最終変更日:2001/5/28

いただいた主要なコメントの一覧を下記に記します(内容を変えない程度に編集しています)。これらのコメントを踏まえて、「無洗米と普通米のLCA」を更新する予定です。コメントをいただいた方々に御礼を申し上げます。

メッセージの送り先:kcitoh@mx2.ttcn.ne.jp


日付 コメント内容
3/28 今まで無かった無洗米加工機を導入しての比較をするのに、インフラにかかった環境負荷(つまり、新規加工機を作るのに要する環境負荷)を無視して議論することに対する疑問に如何答えているのでしょうか?
たとえて言うと、生分解性プラスチックと汎用プラスチックでLCA比較をしたときに、生分解性プラスチックのソースは、トウモロコシのような作物資源なのに、その作物資源を作ることをスポッと抜かして、樹脂は生分解するから汎用プラスチックより環境負荷が小さいといっているようなもの。
バウンダリーをどう設定するかという問題に如何応えるのか?(H氏)
(回答抜粋)おっしゃる通り、インフラは考えていません。ただ、インフラの影響は、下水や上水も馬鹿になりません。おそらく、ちゃんとやるとそちらのほうがおおきいのではないかと考えています。ただ、データがない!ということで、今回はインフラを除く「通常の」LCAをやりました。
3/28 本当に的確であれば、「データがない!」では、誰も納得しません。何らかの情報を入手すべきで、それができるいい立場に伊藤さんはおられると思います。企業人や業界関係者であれば当然、入手困難でしょうが・・。
的確なデータが無くとも、無洗米加工機の原理からして、どれだけ大変なのか、たいしたこと無いかくらいは把握しておいてもらいたいというのが希望です。
(伊藤さんもコピー機を手がけたくらいですから、百も承知とは思いますが、本来コピー機の寿命なり生涯コピー枚数が明白であれば、紙一枚当たりのコピー機の減価償却みたいなものを上乗せしてコピー代金がはじき出されるのと同じように、無洗米加工機の減価償却費や利便性を上乗せしてるから、単価が上がっているのだと思います。新しい技術だと思いますが、無洗米加工機の生涯処理容量、メンテナンス費用などが本来のLCAで効いてくるように思いますが、ちがうのでしょうか?)
ちょこっと電気を食いますが、無料で使える(環境負荷の無い)無洗米加工機が空から降ってきたので、使いました。さぁ、どちらがお得?といわれて、調べてみたら、無洗米のほうが良かったです。といっているような感じがします。

