和紙の壁

外壁の塗装に来た左官やさんに聞いたところ、最近20年ぐらい土壁を塗ったこ とがないと言っていました。本当は茶室の壁を土で塗りたかったのですが、そのような贅沢が許されるわけはなく、始めから代替えを考えていました。

年に数回遊びに行く長野県の長門町には、一度途絶えた技術を復活させて町営の和紙の里で和紙を作っています。そこでいつも和紙を漉いているのは、高 柳一さんで、長門町に通い始めてもう十年以上の付き合いです。

ある時母の家のフスマがやぶれたので、思い付いて高柳さんの和紙を買ってきて張り替えたとこ ろ、その部屋に行くととても落ち着くことに気がつきました。ビニールのコーティングをしたフスマ紙は、丈夫ですが、全くの無機質で、呼吸をしません。その 点和紙は擦れるともろいのですが、部屋の中の湿気を吸ったり吐いたり、呼吸をするので、とても居心地の良い部屋になります。

それ以来、夢の中での計画ながら、自分の茶室にはこの和紙を使うんだと決めて、和紙の里に行 くたびにその話をしていました。今回高柳さんからは、建築家が厚手の和紙を揉んでそれを壁紙に使っているのでそれを使うといいと提案があり、工務店の社長 に相談の上、着色して使うことにしました。本来ならば、最初から着色して作ってもらうべきなのでしょうが、5〜60枚では、注文も出来ません。これも工夫 の一つです。

色については、茶色系と緑系を候補にあげましたが、自作の竹花入れがきれいな黄土色なので、 それにあわせて緑系のくすんだ色を選択しました。青磁の花入れにはどうあわせようなどとは考えませんでした。これも自分の茶室の特権でしょう。

和紙の壁紙

自作竹花入

和紙のフスマ

フスマも紙の原料である楮(こうぞ)の皮を漉き込んだ和紙にして、部屋へ入ると一面の和紙、 とても落ち着いた茶室です。我が家の本体には未だに昭和20年代に作った土壁が一部現存していますが、それも今ではビニールの壁紙の下。茶室にまさる部屋 はありません。10年来の夢の一つが叶いました。

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