現 代の安南茶碗

ベトナムのハノイの郊外、約20Kmほどのところに有るバチャンで、陶器づく りの現場を見学する事が出来ました。

真っ白い粘土を水でこして、ロクロや、型に入れて成型し、乾いた陶器の表面に若い女の子達が 一心に蓮弁、龍、海老等、安南茶碗に特徴的な絵を書き入れていました。この方法は、遠い昔の利休の時代から伝わってきたのではないかと思われる程、素朴 で、かつ実直なやり方でした。

これは誰か日本人が茶碗を見せてそのまま作れと指示したと思われる、いくつかの典型的な安南 茶碗が目に入りましたが、その一つは私の茶道の先生の書かれた教科書の安南茶碗そのもので、形も絵柄も全くよく似たものでした。安南茶碗は焼く時に重ねる 為、お互いにくっ付かないように茶碗の中側の釉薬を、上に重ねる茶碗の高台にあわせて蛇の目状に削ります。そのため、水がもるのをとめる意味で、裏側の高 台の内側に鉄の泥を塗ります。この鉄泥は釜から出して、熱いうちに塗っているのでとれませんが、焼きつけたわけではなく、鈍い茶色をしています。しかし、 この茶碗は内側の蛇の目に所にも色を塗り、高台内の鉄泥のつもりのあざやかな焦茶色の釉薬が、偽物である事をはっきり物語っているのは御愛嬌でした。

でも、利休も安南から船で境港に運ばれた茶碗を選んでお茶に使ったのであり、今自分も安南の 地で、真似したとはいえ、利休と同じような茶碗を手に入れる事が出来たと言う事は、大きな感激でした。これも私の「自分で作者を見て使う茶碗」の一つとし て相応しいものと思います。

ちなみに、安南は日本では「あんなん」と呼んでいますが、ベトナム大使館の方を茶事にお呼び して話した時は、即座に「あなん」という発音が帰ってきました。現地では今でも「あなん」と呼んでいるのでしょうか。利休の時代はどうだったのか興味があ ります。

粘土の調整

 

 

 ロクロによる成型

 

型による成型

 

天日での乾燥

 

 

 手作業での絵付け

 

手作業での絵付け

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