kenjy> データがない!ということで、今回はインフラを除く「通常の」LCAをやりました。

「通常の」は、本当でしょうか?それとも、「やむなく」なのでしょうか?極論すれば、フロー図の中での黄色い囲みの数に比例して負荷があるくらいは、誰でもわかる。まして、無洗米加工では粘着ぬかは、有料で売られているではありませんか!(同H氏)
(回答抜粋)このケースのような大量生産設備の場合は、インフラの影響は小さいことが多いです(資料の4参照)。しかし、把握しておく必要があるという点は同感であり、今後検討したいと思います。
(4/11追加)無洗米加工のインフラを含めたLCAを概算したところ、それぞれの環境負荷量が最大数倍程度増えることが分かりました。結果の図3,4を見ていただければ分かると思いますが、この程度の差であれば、「無洗米の方が普通米に比べて環境負荷が小さい」との結論に全く影響しません。とりあえずご報告まで。
3/28 コメントさせて頂くと、双方の米を精米するまでのユニットプロセスがありませんが、これの差は殆どネグリジブルなのでしょうか?米じたいの栽培、精米度等に差があって良いように思いますが。(MY氏)
(回答抜粋)無洗米はどのような米であっても可能だと聞いていますが確認します。
(追加事項)確認したところ、無洗米にするために必要な銘柄はないそうです。ただ、くず米は苦手とのことです。
3/29 思いついた箇所を、メールします。
  1. 「けた違い」は「桁違い」の方が良いのでは?
  2. 一般の方にも査読してもらうとすれば、「積上方式」「産業連関方式」は、分からないのでは?
    ・用語集ページに入れておき、そこへリンクするようにしますか?
  3. 表1と表2の間は、1行空けた方が、見やすいです
  4. 「水質汚濁物質:BOD排出量」のみ、産連法のほうが小さいのはなぜですか?
  5. 表3の「要素名称」の各項目が、途中で切れている(見えなくなっている)のが気になります
  6. 図1と図2の間も、空間があった方が良いと思います
  7. 「汚泥」とありますが、汚泥のLCAを実施とはどういうことか見えにくいと思います
    ・輸送して、廃棄場にて廃棄?
  8. 無洗米では、無洗米加工機を持つメーカまでの工程が、1クッション入ると思います。そこで発生する余剰輸送分は、入っているのですか?
    ・精米所に、既に無洗米加工機があるものと想定しているのなら、記述があった方が
    良いと感じました
  9. 「なんとなく」の感覚として、数回水を使うって洗う方が、機械を動かすより「エネルギー消費量」が小さいようなイメージがありますね。
    ・見えない部分の電力使用量が、多いということですねー。(KN氏)
(回答抜粋)4.計算仕方による誤差が入っています。このような誤差が結論をひっくり返さないほど無洗米は有利であるため、この部分についてはそれほど検討してません。8.精米所に無洗米加工機があります。その旨記載します。9.「見えない部分」を知るためにLCAは役に立つのだと思います。
3/29 チョット見ての感想なので当ってはいないと思いますが。
ご指摘の差は、@普通米と無洗米で電力消費量が異なること、A普通米ではとぎ水を下水に流していること、から生じているのではないでしょうか。
無洗米は電力消費が少ない上に廃棄物が管理されているあるいは管理しやすい。では電気の影響と米ぬかの影響でどちらが・・・と考えると、精米のときに出る糠は同じとすると、消費者が賢くて庭木に肥料として撒き、下水を通らないとしたらどうなるでしょうか。
産連との差は電力をもとに考えれば説明できることでしょうか?(OK氏)
(回答抜粋)もし下水を通さない場合はかなり結果が異なると考えられます。確認しますが、少なくとも結論にその旨付け加えることにします。
3/30 せっかくの感度分析を織り込んだ取り組みが、いつものLCAの議論(バウンダリーの妥当性)に陥っているような気がします。まず、この点について、特に、HPなどを使った公開議論では、必然的に任意性を持つバウンダリー設定を他人に押し付けるような議論にならないようなコミュニケーションルール作りが必要だと痛感しました。この例では、下水道設備も天から降ってきたわけではないので、明確な正解は無いと認識しておくべきでしょう。

せっかくですから、「バウンダリーのあいまいさに対する感度分析」という発展的な方向に進めていく機会にされるとよいと思います。

感度分析ですが、最終的に分布の有るグラフは判断を進める際に非常に魅力的なものです。できれば、判りやすく使いやすい表示方法にまで発展させてください。ただ、今回のデータは、インベントリーの全ての項目で一方が他方より大きな値を持つものに対して行われています。そのような場合でも「分布の山が重なった部分もある」ということにむしろ意味があるという解釈もあります。また、ストレス因子ごとに両者の優劣が異なるような系での比較において、このような一見わかりやすいグラフになるのでしょうか?

