夏祭りに行こう!〜004を誘ってみる〜
「実は今日、夏祭りがあるんだ。一緒に行かない?」
勇気を出して、004に言ったみた。そういう展開になるとは思ってもみなかったのだろう、004は
キョトンと目を丸くして009を見る。
(あ〜〜〜やっぱり駄目かなあ?)
余りにも沈黙が続く為、言わなきゃ良かったと009は後悔した。
「あ〜、ゴメンね変なこと言って。気にしないで。」
先手を打って、その場を去ろうとした009に声がかかる。
「ジョー、夏祭りってなんだ?」
「え・・・・夏にやるお祭りのことだけど・・・。」
当たり前の事を当たり前に答えると004は、あ〜そうじゃなくてと言う。
「夏祭りっていうのは、どういう感じのものなんだ?俺は日本で祭りっていうものをTVでしか見た事
ないから、ちょっと興味があったんだ。やっぱり派手な神輿とかいうものがあるのか?」
意外というべきか、やはりというべきか004は一応”夏祭り”という日本の行事は知っていたらしい。
しかしTVでやっているような大掛かりなものが、祭りだと思い込んでいるらしい。009にとっての
夏祭りはそんな大事なものではなくて、ちょっと大きい神社の境内にズラリと並ぶ屋台とか今風に言え
ばライトアップされた本堂とか、そんな些細なお祭りである。地元の人間しか来ない、小さくてでもい
つもよりは確実に楽しい雰囲気を醸し出す・・・・・そんなお祭りであった。多分、今夜近所でやるお
祭りもそういうタイプだと思う。誤解は早いうちにとっておく方が良い。
「いいや、神社の規模とかでやっぱりやり方は変わるよ。TVでやっているものは、日本でも有数の大
きいお祭りなんだ。」
「ほう、やっぱりそうなんだ。」
「・・・・・・分かってて言ったわけ?」
「ジト目で睨むなって。分かってて言ったわけじゃないぞ?ドイツでもクローズアップされている祭り
はやっぱり大きいものだからさ。それに、ここら辺でそうそう大きな祭りがあるとは思えんしな。」
そう言いながら、004の目がイキイキとしてきた。確実に009が誘う夏祭りに興味を持っている。
「アルは、地味なお祭りは苦手かい?」
意外と派手なお祭り騒ぎも、好きな004である。まあ最後に貧乏くじを引いてしまうことも多いのだ
が・・・・。理性が残っている為に酔っ払いの介抱をしたり、部屋の片付けをしていたり、009に襲
われたり(笑)。
「そんなこと無いぞ。そうだな、日本のふつーのお祭りっていうのも、日本にいないとなかなか体験で
きないもんなあ。」
「ほんと!?」
「嘘言ってどーする。」
「じゃあ、僕と一緒に行こうよアルv」
うきうきと、さっきまでの憂鬱もどこへやら009は一転明るい声を出した。その現金さに004は思
わず苦笑する。
「いいぞ、別に。今夜はこれといって用事も無いし。」
「やっっったあああああ!!!!」
万歳して大喜びする009に、苦笑を通り越して呆れてしまう。
「・・・・30のおじさんと一緒に夏祭りに行くのが、そんなに嬉しいのか?」
言いながら、何だか洒落にならなんと思う004である。
「嬉しいよ!!」
即答。
あまりに直球で返された為、004は恥ずかしくなってしまう。009はそれに、と言葉を繋げた。
「30のおじさんじゃないよ、アルは美人なんだからおじさんには見えないってば。」
コケッとバランスを崩した004であったが、なんとかコケずにすむ。
「で、いつくらいに行くんだ?」
「あーえっとねえ・・・・。夕方からの方が盛り上がるハズだから、夕方行こうよ。」
「分かった。」
「忘れないでよ?」
009の言葉に、心外だとばかりに004は眉を寄せた。
「まだボケてないからな、俺は。・・・・出かけるまでにはまだ時間があるんだろう?」
「え、ああうん。」
「じゃ、ちょっと休んでくるよ。」
「どっか変なトコあるの?」
心配そうに訊いて来る009に、004は慌てて手を振った。
「お前にも経験があると思うんだが、メンテナンスをした時にパーツを取り替えるとちょっと慣れる
まで違和感がないか?」
「ああ、あるね。なんだか、しっくりこないんだよねえ・・・。あ、今日パーツ取り替えたの?」
「ああ、そうらしい。だから、少し休みたいんだが・・・・。」
「良いよ、体調おかしいのに行ったって楽しめないしね。うん、じゃあ僕が声かけるよ。」
「ああ、頼む。」
004はくるりと背を向けて、自分の部屋に帰って行った。嬉しくって、顔を緩ませる009に、いき
なり声が掛かった。
「見てたわよ〜〜〜ジョー?」
後ろを見れば、003がうふふと笑いながら姿を見せた。なにか企んでる感じの003に、知らずに0
09の腰が引く。
「あ、え〜〜〜っと・・・・・。」
何やら口ごもると、003は笑って人差し指をチッチッチと振った。
「別に慌てることないじゃない。ジョーは絶対アルベルトを誘うって思っていたし。私はね、ただちょ
っとそのお手伝いをしてあげたいなって思っただけよ。」
「お手伝い?」
「ええ・・・・・だってジェットはアメリカだもの。私暇なのよ・・・・それで近所の人に聞いた時、
お祭りの話を聞いたのよ。」
「えーーーーじゃあ僕が話すことなかったじゃんかあ。」
「ううん、その人はね自分の子供がお祭りに行く時の格好を教えてくれただけだったの。」
「お祭りに行く時の格好?」
「ええ、つまり・・・・・・・ユカタってやつ。」
「ああ、成る程ね。」
なんとなく話が読めてきた009であったが、途中で話を遮ってしまうと003が拗ねてしまうので、
取り合えず話に乗った。すると003は、思いもかけないことを言ってきた。
「ユカタ・・・・・レンタル衣装の処にいったらあったのよ。で、アルベルトとジョーに寸法がぴった
りなものを借りてきたの。」
「・・・・・・・ぴったりなのが、寸法ってトコがかなり不安なんだけどさ。」
ほぼ本気で呟く009に、003はあははと軽く笑って流した。
「な〜に言ってるの、私はセンス良いんだからね?」
「それ本気で言ってる人が、本当にセンス良いかどうかは分かんないよねえ・・・・。」
そこまで言うと、003にどつかれた。
「良いの、それは!折角なんだから、ジョーとアルベルトはユカタ着ていったら?」
009は耳を疑った。004を守るという建前を持っている003が自分にここまで親切(?)にしてく
れるのは珍しい。003であれば可愛くおねだりしたら彼女に弱い004のこと、大人しく着ていくこ
とをするだろう。それは想像に優しい・・・・が、わざわざ009に振ってくるのがどうも怪しい。目
をパチパチさせて、自分を疑わしそうに凝視してくる009を003はあっさりと無視した。
「じゃ、アルベルトに言ってみてよ。ユカタ着ない?って。・・・ジョーだって見てみたいでしょ、ユ
カタ着たアルベルト。」
「見たい。」
即答してくる009に満足したのか、003はじゃあユカタは下に置いてあるから着てねvと嬉しそう
に言い置く。
「アルは今、寝てるよ。」
「あ、パーツ取り替えたんだっけね、起きてからで良いわよ。」
「うん、言ってはみるけど・・・・・。」
「大丈夫よ、きっと着てくれるわよ。」
「ん・・・・・そうだね。」
004に浴衣を着てvと可愛く頼む
着てくれるわけはない、と諦める