12.愛子天皇待望論について@
2025/06/01




「なぜ「愛子天皇」ではいけないのか? 保守派の「男系継承による万世一系」はフィクションに過ぎない!」(山田順)という記事をYahooニュースで読んだ。山田順というのが何者か知らんが、なんというかツッコミどころ満載w。愛子天皇待望論者というのが世の中にどれくらいいるのかわからないが、本当の愛子天皇待望論者はこういうバカをほっとかない方が良いと思いますよ。
この記事は山田くんの記事に対するツッコミというていを取っていますが、山田くんというよりも自称「保守派」の皆さんに問いたい内容です。
「あなた方は天皇制をどうするつもりですか?」

山田順の記事を論評する前に、まず私の立場を明確にしておきます。
私は愛子天皇待望論者ではありませんし、女系天皇についてもどちらかと言えば否定的です。ただ皇位継承問題については、一臣民としてなんとか解決しなければならないと思っているという状況です。
では山田くんの記事を読んでいきましょう。
長いので適当に端折ってますが、編集による意味の改ざんを狙ったものではありません。原文は 元記事 を参照してください。

■皇位継承を議論する国会審議の見当外れ
参議院選挙前までに、衆参の正副議長が取りまとめ案を示すとされる「皇位継承」問題の与野党協議が大詰めを迎えている。本来なら、女性天皇、女系天皇誕生への道を開くために、「皇室典範」の改正を議論すべきなのに、それは棚上げ。
皇位継承者を確保するため、女性皇族を結婚後も皇室に残す案、旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎える案などが、話し合われているだけ。まったくの見当外れと言っていい。
これでは、国民の8割が望む愛子天皇は誕生しない。


最初っからツッコミどころです。
山田くんは「愛子天皇を実現すべき」だと思っているので、「女性天皇、女系天皇誕生への道を開く」ことが「本来」なんでしょうが、そもそもそこから問題のとらえ方が間違ってます。今日天皇制について本来議論しなけれならないのは皇位継承問題であって愛子天皇問題ではないのです。皇位継承の永続性が確保されないのであれば、次(かその次)に愛子内親王が皇位につこうが、つくまいがそんなことは些細な問題なわけです。
さらには「国民の8割が望む愛子天皇は誕生しない。」というのはどういう調査結果なのでしょうか?私の感覚からすれば国民の8割は「どうでもいい」という意見ではないかと思います。

そんな中で、2025年5月15日に読売新聞が社説でこの問題に一石を投入した。

読売の社説は、女性宮家の創設と、女性皇族の夫と子も皇族にするように要望したうえで、女性天皇はもとより、女系天皇の可能性を排除しないようにと提言していた。
この提言に、多くの自民党議員が反発した。


読売の説が通れば待望の愛子天皇が実現する可能性ができるのに、コバホークこと小林鷹之をはじめ自民党保守派が反対していることに不満なようです。当たり前ですが、いわゆる保守派の皆さんが考えてる(フリをしている)のは「皇室典範に基づく皇位継承の永続性」であるわけなので女系天皇などというものを認めるわけがない。いわゆる保守派の皆さんは山田くんのように「愛子天皇実現」を考えているわけではないわけです。
ここで「いわゆる保守派」と書いたのは、小林くんが天皇制についてどのような思想信条をお持ちなのかよく知らないのですが、自民党清和会のような、いわゆる日本会議系の懐古主義的な天皇論を私は「保守」だとは思いません。というのも「保守」の本来の意味は「現状改善」だと思うからです。
例えば共産主義のようなものを考えると、現状の社会に大きな問題があるので、現状の社会を形成している「資本主義」とは異なる「共産主義」という理念を打ち立て、この共産主義に従った社会を構築することで現状の問題を解決するというシロモノです。こういう新しい理念を根拠にした考え方を革新主義と言います。
一方で、現状の社会に色々問題があることは認めつつ、大きな改変を行うのではなく、現状を踏まえて小さなな改善を積み上げていくという考え方が「保守主義」だと思うわけです。なぜなら現状の社会はそれなりの意味があり、また唯一生存することが証明された社会体制であり、これを抜本的に改変することはもしかしたら社会全体が説滅しかねない可能性があるわけです(実際に共産主義などというものはそうなってしまったわけですがw)。そうしないための知恵が保守主義であると思うわけです。
もし「保守主義」という理念があり、それに従った社会を構築する、といのであればそれは革新主義であり、本来の保守主義ではない。これが日本会議のような人々を「いわゆる保守派」と呼ぶ理由です。こういう輩は本質的に共産主義者と変わらないと思うわけです。
この手の人は「9.的な、、」で書いたような論理矛盾を起こします(天皇を尊崇しているはずなのに、明治天皇が臣民に下賜された「教育勅語」の良し悪しを論ずるような不敬行為を無自覚に行ってしまう)。
そしてこの手の人は、自分が考える都合の良い天皇像を持っており、もし現実の天皇がそれに異を唱えれば、昭和天皇が大戦末期に恐れておられたように天皇を強い奉る事も厭いません。このように革新主義は一見理想的に見えても、非論理的な結果を内包しています。その理由は簡単で、その理想論は生存することが証明された社会体制ではないからです。

