【コンボイ】
製作年 1978年、米
監督  サム・ペキンパー
出演  クリス・クリストファーソン アリ・マッグロー 
     アーネスト・ボーグナイン → 北国の帝王 ポセイドン・アドベンチャー
【あらすじ】
 アメリカの砂漠地帯を1台の巨大トレーラーが突っ走っていた。その前をジャガーXKEに乗ったメリッサ(アリ・マッグロー)が塞いだので、運転していた通称ラバー・ダック(クリス・クリストファーソン)は戯れに並行走行した。運悪くハイウェイ・パトロールと鉢合わせしたが、言葉巧みに騙して難を逃れた。ダックはCB無線で近くを走るトラック野郎に警官の存在を知らせると、ビッグ・ペンとマイクのトラックが応答し一緒に走ることになった。しかし、トラック野郎を装った囮捜査に引っかかり、鬼保安官ライル(アーネスト・ボーグナイン)から罰金を徴収された。ダックたちがなじみのレストランに立ち寄ると、車が故障したメリッサもいた。そのレストランにも性懲りもなくライルがやってきてマイクを浮浪罪で逮捕すると言い出す。ダックたちトラック野郎は堪忍袋の緒が切れて大立ち回りを演じてしまったが、警察から追われることになった。
 メリッサを乗せたダックのトレーラーを先頭にトラックの群が州境を目指してひた走るが、彼らに共鳴して参加するトラック野郎が増えてきて巨大なコンボイ(船団)となった。選挙を控えた州知事まで乗り出して、彼らと話し合いで解決しようと言い出すが、妻のお産でコンボイを離れたマイクが逮捕されて牢にぶち込まれているとの知らせが入り、ダックら一同で救出に向かう。マイクは救出されたが、トラック野郎の暴走ぶりに腹を立てた州知事は軍隊を要請する。ダックはメリッサを降ろすと軍隊が待ち構える橋に向かって突っ込んで行き、危険物を積んでいたトラックは爆発炎上し川に転落した。
【解説】
 監督のサム・ペキンパーは”バイオレンスの巨匠”と呼ばれ、その反逆精神から製作側と衝突しハリウッドからホサれたこともあったが、スローモーションで描写される銃撃シーンが強烈な印象を残す「ワイルドバンチ」(69年)や気弱なインテリが内に秘めた暴力性に目覚める「わらの犬」(71年)などで独自のスタイルを貫き通した。本作品の第2班監督は、ボブ・ディランも出演していた「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」(73年)やドイツ軍の視点から第二次世界大戦を描いた「戦争のはらわた」(76年)といった同監督の作品に主演していたジェームズ・コバーンが引き受けている。アリ・マッグローは「ある愛の詩」(70年)のジェニー役で一躍スターダムにのしあがり、ペキンパー作品「ゲッタウェイ」(72年)で共演したスティーブ・マックィーンと翌年結婚したものの、マックィーンの反対を押し切って本作品に出演したため離婚とあいなった。
 ラバー・ダックの巨大な18輪トラックはマック社のもので、マックと言えばトラックを表すほどアメリカでは名の知られた存在である。その歴史は古く19世紀の後半にペンシルヴェニア州のドイツ系アメリカ人兄弟によって設立された。中型バスの製造から始まり7.5tトラックなど大型車も手掛けるようになるが、アメリカ初の消防車も製造している。第二次大戦中は英軍に大量のトラックがレンド・リース(武器貸与)され、その頼もしさからマックのトラックは”ブルドッグ”と呼ばれるようになり、以後同社はブルドッグをトレードマークにするようになった。アメリカの乗用車は3大メーカーで占められているが、トラックはマックを始め、フレイトライナー、ピータービルト、ホワイト、インターナショナル、ケンワースなど多くの会社が存在している。だが、最近の国際的な再編の波には抗しきれず、業界最大のフレイトライナーもダイムラー・クライスラーの傘下におさまり、マックもボルボの傘下となっている。広大な大陸を走るため運転席の後ろにはスリーピング・キャブと呼ばれる仮眠用のボックスを付けているトラックも存在し、中にはシャワーなどを装備しているものまである。ラバー・ダックのトラックの助手席側にある巨大な円筒形のものはエアクリーナーで、そのためにコックピットは右に少し寄っている。州ごとにナンバープレートが発行されるため複数の州にまたがって運行するトラックにはいくつものナンバープレートがバンパーに掲げられている。ラバー・ダックのトラックはエンジンが前に突き出したボンネット型のトレーラーヘッドだが、これはコンベンショナル型と呼ばれており重量物を積んで長距離を走るトラックに多く見かけられる。日本では全長規制がアメリカより厳しいためこのようなトレーラーヘッドは見かけることはない。都市間輸送などに使われるエンジンの上に運転席があるタイプはキャブオーバー型と呼ばれ、日本のトレーラーヘッドもこのタイプで占められている。ちなみに、アメリカで単にトラックと言うとピックアップ・トラックのことを表し、本作品のような大型トラックはビッグリグと呼ばれている。