思い付くまま ・・・・・ CAW |
最初に、CAW とは何か説明します。 と、偉そうに書き始めましたが、実は、私もほとんど知らないのです。 以前、レストアのご相談があり、その方がお持ちのものを CAW とお書きになっていたので、そのときに少し調べたのですが、詳しくは判りませんでした。 今般、別の方のものをレストアする機会に恵まれましたので、どのようなものか紹介します。 まず、CAW とは、Crosby Audio Works の略です。 色々な単語で検索してみたのですが、Crosby氏が運営されているこの会社(工房 ? ) の全容はどうにも判りませんでした。 レストアに持ち込まれたのはスピーカーですが、他に、アンプなども扱っている ( 扱っていた ?) のかもしれません。 それはさておき、どのようなスピーカーなのかといいますと、ESL-63 を改造(モディファイ)したものです。 今回持ち込まれたモデルは、写真のとおりで、 ESL-63 USA MONITOR とあります。 どのようなものか調べたのですが、QUAD ESL-63 を値上げする際に云々・・・とありましたが、やはり、何だかよくは判りませんでした。 これはアメリカでお買いになられた、とのことでした。 ノイズ確認のため聴いたときに、思わず「63なのにPRO-63 の音がする !」と言ってしまいましたら、オウナーの方は、「PRO-63 ですよ。」と仰っていました。 そのときは「そうなんですか。」で済ませたのですが、パネルにはESL-63とあり、PRO-63 には付いているスピコンなどのコネクタ入力も無く、その他の色々な仕様も 63 ですので、母体は 63 だと思います。 では、どのようなモディファイが施されているかといいますと、次のとおり、大きく三分類できると思います。 ① 外装関係 ② ネットワーク(遅延回路)関係等 ③ 信号配線関係 ① 外装関係 ・ ・ ・ ・ グリルネットの布とパンチングメタルが異なっています。 布は、後日調べたサイトでは "ストッキング" と書かれていましたが、確かにそんな感じの極めて薄い布でした。 しかし、劣化が甚だしく、下げて外そうとするとボロボロと崩れるように破け易くなっていましたので、オウナーの方に、元どおりにできる保証はできない旨をお伝えしたところ、ご自身で同様なものを手配なさるとのことで、お任せすることにしました。 パンチングメタルですが、写真左が 63 のもので、素材はアルミ、下向きのルーバーが連続しているものです。 (USA MONITOR のものは、PRO-63 と同じ鉄の長方形がの穴が開いたものと書いてあるサイトもあります。) それに対し、CAW のものは写真右で、素材は鉄、ハニカム状の穴の空いた薄い板です。 このパンチングメタルは、躯体左右のアルミ柱の溝に嵌め込まれています。 63 用のアルミパネルは、凹凸の分だけ厚みが出ていますので、この溝はその厚みが入るようになっています。 そのため、PRO-63 用の四角い穴の開いた鉄のパネルでは隙間ができてしまうので、溝に細いコード(ケーブル)を嵌め込んでガタを取るようにしています。 このCAWのパネルは、PRO-63のものより薄いのですが、溝の間隙には何も嵌められておらず、四周にテープを貼ることでガタを防ぐ措置が採られていました。 しかし、この個体には修理の手が入っているとのことでしたので、この処置は、CAW のオリジナルではない可能性もあります。 上板は、二本のボルトで止めている PRO-63 と異なり、普通の 63 同様、ずらして嵌め込む仕様です。 ② ネットワーク(遅延回路)関係等 ・ ・ ・ ・ 入力端子は交換されています。 この端子は CAW オリジナルだと思います。 元の 63 の端子ですが、二種類ありますので、どちらが付いていたかは不明です。 CAW のモディファイは、以下がキモだと思います。 コイルを除く殆どの素子が交換されています。 写真 左が 63 、右が CAW です。 矢印で示した素子が交換されています。 何がどう交換されているかは正確には判断できませんし、推定でも書くと非常に長くなりますので、割愛します。 ひとつだけこれは影響が大きそう、と思ったものだけ書きますと、右上の横向き矢印で示したフイルムコンデンサーです。 これは、信号入力に直列に入っているCRのイコライザーに並列に、つまり追加されています。 高音質として有名なMITのもので、8μです。 オリジナルで220μが入っていますので、交換ではなく、8μを追加することにより、イコライザーの特性が多少変化するとは思うのですが、音質に対する効果は、私には判りません。 (交換などの詳細を知りたい方はご連絡ください。 回路図に基づいて判る範囲で細かくお知らせします。) ③ 信号配線関係 ・ ・ ・ ・ 入力トランスの二次側、つまり出力側の配線材は、殆ど(全て?)交換されています。 上の写真でいいますと、左の赤と白の線が、右では青い線に交換されています。 (縦に走る白い線は放電の前兆検出用のアンテナですので交換されていません。) そして、次の写真のとおり、ユニットへの配線材も青い線に交換されています。 この線の材質は判りませんが、どうやら高品位のものが使われているようです。 さて、ここで疑問が湧きました。 この回路で、素子や配線材を替える意味があるのでしょうか。 静電型スピーカーでは、信号は、入力トランスで昇圧されています。 つまり、ユニットは電圧で駆動されているということで、そのインピーダンスは非常に高くなっています。 更に、QUAD では、遅延回路(ネットワーク)にコイルが直列に使われています。 このコイルは、髪の毛よりも細い線で巻かれており、一つの長さが約1000mあります。 ですので、最低域の信号は、トランスとこのコイル六本、つまり6000m以上の線を通ってユニットに入ります。 (顛末 オマケ 参照) そのような信号に対して、最後の50-60cmだけ高品位の線材を使用する意味はあるのでしょうか。 Crosby氏は、理論的に、また比較試聴して採用されていると思いますので異を唱える心算はありませんが、何とも私には理解できません。 長くなりますので今回はこの辺で・・・・ 次回は実際のレストア作業について書きます。 |
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