最近呑んだ吟醸酒について
   
      

 

2007年1−3月分                     

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  これからの話は消費者(飲み手)という立場で書いていきます。評論家や蔵元、酒屋の立場では見ていません。また、音楽とか味覚とかいう物は大変抽象的で表現が難しいのですが、平易に書きたいと思います。 よく、食べ物店の紹介記事で絶賛している物を食べると、首を傾げたくなる時が多々ありますし、テレビでリポーターが口に入れたとたん「うまい」と発言しているウソ等はここでは、しないように心がけています。
 

   ◆月に一度の例会とイレギラーで飲んだ吟醸酒について、ズバリ、どういう酒か皆様への判断基準を書きます。 
 A;味、B;香り、C;コストパフォーマンス、D;総合評価を、各5点評価(5;最上 4;良 3;まあまあ 2;まだまだ 1;評価外)で表します。 総合評価3−(マイナス)以下ではもう一度買うかと言えば、考えてしまうレベル。2ではタダで贈られても困ってしまうレベル。 
 私の独断と偏見なしで評価し、E;寸評も入れます。なお、会での評価も、判断基準の参考にしています。また、評価はこの日に飲んだ吟醸酒の味で、次回も酒の性格上、ロットや時間が変れば同じとは言切れませんが、傾向としては、間違ってはいないと思います。

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 吟醸酒の会へのお誘い 

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◇イイお酒を、イイ友と、イイ肴と、イイ会話で月1回楽しむ会です。◇


 2007年3月31日(土)

1.八戸酒造(青森県八戸市)  吟醸  「陸奥八仙 あらばしり」  無濾過生原酒
原料米;麹米/華吹雪 掛米/むつほまれ、 精米歩合;55%・60%   【アルコール分】18〜19度  【日本酒度】+2 【酸度】1.6   1.8L ¥2,572 (税込)
A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評; 封を切ると吟醸香がただよう。しかし、口に入れても強い香りはなく、ほのぼのとした香りが嬉しい。味わい深く濃厚で新酒らしからぬおませな娘です。この値段でこの酒質の酒が手にはいるなんて奇跡に近い。
 
2.今田酒造本店(広島県東広島市)  純米吟醸  「富久長 槽しぼり」  無濾過生原酒
原料米;八反35号、 精米歩合;58%  【アルコール分】17.2度   1.8L  ¥2,835 (税込)
A;味4+、B;香り4、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評;若干の酸味と渋味は新酒の味わいか。新酒のさわやかさと戻り香が素敵。基本の優しさが飲み手に伝わり、夏過ぎには大化けするかもしれません。
 
3.高橋酒造店(山形県遊佐町)  特別純米  「東北泉」  生酒
原料米;美山錦、 精米歩合;50%   【アルコール分】15〜16度  【日本酒度】+2.0 【酸度】1.3   【酵母】山形酵母  1.8L  ¥3,045 (税込)
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4
E寸評; 酒の酒らしい酒です。香り控えめ、味わい控えめ。控えめな娘です。
 
4.桃川(青森県百石町)  純米吟醸  「桃川 寒造り」  生原酒
原料米;五百万石、美山錦、 精米歩合;58%   【アルコール分】17〜18度  【日本酒度】+3 【酸度】1.5   1.8L  ¥3,360 (税込)
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4
E寸評; 寒造りはあたりまえ、夏には造りませんからね(冗談)。今年の寒も大寒も暖かい冬だったので造り手も困ったことでしょう。ごく普通の純吟です。
 
5.廣田酒造(岩手県紫波町)  純米吟醸  「廣喜 しぼりたて」  無濾過生原酒
原料米;吟ぎんが、 精米歩合;55%   【アルコール分】16〜17度  【日本酒度】±0 【酵母】岩手2号  1.8L  ¥3,600 (税込)
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス4−、D;総合評価4
E寸評; 五味がバランスして旨いが、後味が重く杯が進まない。紫外線の影響が大きい透明ビンはいただけない。
 
6.磯自慢酒造(静岡県焼津市)  特別本醸造  「磯自慢」  無濾過生原酒
原料米;山田錦、 精米歩合;麹55%、掛60%   【アルコール分】18〜19度  【日本酒度】+6 【酸度】1.2  【酵母】NEW−5(静岡)  1.8L  ¥3,240 (税込)
A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評; 本醸造と肩書きにはありますが、吟醸酒が裸足で逃げ出します。五味がバランスして旨味充分。香りも充分。値段や肩書きだけでは中身の善し悪しは分からない典型です。

 

