最近呑んだ吟醸酒について
   
      

 

2010年4−6月分

   

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  これからの話は消費者(飲み手)という立場で書いていきます。評論家や蔵元、酒屋の立場では見ていません。また、音楽とか味覚とかいう物は大変抽象的で表現が難しいのですが、平易に書きたいと思います。
 よく、食べ物店の紹介記事で絶賛している物を食べると、首を傾げたくなる時が多々ありますし、テレビでリポーターが口に入れたとたん「うまい」と発言しているウソ等はここでは、しないように心がけています。

 

   ◆月に一度の例会とイレギラーで飲んだ吟醸酒について、ズバリ、どういう酒か皆様への判断基準を書きます。 
 A;味、B;香り、C;コストパフォーマンス、D;総合評価を、各5点評価(5;最上 4;良 3;まあまあ 2;まだまだ 1;評価外)で表します。 総合評価3−(マイナス)以下ではもう一度買うかと言えば、考えてしまうレベル。2ではタダで贈られても困ってしまうレベル。 
 私の独断と偏見なしで評価し、E;寸評も入れます。なお、会での評価も、判断基準の参考にしています。また、評価はこの日に飲んだ吟醸酒の味で、次回も酒の性格上、ロットや時間が変れば同じとは言切れませんが、傾向としては、間違ってはいないと思います。

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◇イイお酒を、イイ友と、イイ肴と、イイ会話で月1回楽しむ会です。◇


2010年次回例会は 7月31日(土)です。



2010年6月26日(土)

.栄光酒造(愛媛県松山市)   純米吟醸  「松山三井・袋吊り」 無濾過生酒
原料米;松山三井、 精米歩合;50%   【アルコール分】 16〜17度 【日本酒度】−3 【酸度】1.6 【使用酵母】EK-1  1.8L \2,730
 A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4
E寸評;ホロリと柔らかく口中で転がる。酒色、色づいて、熟成香も出て旧来の日本酒的な味わいがある。


2.富士高砂酒造(静岡県富士宮市)   純米吟醸  「高砂・槽掛中取」 無濾過生原酒
原料米;山田錦、 精米歩合;55%  【アルコール分】 17〜18度  【日本酒度】+5 【酸度】1.4 【使用酵母】静岡酵母  1.8L \3,150
 A;味4+、B;香り4+、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評;酸味がしっかりと着いて、若さを感じさせる。いつもの人を引きつけて離さない魅力が無いのが悲しい。


3.喜久水酒造(秋田県能代市)   吟醸  「縄文能代」 
原料米;華吹雪、 精米歩合;麹米・山田錦48%/掛米・55% 【アルコール分】 15.5度 【日本酒度】+2 【酸度】1.5  1.8L \3,150
 A;味4+、B;香り4+、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評;低温熟成酒ですが、どの位寝かせたのでしょうか。老香は無いが、色濃く、バランスはしているが味わい薄い。


4.甘強酒造(愛知県蟹江町)   限定大吟醸  「四天王」 
原料米;山田錦、 精米歩合;40%   【アルコール分】 16〜17度 【日本酒度】+6 【酸度】1.3 【酵母】広島酵母  1.8L \3,150
 A;味4+、B;香り4+、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評;<全国新酒鑑評会金賞受賞酒>呑みやすくサラリと口中を抜ける。旨いのか、マズいのか、分からずに通り過ぎる。受賞酒というが、濃厚さ、奥行き、ふくらみ、感動がない。シャバシャバ感だけが残る。


5.神沢川酒造場(静岡県由比町)   純米吟醸  「正雪・山影純悦」 薄にごり生
原料米;山田錦、 精米歩合;50%  【アルコール分】 16〜17度 【日本酒度】+3〜5 【酸度】1.3〜1.5  1.8L \3,500
 A;味4+、B;香り4+、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評;白濁した酒の中から酸味のきつさと、酒の旨さが伝わってくる。いつもの旨い!が感じられない。