それらを踏まえて、「この分布のある表示方法からAがBより優れている」という言い方はまだできないと思われます。分布を考慮する必要も無い系の計算にわざわざ複雑な要素を持ち込み他の設定の曖昧さを糊塗しているという受け取り方をされる危険性も認識しておいて下さい。(KH氏)
(回答抜粋)インフラの影響等も含めた「バウンダリーのあいまいさに対する感度分析」を実施したいと思います。また、説明不足の点がかなりあるのは事実であり、今後検討します。
3/30 第1の驚きは、斯様なテーマをする意味がどこにあるのかという不思議です。

しかし、検討している以上は、真摯に行われているかが問題です。私の疑問は、家庭から下水口に流したとぎ汁が100%下水処理場の負荷になっているという計算ではないかという点です。おそらく、途中で大部分生物分解してしまうのではないかと思いますが、いかがでしょうか?むしろ、分解を促進する微生物を増やすというプラスの面もあるかもしれませんね。実験はされましたか?生物化学のプロセスを無視して、数値だけの計算では結果を大きく誤る事につながります。また、大食品産業の台所の話と一般家庭の話をごちゃ混ぜにし、国民を無洗米依存に導く恐れがあります。その場合の長期的社会効果も考慮してテーマの選択をすべきではなかったでしょうか?(SM氏)
(回答抜粋)無洗米を選んだのは、一般の人に分かりやすいこと(従って議論がしやすいこと:LCAに限らず日本の学会は議論が足らなさすぎだと思います)、またデータを全部公開しても問題ないこと(企業でLCAをやっている以上データを全部公開することはできません)等の理由からです。
また、下水道処理にかかわるデータの全体に対する影響は、感度分析を見てもらえば分かりますが、ほとんどありません。途中で分解されてもされなくてもLCAの結果には影響しません。(今回の報告には触れていませんが、)家庭から雑排水を河川へ流すことの影響が普通米の環境負荷の大部分を占めています。
4/2 > 要するにLCAとしての成功例が必要だったのでこれを選びました。
成功例は励みになることは分かります。企業の製品開発にあたって の候補Aと候補Bの比較という意味では「ちゃんと」使えているのではないかと理解しています。企業との接点が少ないので、違っているかもしれませんが。

> > おそらく、途中で大部分生物分解してしまうのではないかと思いますが、いかがでしょうか?
> データや文献がありましたら教えてください。
データや文献から言っているわけではありません。テーマ名から、下水への負荷を中心に比較するのだろうと考えて、インパクト因子を想定しました。そして、分かっていない事もあるのではないかと思いました。LCAに限りませんが、アセスメントツールは、良く分かっていないところを飛ばしてしまうと日ごろから感じています。

(中略)

世論向けLCAは紙おむつから始まり、使い捨て容器に進みました。しかし、その過程で世論を納得させ得たかと言えは、ノーです。なぜならば、そのようなLCAが環境対策に貢献していないからです。たぶん、無洗米をかんかんがくがくと議論しても、環境対策にはつながらない。「下水道処理にかかわるデータの全体に対する影響は、感度分析を見てもらえ ば分かりますが、ほとんどありません。」それでも無洗米が良いと言う結果が出れば「成功例」と言えるのかなあ、、、。(同SM氏)
(回答抜粋)紙おむつや使い捨て容器のLCAは、実施者によって結果が異なっていることが指摘され、そういったことをさして「LCAは使えない」との認識が広まってしまいました。いったんそういった認識ができてしまうとそういった考えをひっくり返すのに非常に時間がかかります。
不確実性分析は、LCAを実施する上で最も重要な技術の一つだと思います。リスクアセスメントでも、かなり大きな不確実データから、社会的に影響の大きな結論を出しますよね。そういった仕組みを作らない限り、紙おむつや使い捨て容器のような「あやまったLCA]を出すことになってしまうと考えます。
4/3 あいにく何といったことはないのですが,今,ちょうど無洗米を使っていたところなので,結果を見てほっとしていました。家事に手を抜いて環境にいい試しがないのですが,各家庭で分散して排水されるより,きっと集中的に排水処理された方がいいのだろうと言い聞かせていたところでした。もちろん,これまでもといだ水は庭にまいたりしていましたが。さらに開発され,信頼性を高められることを楽しみにしております。(IN氏)
(回答抜粋)コメントありがとうございました。
4/4 まだじっくり読ませて頂いてないので、きちんとしたことは言えないのですが,無洗米と普通米のLCAを興味深く読ませていただきました.生協等では"環境負荷の少ないお米,無洗米"と売り出しておりますが,数値化されていることはなかったので参考になりました.このLCA自体へのコメントはまたさせていただきたいのですが、今までのコメントを読ませて頂いて思ったことを書かせていただきます.

