【ポセイドン・アドベンチャー】
製作年 1972年、米
監督  ロナルド・ニーム 
出演  ジーン・ハックマン → カナディアン・エキスプレス クリムゾン・ダイド 
                    フレンチ・コネクション
     アーネスト・ボーグナイン → 北国の帝王 コンボイ
     シェリー・ウィンタース
【あらすじ】
 地中海を航行していた豪華客船ポセイドン号の中では、新年を祝うパーティーが華やかに催されていた。そこに大津波が押し寄せ、船はあっという間に転覆するが、上下逆さまの状態でかろうじて浮いていた。行動派のスコット牧師(ジーン・ハックマン)は、助かる見込みの高い船尾の機械室に行こうと皆を説得するが、客室乗務員はこのまま救助を待つべきだと言って動こうとしない。結局、ロゴ(アーネスト・ボーグナイン)など計9人のみが大食堂から抜け出すが、直後に大食堂に猛烈な勢いで水が押し寄せ、残っていた大勢の乗客は全員犠牲になった。
 スチュアードのエーカーズの先導でキッチンを抜け、垂直エアシャフトを昇り始めるが、怪我をしていたエーカーズは転落してしまい行方不明になった。また、彼らとは別の生存者たちが船首の方に向かっているのに遭遇するが、スコットの静止を振り切り彼らは突き進んでいった。船は段々沈下しているらしく水が押し寄せてきて、機械室に行くには潜水しなければならなくなった。スコットがまず始めに行くが、崩れてきた鉄板で身動きできなくなる。水泳の得意なベル夫人(シェリー・ウィンタース)がスコットを助けるが、直後に心臓マヒで亡くなってしまう。
 最後尾にあたる船尾軸路室に向かう途中、爆発が起きロゴの妻リンダがバランスを崩して落下し、吹き出した蒸気が行く手を阻んでしなった。スコットは、神を罵るとバルブに飛びつき回して蒸気の吹き出しを止めるが、力つきて火の海に落下した。残った6人は無事救助された。
【解説】
 1970年代前半からブームとなったオールスターキャストのパニック映画の火付け役となった作品で、日米で年間興業収益1位となるなど世界的なヒットとなった。
 製作のアーウィン・アレンは、TVシリーズ「宇宙家族ロビンソン」「タイムトンネル」「巨人の惑星」など日本のお茶の間でも人気のあった番組の製作者である。本作品に続いて「タワーリング・インフェルノ」(74年)も成功させ頂点に登り詰めたが、蜂の大群が人々を襲う「スウォーム」(78年)、柳の下のどじょうを狙った本作品の続編「ポセイドン・アドベンチャー2」(79年)、突如噴火を始めた火山から逃れる人々を描いた「世界崩壊の序曲」(80年)などはキャストがオールスターなだけといった内容でことごとく興行的に惨敗。以後、映画製作から手を引き1991年に亡くなっている。
 監督のロナルド・ニームはイギリス出身で、撮影監督として業界入りした後、デビッド・リーン監督らと共にプロダクションを設立し、「逢びき」、「大いなる遺産」(46年)などの作品の製作や脚本を手掛けている。
 特撮を担当したのはL・B・アボットで、「ミクロの決死圏」(66年)、「猿の惑星」(68年)、「トラ・トラ・トラ!」(70年)などの特殊効果も担当しており、50年代から70年代までの20世紀フォックスの大作映画には必ず名前が出てくる人である。
 ベル夫人を演じたシェリー・ウィンタースは「アンネの日記」(59年)、「いつか見た青い空」(65年)で2度のアカデミー助演女優賞を獲得した演技派で、本作品でも候補になっている。「陽のあたる場所」(51年)ではボートから落ちて溺死するアリス役で注目を集めたが、実際は泳ぎは得意(水泳のコーチはオリンピック金メダリストでターザン俳優だったジョニー・ワイズミュラー)で本作品でもスタントなしで自ら潜水シーンをこなしている。「裸の銃を持つ男」(88年)のドレビン刑事役で後に大ブレークするレスリー・ニールセンが、ポセイドン・アドベンチャー号の厳格な船長を演じていて興味深い。
 ポセイドン号は、バラストがないため船の重心が高いという設定になっており、そのため大津波で転覆してしまうのだが、海上では津波の波長が大きいため実際に起こる可能性は限りなく低い。だが、暴風による同様な海難事故は日本でも起きている。昭和9年(1934年)3月12日長崎県五島列島付近の海上で、荒天にもかかわらず夜間訓練をおこなっていた水雷艇「友鶴」が連絡を絶ち、僚艦による捜索の結果転覆しているのが発見された。佐世保港まで曳航して、船底に穴が開けられ乗員13人が無事救助されたが、艦長を含む100人が殉職した。事故原因の調査の結果、基準排水量535トンの水雷艇に1000トンクラスの駆逐艦の装備を詰め込んだため、重心が通常より高くなる、いわゆるトップ・ヘビーの状態になり、復元力不足で転覆にいたったことが判明した。友鶴は同年2月に就役したばかりの新鋭艦だったので、日本海軍に大きな衝撃をもたらした。