6.青島酒造(静岡県藤枝市)   純米吟醸  「喜久酔」 
原料米;山田錦、 精米歩合;50%   【アルコール分】 15〜16度 【日本酒度】+3〜7 【酸度】1.2〜1.5 【使用酵母】静岡酵母  1.8L \3,970
 A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価5
E寸評;アルコール度数は低いのに酒の旨さが伝わってくる。味わいバランスして、香りも良し。旨さが口中で暴れる。



2010年5月29日(土)

.秋田醸造(秋田市楢山登町)   純米吟醸  「ゆきの美人」 無濾過生酒
原料米;麹米・山田錦20/掛米・秋田酒こまち80、 精米歩合;55%   【アルコール分】 16.5度 【日本酒度】+3 1.8L \2,600
 A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4
E寸評;食中酒として、肴と楽しみながら呑むにはベストなお酒。キツい酸味が口中を刺すが、その後に優しい香りと旨味が残る。

 

2.喜多酒造(滋賀県東近江市)   純米吟醸  「喜楽長 三方良し」 
原料米;麹米・山田錦/掛米・渡舟、 精米歩合;麹米・50%/掛米・60%   【アルコール分】 16度  【日本酒度】+5.6 【酸度】1.5  1.8L \2,625
 A;味4+、B;香り4+、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評;雑味なく柔らかくホワホワっと口中を包む。のどごしの後に旨味と香りが立ち上がってくる。食中酒にしては勿体ないくらいバランスした旨さと、自己を主張しているが出しゃばらず、肴を持ち上げる。

3.神沢川酒造場(静岡市清水区)   大吟醸  「正雪 無量寿」 生貯蔵酒
原料米;山田錦、 精米歩合;麹米・35%/掛米・50%   【アルコール分】 16〜17度  1.8L \2,970
 A;味4+、B;香り4+、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評;雑味なく、味わいバランスし柔らかい。旨味十分で優しさの中にキレがある。正雪の酒造りの上手さがこの一品にも出ている。

4.墨廼江酒造(宮城県石巻市)   純米吟醸  「墨廼江」 生貯蔵酒
原料米;雄町、 精米歩合;55%   【アルコール分】 16〜17度  1.8L \3,045
 A;味4+、B;香り4+、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評;旨味が背伸びせず、素直に飲み手を追いかけてくる。呑み疲れせず安心できるし、雑味なく香りも清楚。

5.大澤酒造(長野県佐久市)   純米大吟醸  「明鏡止水 m’09」 
原料米;麹米・山田錦/掛米・美山錦、 精米歩合;麹米・40%/掛米・45%   【アルコール分】 18度 【日本酒度】+4 【酸度】1.5  1.8L \3,500
 A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評;兄弟で酒造りに励んでいる蔵元の成果がこの一献に凝縮された。肴と一緒に味わえればいいと言う酒ではなく、最後の一口のために残された食後酒です。生鮭トバのきつい肴と合って、初めてこの酒をとき伏せた。孤高の酒で、ガブガブ飲む酒ではないのに、最後に出されたのにもかかわらず、一滴残らず完飲された佳酒。

6.初亀醸造(静岡県藤枝市)   純米吟醸  「初亀べっぴん」 
原料米;山田錦、 精米歩合;55%   【アルコール分】 15〜16度 【日本酒度】+8.0 【酸度】1.2  【使用酵母】静岡NEW−5  1.8L \3,600
 A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評;濃厚で香り豊かで芳醇。べっぴんとは分かるが、私を離してくれない深情けの酒です。




2010年4月24日(土)

.小黒酒造(新潟市北区)   純米吟醸  「嘉山」 無濾過生原酒
原料米;越淡麗1等米、 精米歩合;55%   【アルコール分】 18度  1.8L \2,790
 A;味4、B;香り4+、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評;香り華やかで若い娘の力強さを感じさせます。炭酸味が口中で暴れますが、まだまだ新酒のオボコなのでしょう。

 