まず、コメントをかかれている方の大半はあまりご自分では使用されている方ではないように思われます.今後,LCAをいろいろな側面でやっていくうえで問題になると思うのですが,学術的な意味と実生活での意味をどう調整させるかと言うことだと思います.,今回の例でいえば,新しい装置を作るインフラのLCAも大事だと思いますが,あまりそのことに重きを置くことはないと思っています。(程度にも寄りますが)新しいことをしようとすればある程度の初期負荷は発生するのですから。それよりも直接的にはあらわれてこないけれど、間接的なことで大事なことが有ると思うのです.
今回の例ですと、お米のとぎ汁というのは皮膚が弱い人にはかなりきついものです。意外なことにお米というのはいがいとあくがあるのです。そうすると手あれがする→病院に行く→薬を使う・・・などの出来事がおこってきます。詭弁に思われるかもしれないのですが,特に家事に関するものは実際にやっているものとやっていないものが感じていることは違うことも多いです.そういう差をどう考えていくかが受け入れられるLCAかどうかだと思います.だからといって、あまり間接的なことばかりやっているとおかしなことになってしまうの
でかなり慎重にならないと行けないと思いますが。
今までと違い,環境の専門家でない一般の人も環境に興味を持ち始めた昨今,ますます情報を発信する側は大変になりますね。企業の環境担当としても前より責任が重大になってきたと思います。(MH氏)
(回答抜粋)今までのLCA事例/研究は、学会や企業関係者の方だけを対象としていたような気がします。これからは、もっと市民の方を向いたLCA研究をやっていきたいと思っています。
4/5 1.前文に(株)東洋精米機製作所および関連会社・組織から、利益供与あるいは支援を受けていない。との事述べていますが、図2の無洗米フローを見ればだれでも東洋・BGとの関係を想像します。東洋及び東洋の関連から支援を受けていないと言うことは、他社や他の団体から支援を受けているということなのでしょうか。
2.伊藤さんは無洗米の加工方法を分類されていますか。粘着ぬか方式は東洋・BGだけが採用している方法です。もっともその詳細・中身は明かさないのですから想像でしか言えませんけれど。
  私達の分類は以下の通りです。(代表的なメーカーだけですが)
 ・湿式法
   サタケ/NTWP
   東洋/BG法
   クリキ/水洗法
 ・乾式
   日本製鋼所・トーア/W−ECO
   クボタ/リフレ
   ヤマモト/カピカ
3.現在販売の面で若干他社をリードしているのは、(中略) 湿式法であり、表1や表2の結果は間違っています。無洗米の製造過程で莫大な水と、乾燥の為のエネルギーを消費しているからです。無洗米の製造過程で水を全く使用しない乾式法なら納得はできますが。(NY氏)
(回答抜粋)言葉足らずで申し訳ありませんが、本LCAは「BG無洗米」のみを対象としました。また、支援はどのような団体からも受けていません。それと、BG精米製法は、水を使わない方式だと聞いていますが、もう一度確認します。
(追加事項)確認したところ、精米加工のところでは水は全く使っていないとのことです。ちなみに、粘着ぬかを肥料に商品化するところで、造粒のために水を少量つかっています。
4/11 無洗米と、普通米に差があるのはわかりました。

