10.とある新型コロナの記事
2020/03/28




2020年の春、新型コロナウィルスが蔓延している。日本は比較的善戦していたが、ここ数日で新規感染者数が増加しており、かなり危険な状況になっている。
習近平の国賓来日、オリンピックという、日本政府の足枷となっていたイベントも先送りとなり、日本政府も思い切った手を打たなければならなくなりつつある。そして、連日、いろんな人がいろんなことを発信している。その中には真実もあれば、与太話もある。お前、この非常時に何言ってる、黙っとけよ、というものもある。我が国は自由主義を標榜しているので、誰が何を発信しようが、それ自体は当然の権利として認められている。しかし、だからと言って何をしゃべっても良いというものではない。
ちょっと気になった記事があったので、取り上げてみる。


■「中国のウソ」を葬るため、日本はコロナに絶対に負けられない理由
世界中が新型肺炎対策に追われて弱っているときに、「中国=権威主義が正しい」としつこく言われ続けたら、それを信じる人が増えてしまうかもしれない。
そこで注目すべきは、中国のような強権的手法を用いずに、コロナの感染者・死亡者数を抑え込んでいる日本だろう。
欧米が崩れつつある今、日本は自由民主主義陣営の最後のとりでとなっているのかもしれない。
(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)


上久保くんがどういう人か知らないが、中国が嫌い、全体主義が嫌いだということは読み取れる。そして逆にすご〜いですね日本的な人だろうということも想像ができる。
現在、欧米は新型コロナウィルスが席捲している。ニュースで聞くところによると、イタリアは医療崩壊状態。スペインも同様、フランスでも拡大中。イギリスではチャールズ皇太子やジョンソン首相が罹患。アメリカやカナダでも拡大している。いわゆる西側陣営が壊滅している。
一方、新型コロナウィルスの震源地である中国では、強権発動で何とか抑え込むことができた様である。震源地である武漢では外出を徹底的に禁止している様である。ただ、あの国の場合大本営発表体質があるので、政府発表を信用できない。『症状の無い人は陽性にカウントしない』方針であるというウワサもある。しかし、外出を徹底的に禁止するということはウィルス対策としては間違ていない。だから感染拡大を防止できている可能性は高い。
そして、この記事を上久保くんが書いてた時期には、日本は、政府の無策にもかかわらず限定的な感染者数で推移していた。強権発動に頼らずとも日本はウィルスを抑え込むことができている、我が国は自由主義諸国の輝ける星になった!というわけである。
まあ、残念ながらその後、日本でも感染が広がりつつあり、その輝きも陰りつつあるのだが、それはこの記事を書いている頃の上久保くんは知らないことなので、それをもって上久保くんの言ってることは根拠がないというような後出しジャンケンはしない。あくまでも前提は、日本は感染拡大を何とか抑えているという前提にする。

問題は、この時期(3月上旬の頃まで)、日本は何故ウィルス感染を抑えることができていたのか。
諸説ある。マスクを着用する習慣がある。こまめに手を洗う習慣がある。それがウィルス感染拡大防止に役立ったのは確かだろう。それに案外素直に『世間』に従おうとする。外出がヤバそうだということになれば、外出を控える(もちろん例外は多数いるが)。
聞くところによれば、イタリア人はトイレの後で手を洗わない、不特定多数とハグとキスをする習慣がある、日曜には密閉空間である教会に出かける、そして『世間』などというものに縛られない。自由主義者である。自由主義が感染を拡大しているという面もある。

さてここで問題である。日本は「自由民主主義陣営の最後の砦」なのだろうか。
私が考えるに、「自由民主主義陣営の最後の砦」であるためには、自由主義、民主主義的な行動によってウィルス感染拡大を防止してこそではないか。マスクや手洗いの習慣はともかくとして、『世間様に従順な態度』とは、自由主義の帰結なのだろうか。どちらかと言えば反自由主義的ではなかろうか。そんな反自由主義的な習慣によって、一時的にせよ感染拡大を防止できていたということが、「自由民主主義陣営の最後の砦」と言えるのか、ということである。そこの所を上久保くんに問いたい。


さて、日本人がきれい好きということは確かであるらしい。今回の事でこまめに手を洗う習慣があるのは、日本人とアライグマくらいだということが判明した。大多数の民族はトイレの後ですら手を洗わない。風呂にも入らないものらしい。
日本人のきれい好きはどこから来たものかというと、どうも「死穢」と「汚れ」を混同したことにあるらしい。「死穢」を嫌うあまり、「汚れ」も徹底的に洗い流そうとした様だ。このような生活習慣(エートス)は、宗教的情熱を持つことにより、より強固になる。日本人はいつの頃からか、延々この宗教的情熱に基づいて行動している。幕末の頃、日本に来た南蛮人も、日本の街が清潔なことに驚いている。ホンマかいな、と思うが、当時はパリやロンドンですら汚物を路上に垂れ流していたので、それに比べれば十分清潔であったに違いない。
アメリカ人は、西洋人の中では清潔好きな国民である。風呂に入らないにしろ、シャワーくらいは毎日浴びている。しかし、これは西部開拓時代に埃っぽい生活をしてた名残らしい。アメリカ人にしても、宗教的情熱には裏打ちされていないので、日本人ほど徹底はしていない。
すご〜いですね日本的な人はこういう事は大いに喧伝すればよいのではないかと思うが、日本人の宗教的情熱によるものなので、他民族には応用できず、あまり役には立たないけどね。



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