付録;来福酒造(茨城県筑西市)  純米大吟醸  「来福」  生原酒
原料米;ひたち錦、 精米歩合;15%   【アルコール分】17〜18度  【日本酒度】+ 4 【酸度】1.2   1.8L  会員持ち込み(10,500)
A;味5、B;香り5、D;総合評価5
E寸評; このお酒の最大の特徴は精米歩合15%(85%をヌカとして捨てる)と言うことです。米粒一つが磨かれて粟かヒエの大きさしかありません。それで醸した酒ですので、雑味は一切無く、水のようにサラサラとしていますが、旨味は充分伝わってきます。究極の吟醸酒の一つで、蔵元のお遊び(?、研究)で造られた酒です。自分のご褒美の為に飲む美酒です。

 

安価アルコールを添加した「三増酒」は清酒と呼べなくなります。
 酒にトウモロコシなどコメ以外から造ったアルコールを加えて量を3倍程度まで増やす「三倍増醸造酒(三増酒)が10月から「清酒」として販売出来なくなる。昨年5月の酒税法改正で、コメから造った酒を上回る量のアルコールを加えると、清酒として認められなくなったためだ。日本酒の消費量が20年で半減する中、歴史的な役割を終えようとしている。
 三増酒は戦後のコメ不足の中、国が酒税を確保するため、安価なアルコールを加えた酒を清酒と認めたのが始まり。コメ不足解消後も「アルコールを添加した方が品質が安定しやすい」などの理由で清酒扱いが続き、ラベルの清酒表示にも区別はなかった。ただアルコール添加が悪酔いの原因。日本酒の評価を落としている」との批判があり、日本酒造組合中央会なども「コメで造ったお酒が半分以下しかないものを日本酒と認めるのはおかしい」と見直しを求めていた。
 10月以降は「リキュール」扱いとなり、アルコール度数15度で1.8リットルあたり216円だった税額が270円に上がる。
 「三増酒の味を好む人も多い」(大手酒類卸)と製造を続けるメーカーもあるが、大半は添加アルコールを減らす方向。山田聡昭・酒文化研究所第1研究室長は、「三増酒を否定する必要はないが、低い税率は必要なくなった。『日本酒はコメを醸酒したもの』という本来の姿に戻るだろ」と話している。【毎日新聞4/1朝刊より】

 やっと正常な日本酒=清酒に戻ることになりました。三増酒の味を好む人も多いと言うことを問屋筋は言っていますが、それが日本酒の衰退を招いたのです。それを造り続ける蔵元(メーカー)は生き残れなくなるでしょう。決して私はそれが悲しいことだとは思っていません。全ての商品、サービスは品質で競争するのが当たり前の世界ですから。特定名称酒(本醸造酒、純米酒、吟醸酒、純米吟醸酒、大純米吟醸酒など)は消費が落ちていません。落ちているのは三増酒だけです。消費者はバカではありません。逆に消費者をバカにしてはいけません。
 


 2007年2月24日(土)

 

1.富士高砂酒造(静岡県富士宮市)  本醸造  「高砂 樽酒生詰
原料米;五百万石、 精米歩合;60%   【アルコール分】17.8度  【日本酒度】+5.5 【酸度】1.7   1.8L  ¥2,415 (税込)
A;味3+、B;香り3+、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価3+
E寸評; 本醸造生原酒を2日間、本物の樽に入れたのを瓶詰めしています。
 杉の香りがプンプン。樽酒好みの飲み手には最高なのでしょうが、吟醸酒と比べると・・・。いけません、比べては。
 燗をしました。杉の香りは変わりませんが、雑味、飲みにくさが消えて、強い辛口になってさらりと口に入るようになりました。燗は熱めが良いでしょう。(あぶったスルメを付けてね)

 


 
2.栄光酒造(愛媛県松山市)  大吟醸  「すえながく 火入れ
原料米;麹米/松山三井20%、掛米/雄町80%、 精米歩合;50%   【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+1 【酸度】1.7  【酵母】EK-1  1.8L  ¥2,780 (税込)
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4
E寸評; 請負地酒職人・白澤芳秀杜氏『愛媛版・すえながく2006年』醸造。
さらりと喉を通り、香りも控えめ、コクも深みも控えめ。しかし、バランスが取れて旨さがある。

 

 