■女系では神武天皇由来のY染色体が継承されない
人間の性別は、X染色体とY染色体によって決定され、男性はXYで、女性はXX。つまり、Y染色体は、男性の性別を決定する遺伝子で、父から子にのみに伝わる。
したがって、天皇の血筋はY染色体によって男性にしか伝わらない。
「歴代天皇は父親のY染色体を受け継いできた。これは、初代の神武天皇からずっと続いてきた日本の皇統文化。それなのに、女系天皇を認めると、神武天皇に由来するY染色体が継承されなくなってしまう。
これでは万世一系は成立しない。そのために、女系天皇だけは絶対に認められない」
というのが、彼らの主張である。
ここで、改めて述べるまでもないが、この理屈で男系継承が正当化されれば、女性天皇、女系天皇問題は、建前上は、「男尊女卑」「女性蔑視」とは別問題ということになる。


この記事、Y染色体(もしくはミトコンドリアDNA)に随分文字数を費やしています。「神武天皇からずっと続いてきた」ということがよほど悔しかったようです。
しかしY染色体の継承だけを目的にして皇位継承は男系に限るという議論をしている人を見たことがありませんし、いたとしてもまともに相手にする必要はないと思います。山田くんが専門家にお伺いした通り、遺伝子には「突然変異」「相同組換え」が発生するので神武天皇以来126代、2685年不変だったわけがない。
そもそもいたかどうかもわからない神武天皇のDNAなど調べようもない。
そのため、この記事の大半を占める
■遺伝子から見たY染色体継承への疑問
■歴代天皇のDNA解析ができない宮内庁の壁
■遺伝子解析できたとしても継承は確認できない
■遺伝子解析による「日本人3系統説」
の部分には意味がありません。

英国では、2014年に中部のレスターで発掘されたリチャード3世の遺骨のDNA鑑定を行った際、現在の王室とは男系が代わっていたことが判明した。Y染色体の一致が見られなかったのだ。

ということも書かれていますが、「現在の王室」というのがどなたか不明ですが、チャールズ国王かその息子の場合、当然ながらY染色体はお父上であるエディンバラ公爵フィリップ王配殿下由来のものになっているので、リチャード3世のものと違っていても仕方ないでしょう。(リチャード3世とフィリップ王配殿下の関係は不明ですが、、)

女系天皇を容認するための理論としては、こちらの方が重要ではないかと思います。
■いないとする「女系天皇」はかつて存在した
「男系継承による万世一系」を正当化するために、日本では女系天皇は1人も存在しないと、保守派は言ってきた。
女帝(女性天皇)はいたが、それは「中継ぎ」とされてきた。しかし、歴史を振り返ると、女帝の母から皇位を継いだ女性天皇(つまり女系とも言える天皇)は存在した。
天皇家は近親婚が多かったので、その面から見れば、母方、父方、両方の血統を受けた「両系継承」があった。
たとえば、奈良時代の女帝、第44代元正天皇の母は元明天皇(天智天皇の4女)で、父は天武天皇(天智天皇の弟)と持統天皇の子の草壁皇子。草壁皇子は天皇として即位していないので、女系による天皇即位とも言えるのである。
元正天皇は、もちろん男系の血を引いている。しかし、母親の血筋のほうが重視されて内親王となっていたので、女系による継承だったとも言えるのだ。

元正天皇は保守派がいないと言ってきた女系天皇がいるではないか!というわけですが、そもそも山田くん、男系天皇の意味を間違っています。
山田くんは男系天皇とは天皇の息子でなければならないとでも思っているのでしょうか?
もしそうだとしたら、現時点では悠仁親王にも皇位継承権は無いことになります。
遺伝子については詳しくないというのは仕方ないかもしれませんが、この程度の知識もなしに愛子天皇待望論など書くな、と言いたい。
継体天皇を持ち出すまでもなく、第119代光格天皇の親父殿は天皇ではなく閑院宮典仁親王であり、その親父殿も閑院宮直仁親王であり、ようやく曽祖父が東山天皇となります。
つまり、皇室典範
第一条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
は親父殿が天皇でなければだめだと言ってるわけではなく、父系で繋がっていれば良いということになります。
草壁皇子は天皇として即位していませんが、親父殿は天武天皇なので、草壁皇子の子(男子)にも皇位継承権はあります。
ちなみにこの光格天皇即位から今上天皇まで245年間は父子相伝となっています。これ自体奇跡に近いと思いますが、このような血統だけを継承の条件にしてしまうと、かならず断絶の危機が生じます。
血統による継承だけを前提とするのであれば、分家にあたる宮家を多く作る必要があるということです。そしてその藩屏として華族階級が必要になります。そういうものなしに戦後、直宮家だけにしてしまったことに、今日の皇統断絶の危機があるということです。
これはマッカーサーの百年殺し的な罠だったと思います。
そして今日の皇統断絶の危機を招いてしまったもう一つの原因は「側室の廃止」です。
「側室の禁止」は昭和天皇のご発案だそうですが、理想的ではありますが、今日の危機を招く要因になったと思います。
徳川将軍家のように大奥を作っていても直系だけでは5代、100年しか継承することができなかったのです。それを本妻のみでやるのは無謀です。
かといって今日の倫理観で「側室が産んだ子を天皇と認められるか?」というと、それもまた難しい。

