思い付くまま・・・・・実は恐ろしい QUAD の保護回路 |
2024年12月、CAWのキットを一部に使用していると思われる QUAD ESL-63 をレストアしたときのことです。 レストアが完了し、一定のテストの後、音出ししたときのことです。 妙なノイズが乗っていました。 信号波形がそもそも歪んでいるような、ジリジリといった感じの音が、弱音でも出ていました。 直感的に、これはユニットが原因ではないと思いましたが、念のためユニットをテストベンチに乗せ換えて聴くと正常でした。 再度レストアした63に乗せて聴きながら、徐々にVRを上げていきました。 信号の音量が上がるのと同じレベルでノイズも上がっていきます。 ウーン、と考えながら更にVRを上げたときでした。 突然音が出なくなりました。 アンプのディスプレイを見ると、CHECK CODE が表示されていました。 マニュアルに従って電源を再投入しても復帰しません。 アンプが飛んだ原因ですが、出力の短絡です。 過去に自分のミスでスピーカーケーブルを短絡したときと同じなのです。 ( その後、アンプをどうしたかは、こちらをご覧ください。) ノイズの原因とアンプが飛んだ原因の根は同じなのでしょう。 兎に角、原因の追及です。 アンプ出力が短絡するということは、まずはスピーカー入力トランスの一次側巻き線を含む回路素子を疑います。 このスピーカーにはCAW(?)のモディファイが施されていますので、入力側には二つのコンデンサーが増設されています。 この二つのコンデンサーは、LCメーターなどで調べた限りでは正常でした。 次にトランス自体の巻き線です。 これも、特性などを手持ちの他機と比較しても異常はありません。 となると、次に疑われるのは保護回路です。 しかし、保護回路を調べるとなると、プリント基板に実装されている個々の素子やICなど、いちいち調べるのは大変なので、問題点を絞るために、トランスに信号を直接入れて聴いてみることにしました。 どういうことかと言いますと、これでノイズが出れば、原因から保護回路は除外できます。 そして、これでノイズが出なければ、原因は保護回路、ということになります。 最初に書いたとおり、原因は入力の短絡(若しくは、アンプが短絡と判断するほどのインピーダンスの低下)ですので、トランスの二次側が原因である可能性は低い見られ、つまり、これでノイズが出るとすると、原因はトランスの一次側巻き線を含む回路素子ということになりますが、この実験では一次側に回路素子というものはありませんので、原因はトランスの一次側巻き線そのもの、又は、可能性は低いものの、トランスの二次側ということになります。 ちなみに、この実験で再度アンプ・・・今回は球のアンプです・・・にダメージを与えてもいけないので、写真のとおり、4Ωほどのセメント抵抗を直列に入れ、最低インピーダンスを確保しておくことにしました。 結果は・・・正常に音が出た・・・というあっけないものでした。 つまり、原因は保護回路。 さて、対応策ですが、前記のとおり、保護回路の素子を全部調べるのはとても大変ですし、そもそもやる気はありません。 と言いますのも、私の基本的なスタンスは、余計なものは極力省き、単純にする、ということですので、QUAD の保護回路は、オウナーのリクエストがない場合は外すことをお勧めしてきました。 外さずとも、保護回路が駄目になっても働かなくなる程度だろう、と考えていたので、強くお勧めすることはしませんでした。 しかし、今回のケースで考えを改めました。 今回のケースでは、上の経過をご報告し、オウナーのご了解をいただいて保護回路を外し、メデタシメデタシという結末でした。 これを書いている少し前、以前レストアした 2805 のオウナーからご連絡がありました。 音量を上げると、片chだけ音量が下がり数秒で復帰する、という訴えでした。 まさに保護回路が働いている症状で、どうやら、片chだけ過敏になっているようです。 対応策についてご相談がありました。 保護回路を完全に外すには、高圧回路と一体になっているプリント基板を外し、そして、その基板の保護回路のプリントを切断する、という方法を私は採っています。 この方法ですと、必要になったとき、比較的簡単に元に戻すことができます。 今回の場合は、元に戻す必要はなさそうですので、オウナーの方が簡単にできる方法を段階を追ってやっていただくことにしました。 今回の教訓です。 保護回路は意外に恐ろしいものです。 これからは、極力、保護回路は完全に外すようお勧めすることにします。 |
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