3.竹鶴酒造(広島県竹原市)  純米 「小笹屋竹鶴 大和雄町」 生原酒17BY
原料米;広島県竹原市大和町産雄町、 精米歩合;60%   【アルコール分】18〜19度  【日本酒度】+10  【酸度】2.4  【酵母】協会701号   1.8L  ¥3,150 (税込)
A;味4、B;香り3+、C;コストパフォーマンス3、D;総合評価3+
E寸評; 色濃く1年ものですが、既に老香(ひねか=古くなると出てくる香り)が出始め、旨さのピークを越えていた。
 人肌に燗をしたら、老香が消えて優しい辛口になって旨さが増えました。燗時総合評価4。
 

 

 

4.神沢川酒造場(静岡県由比町)  純米吟醸  「正雪 別撰・山影純悦」  生貯蔵
原料米;兵庫県産山田錦、 精米歩合;50%   【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+2 【酸度】1.3  1.8L  ¥3,360 (税込)
A;味4+、B;香り5、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評; 味わいさわやか、喉ごしさわやか、香りよく純米吟醸のレベルを超えている。いつもの正雪の旨さが出ていて安心して飲める。

 

5.府中誉(茨城県石岡市)  純米吟醸  「渡舟 ふなしぼり」 生詰
原料米;茨城県八郷町産「渡舟」、 精米歩合;50%   【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+2   【酸度】1.5  1.8L  ¥4,100 (税込)
A;味5、B;香り4+、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評; コク、深みが複雑に絡みあい、味わい、香り高いが酸味強く喉ごしツライ。旨いが重くグイグイ飲む酒ではない。
 

 

この時期の酒選びは難しい。
 新酒が市場にドッと出始めています。その中にあって1年ものの先輩がまだ店頭をにぎわしています。先輩にも二つのタイプがあります。一つは、ただ年を食ってしまい、教養も品性もなくしてしまったグループと、人生を豊に過ごして芳醇、濃厚になったグループです。この後者のグループはどんな若者にも負けるはずはありません。この熟成酒に会いたさに格闘するのですが、オバンの大群に私はタジタジとなるのです。
 やはりピチピチ娘にセンスの悪いオバンはどうあがいても勝ち目はありません。


 2007年1月27日(土)

1.清水酒造(埼玉県騎西町)  本醸造  「花菱」 生原酒
原料米;−、 精米歩合;60%   【アルコール分】18〜19度   1.8L  ¥2,380 (税込)
A;味5、B;香り4+、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評; 暖かく丸味があって甘く柔らかい。ふんわかと飲み手を包み込む。安心して飲める熟成酒顔した濃厚な新酒です。ベストパホォーマンス満点の酒です。

 

2.中島醸造(岐阜県端浪市)  純米  「小左衛門」  無濾過生原酒
原料米;−、 精米歩合;70%   【アルコール分】17〜18度   1.8L  ¥2,500 (税込)

A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4

E寸評; 山廃仕込みの味わいがガンガン攻めてくる。この山廃の味わいは好き嫌いが激しく難しい。
”コノワタ”や”クサヤ”、”ウルカ”のように評価の別れるところです。
燗をしてみましたが大きな変化はありませんでした。

 

3.小林酒造(栃木県小山市)  吟醸  「鳳凰美田」   無濾過生酒 
原料米;五百万石、 精米歩合;55%   【アルコール分】16〜17度  【日本酒度】+3 【酸度】1.5  1.8L  ¥2,520 (税込)

A;味5、B;香り4+、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価

E寸評;新酒かすみ (薄にごり)。吟醸酒のごく標準的な味わいと品質を持っている。標準的とは酒の旨さの中心的存在で、通信簿の”3”ごく普通、と言う事ではなくスタンダードとして優等生です。五味バランスしていて、雑味無く充分な味わいを持っているので、安心して飲めます。新酒のわりに落ち着いた熟成感がある、ベストパホォーマンス満点の酒です。

 

4.須藤本家(茨城県笠間市)  純米吟醸  「霞山」  生酒
原料米;−、 精米歩合;60%   【アルコール分】15〜16度  1.8L  ¥2,730 (税込)

A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4

E寸評;渋味が感じられるが、サラリと口中を抜けていく。燗をしてみましたが変化はありませんでした。

 

5.舟木酒造(福井市大和田町)  純米吟醸  「神力」   無濾過生原酒
原料米;福井県産神力、 精米歩合;60%   【アルコール分】17〜17.9度  【日本酒度】+4 【酸度】1.6  1.8L  ¥3,150 (税込)
A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評; 綺麗な味わいのある上品な酒です。キャップの中心に穴が開いている、薄にごりですが、オリが瓶の底に沈んでいます。その清澄上澄み部分と撹拌して濁り酒にした時の味わいは変わりません。では薄にごりにした理由は?
戻り香と味わいは絶品!

 

 

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