その差はいかほどなのでしょうか。米(あるいはご飯)1kgについての差、あるいは1年分で車で**km送れるだけのガソリンに匹敵とかのような表現ができませんでしょうか。市民としてわかりやすい数字の方が良いと思います。
 また、米を食する立場としては、無洗米にすることで、負荷の減る割合を知りたいところです。ご飯を食する、または作るという行為の環境負荷の何%が削減できるというのかを示していただくとありがたいです。(KT氏)
(回答抜粋)差を分かりやすく表現するのは必要でしょう。今後検討します。
ちなみに、BODだけを見れば、精米1kgあたり、無洗米から普通米にすると、魚がすめる濃度(5mg-BOD/L)にするには風呂おけ(300L)3.8杯分の水で薄める必要があります。
それと、今回のLCAは普通米と無洗米の差だけに注目しているため、環境負荷の減る割合は分かりません。これも今後の検討課題とします。
4/11 コメントと言うより質問になってしまう部分が多いのですが、感想を述べさせて頂きます。

まず、LCA全体としての構成には特に大きな問題はないと感じました。しかし、伊藤さんの得意分野だからでしょうか、主要な結果が感度分析になっているように感じます。やはり、LCAと言うからにはインベントリー分析やインパクト評価の結果が主たるものとなり、補足的な説明部分として感度分析が必要になるのではないでしょうか?しかも、幾つかのインパクト評価を行ったと記述されていますが、どこに結果が示されているのでしょうか?

次に、システムバウンダリーについて気が付いた点を述べます。
1.普通米のシナリオ
・上水処理で消費される薬品は?
・下水処理で消費される薬品は?
・炊飯で消費される水の上水処理での負荷は?
・個人的な問題になりますが、他の家の猫が庭に入り込んで糞をしていくため、我が家ではとぎ汁を庭に捨てています(効果があるとのこと)。これって、もしかして環境負荷が低くなることかなぁ・・・。

2.無洗米のシナリオ
・米が収穫された後、精米もしくは無洗米加工機へ運搬する際の輸送工程は?
・無洗米加工機のメンテナンス(これはいらないっか!)
・炊飯で消費される水の上水処理での負荷は?
・粘着ぬかを商品化施設へ運搬する際の輸送工程は?
・粘着ぬかを飼料や肥料への商品化する際に加工・処理する際の負荷は?

以上ですが、やはりLCAの現状を考えると、「出したもの勝ち」でしばらくは良いように感じます。(中略)市民レベルでの認識(底辺の底上げ)がない限り、LCAの普及・発展は望めないように思います。まずは、結果を広く一般に公表し、そこでLCAの可能性や問題意識を掻き立てる必要があると考えています(メーカーにとって、これが売り上げにつながれば良いのでしょうが・・・)。そこで初めて専門的な人達による議論があってもいいのではないでしょうか?←この部分が先走っているなぁ・・・。

それと企業レベルでもある意味“いい加減なLCA”が増えてきていることが、残念ながらLCAレベルの下落と誤解を生んでいる部分もあると思います。“広く認知されている”のと“容易に行える”のとは違うので、ある程度しっかりした手続きと枠組みは必要になると思います(規格はISOばかりではない!)。
さらに、LCAを上手く利用できていない事も問題の一つです。LCA結果は結果だけで終わらず、(中略)、まだまだ使いこなせていない部分があります(これには、やっぱり“しっかりとしたLCA”が必要かっ!)。

今回の伊藤さんのように、LCAの結果を広く公表し、議論を呼ぶような行為は現段階では必要でしょうし、賛同できる部分が多々あります。今後もこれに懲りず、多くの結果を公表して頂けたらと思います。(KN氏)
(回答抜粋)
> 主要な結果が感度分析になっているように感じます。
おそらく将来的には、LCAはインベントリやインパクトが主体ではなく、不確実性分析が主体になっていくと考えています。言い方をかえると、不確実性分析をやって、大きな影響を与える部分のインベントリやインパクトのことを論じるようになると考えています。そうしないと、膨大なデータを全部議論しないといけなくなってしまいますから。

> 1.普通米のシナリオ
・薬品は、積上げ方式では考慮していません。産業連関方式では(当然?)考慮されます。
・炊飯で消費される水は、普通米と無洗米で変わりませんので両方のシナリオから削除してあります。
・あと、「個人的なこと・・・」ですが、当然環境負荷が小さくなります。理由はともかくとして。

