンクローリーを待ち構えると、車を発進させて激突寸前に飛び降りた。車と激突したタンクローリーは崖下に転落していった。 |
【解説】 ハリウッドでも最も有名な人物と言っても過言ではないスティーブン・スピルバーグは、13歳の時に買ってもらった8ミリカメラに夢中になり、高校時代には15本のミニ・ムービーを製作するほど熱中した。学校でユダヤ系なのはスピルバーグだけだったため、疎外されることが多々あり後の作品に影響を与えている。映画への情熱は押さえがたく大学に在学中にもかかわらず、ユニバーサル・スタジオの空オフィスを勝手に占有して映画作りを始めた。何とも大胆な行動だが、3本目の作品がスタジオの責任者の目に止まりテレビの監督として契約してもらうという好機に恵まれ、この話は今では伝説となっている。この時の作品が後にスピルバーグの個人プロダクション名にもなる「アンブリン」である。スピルバーグが監督したテレビ作品の中には日本でも放映された刑事コロンボ・シリーズの1挿話などがある。本作品もアメリカではTVムービーとして企画・製作・放映されたものだが、評判がよかったためヨーロッパや日本では劇場用に編集し直されて公開された。脚本も手掛けている原作者のリチャード・マシスンの小説には映画化されたものが多く、チャールズ・ブロンソン主演の「夜の訪問者」(70年)やオカルト映画のはしりとなった「ヘルハウス」(73年)などサスペンス色の強いものから、クリストファー・リーブが主演した「ある日どこかで」(80年)やロビン・ウィリアムズ主演の「奇跡の輝き」(98年)といったファンタジー・タッチのものまである。 主人公が乗っているのは70年型プリマス・バリアント。プリマスはダッジと並ぶクライスラーの1シリーズだが、1960年に登場したバリアントはクライスラー初のコンパクト・カーだった。同じクラスのフォード・ファルコンやシボレー・コルベアなどと共に大衆車としてこの時代人気があった。不気味な大型トレーラーはピータビルト社のモデル351と呼ばれるものである。ピータービルト社は1939年、材木業者だったアル・ピーターマンによって設立され、11年後にはパッカーグループに買収され現在に至っている。最後まで運転手の顔が見えず垂直に突き出した”スモーク・スタック”と呼ばれる排気管から黒煙をあげながらプリマスに突進してくる様は、後の「JAWS/ジョーズ」のホオジロザメや「ジュラシック・パーク」のチラノザウルスと重なって恐怖である。 「激突!」の成功でスピルバーグは劇場用作品の監督としてデビューが決まり、やはり車が中心的役割を果たすため邦題が「続・激突!/カージャック」(73年)となる作品を製作する。前作とは何の関係もなく実話がベースになっており、養育権を取り上げられてしまったゴールディ・ホーン扮する若い母親が、刑務所にいる夫を脱獄させ赤ちゃんを取り返しに行こうと、老夫婦が運転するポンコツの56年製ビュイック・ロードマスターを奪い、次に警官を人質にしてパトカーを強奪する。無線で異変を聞きつけた周辺のパトカーが何十台も駆けつけて数珠つなぎになって追跡する奇妙な状態になるが、最後に悲しい結末が待っていた。 |
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