2.早川酒造(三重県菰野町)   純米吟醸  「田光(たびか)責め」 袋吊り生
原料米;雄町、 精米歩合;50%   【アルコール分】 17度  1.8L \2,730
 A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評;日光と呼びそうになって、あわてて「たひかり」と読んで、正解は「たびか」?どんな意味なのでしょうか。それよりもこの味が責め? 雑味がなく、旨味が厚く、充分すぎる旨さが弾けます。データからしても、ラベルや瓶のコストを考えてもマズい訳はありません。

3.早川酒造(三重県菰野町)   純米吟醸  「田光(たびか)中取り」 袋吊り生
原料米;雄町、 精米歩合;50%   【アルコール分】 17度  1.8L \3,250
 A;味4+、B;香り4+、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評;上記田光の中取りバージョンです。常識から言えばこちらの方が旨いんでしょうね。でも、実際は上記の方が旨いんです。味わいは責めとくらべ爽やかで淡麗。純真無垢のお嬢様タイプ。悪く言えば人生の深い厚みがまだありません。

4.佐久の花酒造(長野県佐久市)   大吟醸  「佐久の花おりがらみ」 無濾過原酒
原料米;長野県産ひとごこち、 精米歩合;29%   【アルコール分】 17〜18度  1.8L \3,150
 A;味4+、B;香り4+、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評;この酒も責めです。おりがらみで白濁した液体の中から旨味が上がってきます。雑味は感じず、厚みのある旨さに酔いしれます。この蔵元さんの同銘柄の酒は香りが強く華やかですが、落ち着いた香りに安心感がただよいます。

5.富久千代酒造(佐賀県鹿島市)   純米吟醸  「鍋島」 生酒
原料米;山田錦、 精米歩合;50%   【アルコール分】 16〜17度  1.8L \3,360
 A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価5
E寸評;旨味が口中で爆発せず、一拍してからその味わいが楽しめます。微妙に五味のバランスが崩れているのですが、そこがチョイワル親父の良いところなのでしょう。

6.八戸酒造(青森県八戸市)   純米大吟醸  「陸奥八仙隠し酒」 生酒
原料米;華吹雪、 精米歩合;50%   【アルコール分】 17〜18度  1.8L \3,465
 A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評;ラベルは八仙ですが裏焼きになっています。濃い色合いの液体の中から濃縮された旨味が立ち上がります。これも隠し酒(責め)ですが、旨味がいっぱい詰まった佳酒です。

★今回は、初取りや中取りの通常バージョンではなく、3本が責めです。この責めは酒を絞る時に最初に出てくる初取り、初たれや、中間で取れる中取り、これらは澄んだ味と雑味がなく品性が良いとされています。最後に絞られて出てくる酒は責めと言います。この責めは、強引(?)に最後の一滴まで絞り込みますので、雑味が多く品の悪い、言い換えれば飲めるような酒質の酒ではなく、販売はされないのが通常です。では必ず出来るこの部分の酒はどうすると言えば、普通酒や地元向けの酒に混ぜ込まれます。良い吟醸酒が出来る蔵元の普通酒が旨いのはこの辺の事情もあります。
 話戻って、責めってそんなにマズいの? 今までの一般常識からすると旨くないと言われ、販売もされませんでしたが、実際呑んでみると、こんなにも旨いのかと逆に驚かされます。そう、旨いんです。それに今のところ蔵元さんも普通酒に混ぜ込むような値段で出していますので、中取りなどから比べると安価で、コストパフォーマンスは最高です。その味を自分の口で見付け低価格で商品化した酒屋さんに感謝です。
 珈琲でもそうなのですが、ドリップで立てると最初にしたたり落ちる珈琲はさらっとして物足りなさを感じます。中間の味はその珈琲の味わい、最後は渋さを伴った重さがあります。でも、これを全部混ぜると、全ての味が渾然一体となってバランスされるのです。
 お酒でも同じなのではないでしょうか。何処か一ヶ所取り出しては酒の一面しか味わう事が出来ません。人間と同じように長所も短所も合わせて、初めてその人を評価できるのと同じような気がします。
 責め、この旨さは、コロンブスの卵なのでしょう。有るビール会社で出している「一番搾り」の、残りの二番三番絞りはどこに行ってしまうのでしょうね。


 

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