> 2.無洗米のシナリオ
・精米所への輸送は普通米と無洗米で共通するため、両方のシナリオから削除してあります。それと、通常無洗米加工機は、精米機に隣接されていますので、その間の輸送は発生しません。
・メンテナンスは考慮しないといけないかもしれません。ただ、インフラの影響がそれほど効いていないので、結果には影響しないと思います。
・粘着ぬかに関しては、商品化されていることから、運搬や加工に関しては商品化の責任分担と考え、無洗米の負担とはしませんでした。

> そこで初めて専門的な人達による議論があってもいいのではないでしょうか。
専門家の意見対立をそのまま市民に見せるのも良いのではないかと思います。

> それと企業レベルでもある意味“いい加減なLCA”が増えてきていることが、残念ながらLCAレベルの下落と誤解を生んでいる部分もあると思います。
まったくその通りだと思います。その観点から不確実性評価手法の検討が必須だろうと考えます。ただ、それを理解する専門家が少ないのも事実です。
4/13

無洗米と普通米のLCA比較を見ての意見ですが、二宮さんの講義のときにも無洗米と普通米のことが出てきてそのときに無洗米は普通米に比べて確か1キロあたり20円程高いという様に教わったのですが、そのことが記述されていないことに問題があると思いました。僕が言いたいのは、その20円の差額を普通米の値段に上積みしたときに、集まった差額で何らかの対策(無洗米以外)が打てるのではないかということで、もしコスト的にも無洗米以外の手立てが打てないということならば、そのことも数字にして示すべきであるのではないかと思いました。(安井研:学部4年:G氏)

