写真歌壇 写真協力はTakaさん 春 夏 秋 冬 雪止みて港の霧笛寺の鐘 除夜の鐘近く遠くと風に乗り お歳暮の案内状が冬を呼び    瓶詰めのなめ茸の中箸を入れ              熱燗を飲む一人の冬の夜 我が暮らし楽少なかりと思えども     　　　　     赤い羽根着け一抹の幸 福引きの全部外れて白い息 年賀状そろそろ準備と思えども                   訃報多きに暫しため息 街中にツリーとマスク徐々に増え 福引き所サンタの帽子で鐘を振り 白い息手先で丸めこする朝 布団から足先だけ出し寒さを見 吐く息の白さ濃くして冬を増し 手も足も首もすくめて寒の入り 身震いの一つ一つに冬ふかし 吐く息の僅かに白き玄関に 　　　　　外の寒さの冬を知る朝 宵からの氷雨が雪に降り変わり 　　    目覚めて見ればモノトーンの朝 糸のように氷雨降りたる小正月 衣更着の名に相応しき寒さかな 珍しく日の丸上がりて三が日 暖かき正月の酒冷や二合 立春を過ぎてなお増す寒さかな 正月の音も消えたる七日過ぎ 白粥に七草の色淡く散り 焼き芋の売り声ひとつ暖かし 紅葉が山下り冬へとタッチをし タラノメの天麩羅に食う冬の先 七草の白粥食し年始め 新聞の厚みが祝う三が日 島国の東西春をせめぎ合い 梅だよりちらほら聞こえる春手前 溶け残り凍った雪に鳥集い 陽の光有り難きかな雪穿ち 雪衣陽に晒されて色落ちし 節気だけ春へと急ぐ冬の空 松が明け吐く息の白濃さを増し 松が明けようやく落ち着く正の月 京野菜贈られて見る古都の冬 届きたる訃報に人の行きしを見 陽を浴びて寒さ尚立つ冬の朝 風邪引きて医院への道背を屈め  七五三終わりて早足冬の陰 風溜まり冬のガレージ枯れ葉舞い 木枯らしに日の短さよ５時の鐘 玄関の正月飾り取り外し 　　　　　　酒終わらせて粥の一口 新年も五日を過ぎてゴミ出しの 　　　　　　　　　　収集場所に寒さの塊 暖かき冬の日差しを背に受けて 　　　　　　　　　猫と微睡む休日の午後 梅便りちらりほらりと聞こえれど 　　　　　　　便り追い抜く冷たき冬風 立春は暦だけとは思いつつ 　　　　春の息吹を何気なく追い 笑い声隣家の窓から賑やかに 　　　　　　　久しき集まり正月の朝 喪の家に正月飾りの無き朝も 　　　　分厚き新聞いつものように 着膨れて通勤ラッシュの人の中  　　　　　　　爽やかな香に誰ぞ人追う 七草で世間の勤めは始まりて 　　　　　　　正月気分がただの一月 右斜めそして真横に雪の富士 　　　　　　首都高速の季節変わりて 冬初のコート着込みて通勤の 　　　　　　　電車の中で汗を拭きつつ 降り積もる都会の雪に思案する                   大人尻目に子らのざわめき 暦だけ春へ春へと誘うも         寒の深きは日一日と増し 真夜中の雨が凍りし駐車場                 タイヤに割れる音の冷たき 元旦の朝に隣家の笑い声             着物の幼子初詣に連れ 暖かき冬に微睡む猫の背に                     長き影引く夕焼けの赤 懐かしき名画の数々溢れ来る                     テレビ画面に年末の幸 早き朝連れ立ちうらうら散歩道                           我と犬との白き息二つ 順待ちの医院のソファで文庫本                       咳に震えて字の揺れ動き 七五三着物の裾を気にしつつ                           母娘で詣る雨の社路 珍しく節気と合いたる冬の端               秋のスーツに身を縮め行く 良いことが無かった事を思い知る 　　　　　　　卯の年の暮れ十大ニュース 歯磨きの口に含みし水道の 　　　　　　　歯に染み渡る冬の寒さよ 冬物のスーツを出して虫干しの 　　　　　　　　 樟脳臭の秋にサヨナラ 首都高のビルの谷間の遠き富士 　　　　　　　　　　頂の雪に冬の深きか ふぐちりの湯気の向こうに友の顔 　　　　　　　　　冬の寒さを暫し忘るる 出世した友の横顔眺めつつ                        苦労多くを白髪に見る 電車下り蒸し暑き街宇都宮                神社餃子と雨に追われつ 外暗く鏡になりしガラス窓 　　　　　　己が姿の来し方が見え 車椅子横目に見つつジレンマの 　　　　　　　何かせねばの思いだけ積み 久々の友に会い行く前日に 　　　　　　樟脳臭の喪服取り出す 戻る