12.愛子天皇待望論についてA 2025/06/01 |
というわけで山田くんの愛子天皇待望論を読んでみましたが、まあ正直なところ読む価値もないものでした。 しかし、この文章を書いた目的は単に山田くんに対する反論というつもりではありません。最初に書いた通り自称「保守派」の皆さんに問いたい内容なのです。 自称「保守派」の皆さんも、山田くんの文章を読まれて「女性天皇など話にならん」と思われたことかと思います。もっとも元正天皇の例を持ち出すまでもなく、女性天皇自体はこれまでも存在しています。なので自称「保守派」の皆さんも愛子天皇だけであれば、容認できるのではないかと思います。しかしここから先が山田くんと自称「保守派」の皆さんとで意見が異なるところで、愛子天皇に親王(もしくは内親王)がお産まれになったとして、その子は皇位を継ぐことができるかどうか、という問題です。 山田くんは「これからは女性が繋いでいけばいい。」と書いているので、容認するということかと思います。 さらに言えば、秋篠宮家内親王殿下や三笠宮家、常陸宮家の女王殿下が結婚されても女性宮家として皇族に残られ、そのお子様(女性であっても)にも皇位継承権があると言っているようです。 一方自称「保守派」の皆さんは、これは認められません。神武天皇から続くY染色体の継承が途切れてしまうから、というようなことではなく、皇位は父系継承が伝統であるから、ということになります。 この両者の論はどこまで行っても平行線になると思います。 山田くんが「保守派」の皆さんを論破するのであれば、Y染色体の継承などという「保守派」の皆さんでもどうでもいいと思っているような理屈ではなく、もう少しまともな理屈を持ってくる必要があるのではないかと思います。 そもそも皇位はなぜ「皇統に属する男系の男子が、これを継承する」ことになっているのでしょうか? 皇室典範やその前身である天皇家の内規のようなものに記載されているから、という以上の理由を聞いたことがありません。 おそらく「保守派」の皆さんもそれ以上の事は知らないんじゃないかと思います。 そして、こここそが「皇統に属する男系の男子でなければならない」とする根拠になるわけですから、ここを明確にしなければこの議論は空中戦で終わってしまいます。 あくまでも例えば、ということですが、この男系継承の根拠が、儒教の影響であるということになったらどうでしょうか。言うまでもなく儒教というのは男尊女卑の権化のような思想であり、東アジアの男尊女卑の根源は概ね儒教にあります(ちなみに西洋の男尊女卑の根源はキリスト教にあります。)。 男系継承が儒教の影響を受けていたとしたら、本居宣長先生を持ち出すまでもなく、支那の思想ごときに支配されるとは何事か、貴様は支那のイヌか、とでも言えば「保守派」の皆さんは反論できないのではないでしょうかね。 そもそも天皇とは何なのでしょうか?現在においては天皇は現人神であるとまでは言わないものの、天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス(明治憲法 第3条)という意識が残ってしまっているような気がします。 このような神聖な存在であるという天皇論を作ったのは、どうやら山崎闇斎あたりのようです。国学の流れを汲む人ですが、国学の始祖である本居宣長が「唐心」を排除して日本古来の考え方を明らかにしようとしたのに対し、儒学者でもある山崎闇斎は天皇というものを儒教的に解釈してしまった。そして天皇を中国の思想である「天帝」に近い存在であるという解釈をしてしまった。 ちょうど中国大陸では明が滅び清に変わった頃でした。中華たる漢民族の王朝が倒れ、卑しい北狄ともいうべき満州族の王朝ができた。この事実を儒学者はどう解釈するか悩み、その一つの答えとして、本朝の天皇家は古代より万世一系で易姓革命を経験していない、すなわち本朝の天皇家こそが本当の皇帝ではないかと考えたのでした。 この考え方が水戸国学に流入し、幕末の黒船来航によるナショナリズムの高まりにマッチして日本の世論となってしまいます。また薩長連合軍が幕府を倒す名目として天皇を担いだため、天皇を神聖不可侵とすることによるメリットもありました。 こうして天皇は現人神になっていったわけです。 そして、そうであるために天皇は万世一系でなければならなくなった。その万世一系とは中国風に父系で繋がっている、ということになるわけです。 こう考えれば、「男系に固執する者は支那のイヌか」論も成り立つのではないでしょうか。 さて、それはともかく、自称「保守派」の皆さんにお伺いしたいのは、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」という皇室典範の決まりは尊重しなければならないということは理解したとして、どうやって皇統を守っていくつもりなんでしょうか。 現実的に、現在皇位継承権を持つ男子は秋篠宮と悠仁さま、それに御年89才の常陸宮正仁親王の三人だけです。悠仁さまに男子がお生まれになる可能性はありますが、確率論の問題でこの先の永続性はおぼつきません。 対策としては次のようなものがあるようです。 @皇籍を離脱された旧宮家のうち男系男子を皇族に復する(男系男子が何人くらいおられるのか不明ですが)。 A女系継承を認める。 B側室を置く。 自称「保守派」の皆さんが容認できるのは@だけということになります。@については現女性皇族の方と結婚して頂いて婿養子の形で皇室に入るということも議論されているようです。 しかし、本当にそれだけで皇統の永続性は維持できますかね? 徳川家が分家3家+3卿と大奥という名の側室により300年家康の血脈を維持したという例はありますが、さすがに側室は容認できないだろうし、旧宮家の復活だけで維持できるとは思えない。 それで、これは私の意見ということではなく、あくまでも日本人だったらこういう解決方法を取るだろうねという、日本人としての私の内なる声なのですが、 天皇はいることになっている。 という解決方法です。 バカや日本人以外には見えないかもしれないけど、天皇はおられるのです。 西行法師が伊勢神宮で詠まれたといわれる「なにごとのおはしますかはしらねどもかたじけなさになみだこぼるる」という感じです。 これには前例があります。弘法大師は高野山の奥之院に今でもおられることになっています。あれと同じことをすればよい。 この方法にはいろいろメリットがあります。 皇統の永続性は誰かが「王様は裸だ!」とバラさない限り担保することができます。 天皇がいるのだから憲法第1条は改訂する必要はありません。なにせ日本人は憲法改定ができない民族なので、このメリットは大きい。 宮内庁も当然ながら存続できます。皇居に「不滅の法灯」を絶やさないようにする係の人を置くこともできますし、天皇の声を取り次ぐ人も必要になります。 さらに、最大のメリットは、皇族の人権問題を一気に解決できるというものです。 これは自称「保守派」の皆さんにお伺いしたいのですが、あなた方は皇族の人権問題をどう考えておられるのでしょうか? 「職業選択の自由」など基本的人権は日本国憲法が認めているところですが、皇族の方々は恐ろしく制限された状態にあります。さらに国民の監視を受けている状態です。もはや日本国民の奴隷と言っても差し支えない状態です。 「天皇はいることにする」であれば、この問題を解決できるのです。 そしてこのやり方こそが真の「保守的」なやり方ではないかと思います。 どうでしょう 日本的な解決方法だとおもいませんか? |
![]() |
![]() |
![]() |