(回答抜粋)20円/kgという数字は、実は正確な比較になっていません。普通の米を研ぐと、4wt%程度が流出しますので、その分を勘案すると無洗米は6円/kgほど高いというのが正確な言い方になるかと思います。ただ、高いのは事実であり、別の環境対策に使えば、実は環境的に良くなるのではないか。といった観点は重要かもしれません。例えば、
  1. 「10kgの米のとぎ汁を庭にまくならば、60円安くします」という政策。
  2. 一人あたり年間67kgの米を食べますので、下水道が普及していない地域を対象にして「合併浄化槽を導入すれば4人家族なら、年間1608円補助します」という政策。
などがもし有効なら無洗米を薦めるよりも効果的かもしれません。こういった観点は重要だと考えられるので、次回のLCAに組み込んで検討したいと思います。
4/16 私は、家で食している米が無洗米であることに驚いた。こんな身近に無洗米があるとは思わなかった。便利で、手間がはぶけるので、これからも家庭に広がっていくと思う。フローチャートを見て思うのは、最初の過程が後になって、色々と関連していることだ。しかし、フローチャートからこの過程が無駄だから、無洗米が考え出されたとは思えないのが残念である。(安井研:学部4年:T氏)
(回答抜粋)無洗米を最初に開発された方は、とぎ汁の環境負荷が河川の汚染源として大きな影響を与えていることを知っていて、それへの対策として無洗米加工を発明されたとのことです。環境問題への対策が開発の動機の大きな部分を占めていたとすれば、環境対策が技術開発を伴って成功した一つの事例として将来的に意味を持ってくるだろうと考えます。
4/27 私は、(中略)地球環境保全行動計画推進会議市民部会の公募委員をしています。市民部会では、2000年3月に「こんなことやっています〜私のエコライフ事例集」を作成しました。その中で私は無洗米を紹介しましたので、とても心強く思いました。この事例集は別途郵便でお送りしたいと思います。
私が使っているのもBG無洗米ですが、米ぬかが飼料・肥料として有効に活用されていることはLCAでは評価されないのでしょうか。(CT氏)
(回答抜粋)今回の計算は、「無洗米と普通米を比較してどちららよいか」を調べることが主な目的でした。そこから「無洗米が普通米に比べてよい」との結論に影響しない部分に関してはいくつか省略しており、「飼料・肥料を考慮する」もその一環として考慮しませんでした。
LCAは、「非常に手間がかかる割に得られる結果があまりない」との認識が一部で広まっていますが、私たちは、簡易型のLCAを提案することで、そういった認識をかえる必要があると考えています。そういった意味もあり、目的に照らし合わせてできるだけ手間を省略することを提案しています。
5/7 埼玉県に住む妹から聞いた話ですが、無洗米は通常の炊飯器ではうまく炊けないため、coopで無洗米用の炊飯器を販売したところ、とてもよく売れたそうです。そういった状況はLCAの評価に入るのでしょうか(IN氏)
(回答抜粋)もし無洗米を炊飯するのに新たな機器が必要であればその負荷は考慮する必要があるとおもいます。ただ、研究室で無洗米の食味テストをしたのですが、通常の炊飯器で大丈夫だったようです。今回我々がテストしたのが、BG無洗米だったのに対して、Coopで販売しているのが別の方式(水洗?)であるため、それが影響しているのかもしれません。いずれにしても、今回はそういった効果は考慮していません。
5/28 無洗米加工機の導入による考慮を除いて、無洗米と普通米とでは明らかに無洗米が良いことが分かりました。しかし米のとぎ汁以前に、工業排水など、早急に考えるべきことがたくさんあるように思えるのですが、なぜあえて米のとぎ汁に着目されたのですか?
 無洗米を推奨するにあたって、一般市民にとって一番ネックになるのはやはり値段かと思われます。環境の世紀と言えども、まだ環境利点と便利さだけでは圧倒的支持は得られ難いかもしれません。米のとぎ汁に含まれるぬかにどれほど栄養価が含まれているかを、お昼のみのもんたあたりの番組で実証してもらえれば、おばちゃん支持がぐっと高まるのでは?・・・質問のはがきをいっぱい出せば、やってもらえそうな気がします。・・・ごめんなさい。とりあえず、私が申し上げたいことは、米のとぎ汁に含まれるぬかにどんな栄養素がどのくらい含まれていて、その栄養素は人にどんな効果(肌がきれいになるとか)をもたらすのか、を出しておくと、消費者に良いアピールポイントになるのでは、ということです。
 市民は家電リサイクル法などによるエコストレスがたまっているように考えられます。現段階では何事も環境に付加価値をつけないと、一般化が難しいでしょう。しかし、それ以前にこれほど無洗米が環境的に良いことはあまり知られていませんから、分かりやすく早急にアピールすべきでしょうね。
 根本的に、市民は環境問題について、漠然とした印象しか持っていないことが一番の問題であるような気がします。私もそのうちの一人でありますが、環境問題=地球を汚すこと、といった程度にしか思っていませんでしたし、人類の生存に関わるような影響もあまり関係ないように考えていました(ノストラダムスの1999年以降は)。ですから市民が、何によってどんな恐ろしいことが起こりうるのかイメージを持って知ること(映像や、あと何年でだめになってしまうなど)、または市民に知らせることを最初に行うべきであると思います。(安井研:学部4年:O氏)
最初のご指摘ですが、実は、こめのとぎ汁の影響は、水系の環境負荷の中でかなり高い割合を占めている可能性があります。生活廃水は、全排出の中で最も大きな割合を占めています(環境白書参照:http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/hakusyo.php3?kid=212)が、国民一人あたりの生活廃水の全BOD排出に対する米のとぎ汁の割合は、単純に計算すると、8%程度になると考えられます。生活廃水にはし尿も含まれますので、実際に河川に流れ出すとぎ汁の影響はこの数値よりも大きくなると考えられます。
米のとぎ汁に含まれる栄養素はかなりありそうです。そのあたりは、無洗米を推奨する団体などが宣伝材料に使っています。
それと、ご指摘のように市民への環境情報の分かりやすい提供は非常に重要だろうと考えます。CREST安井チームは、それらに関する研究を行っています。面白いアイディアなどありましたらお教えください。

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