■女性は天皇になれない皇室典範の時代錯誤
皇室典範の規定では、女性は女性であることだけを理由に天皇になれない。皇室典範第1条「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」とあり、天皇の血筋を父方から受け継いだ男系の男子のみが天皇になることを定めているからだ。
これは、いくらなんでも時代錯誤である。愛子さま待望論があろうとなかろうと関係ない。
男女の格差を示す「ジェンダー・ギャップ指数」(2024年)で、日本は146か国中118位。G7で最下位である。つまり、日本は女性の地位が諸外国に比べ圧倒的に低く、男尊女卑の国と見られているわけで、皇室典範の規定はこうした日本のイメージを助長している。

女系天皇論者と天皇廃止論者はよくこういう理屈を出してきます。
しかし、こういうものは法律の世界でいう「法令不遡及の原則」と同じで、天皇家2685年の歴史から見ればごく最近の価値観でしかない。いわば後出しじゃんけんのような価値感に振り回される必要はない。
日本の「ジェンダー・ギャップ指数」が低いことと天皇制は何の関係もない。
それに今のところアメリカ合衆国大統領にも女性は当選していませんし、ローマ法王どころかカトリックの司祭にも女性はいない。悠久の歴史をもつということはそういうものです。
高野山にも大相撲の土俵にも女を上げてはならない。
そもそも「男女平等」という価値観が今後不易だと誰が保証できるのでしょうか。
個人的見解ではありますが、私は男女で生殖の役割が違う以上、男女で権利は平等かもしれないが、逆立ちしても男に子は産めないし乳も出ない以上、男女差異はあって当然、という風に意識が変わる可能性は十分にあると思っています。そういう意味では、日本の女性は強いと思いますけどね。嫌なことは男どもに押し付けて、裏で糸を引いてるという感じがしないでもない。
一時期はやった環境重視も、ドイツが原発を全廃した結果悲惨な電力不足に落ち込み、いまや緑の党ですら「原発は環境負荷が低い」と言い出してる始末です。同じく環境負荷が低いといって製造を始めた電気自動車ですが、コストでは中国にかなわず、しかも使い勝手が悪いので普及しない。やっぱり100%電気自動車は無理だと言い始めた。
環境重視も万古不易ではなかった。
そしてこれが「保守」か「革新」かの違いでもあります。環境問題について考えれば電気自動車の方が環境負荷が小さいかもしれない(実際はそうでもないようですが)。だったら電気自動車で行くべきだ、電気自動車に乗らないヤツは環境非国民だ!というのが革新派の理論です。これに対し、そうかもしれないけど電気自動車にもメリット、デメリットがあるのだから徐々に進めて行けば良い、と考えるのが保守派です。決して「エンジンは人類が作り出した傑作であるから、これを用いるべきだ。」ということではありません。あくまでも電気自動車の将来性は認めつつも、漸次変更すればよい。

■男性、女性であることよりも大事なことがある
国会審議は少なくとも、皇室典範第1条を変えることを優先すべきではなかろうか。そうして、愛子天皇を誕生させる。この方向に持っていくべきではないか。
そうすれば、この老いたる国は明るさを取り戻す。愛子天皇誕生により、日本は長期低迷から脱するだろう。
男系であることがそんなに大事だろうか。男性、女性という性別よりも、どんな方が天皇になられるかのほうが、国民にとってはるかに大事である。
最後に書かせてもらえば、母から生まれた子どもは、間違いなくその母の子どもであり、出自を確かめる必要などない。天皇が男系であろうと、女系であろうと、この事実は変わらない。こちらのほうが、男系遺伝子の継承より、より尊重されるべきことではないだろうか。

もはや意味不明になってます。「愛子天皇誕生により、日本は長期低迷から脱する」というのは、どういう理屈なんでしょうか?
天皇陛下の霊力が日本を栄えさせるとでも言いたいのでしょうか。ウルトラ尊王論ですね。
天皇とは稲作民族において「お米がたくさんとれますように」とお祈りしてくれる機関であると思っています。そういう意味では、日本経済の根幹がお米であった時代にはそうだったのかもしれませんが、今日稲作農業も崩壊しかけているわけで、天皇陛下の霊力だけではいかんともしがたいと思います。
さらに
世界で唯一の日本の皇統の伝統は、これからは女性が繋いでいけばいい。
「日本の皇統が世界で唯一」というのは当たり前のことだし、そもそもこれまでは女性が繋いでないものを「これからは女性が繋いでいけばいい」とはどういう理屈なのか、理解に苦しみます。

ツッコミどころはいろいろありますが、めんどくさくなったので先に進めます。

(続く)



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