【レインマン】
製作年 1988年、米
監督  バリー・レヴィンソン
出演  ダスティン・ホフマン
     トム・クルーズ  →  トップガン デイズ・オブ・サンダー
【あらすじ】
 資金繰りに苦しんでいた外車ディーラーのチャーリー・バビット(トム・クルーズ)のもとに、絶縁状態だった父親が急逝したとの訃報が届いた。葬儀に出席するためシンシナティに向かうが、当てにしていた遺産は匿名の受益者のものとなり、チャーリーには車1台と薔薇の木だけが残された。納得がいかないチャーリーは管財人のブルーナー医師がいる施設を訪れ、そこに自閉症のレイモンド(ダスティン・ホフマン)という兄が存在し、彼こそが受益者である事実を知らされ驚く。チャーリーはレイモンドを言葉巧みに連れ出すが、恋人のスザンナは遺産目当ての浅ましい行為に腹を立て去っていった。
 レイモンドが飛行機を嫌がったためロスまで車で旅するはめになり、レイモンドの異常行動にイライラは募る一方だったが、あるモーテルに泊まった際レイモンドが発した”レインマン”という言葉で兄弟の絆を再認識したチャーリーは、本当の後見人になろうと決意しスザンナにも謝りの電話を入れた。旅の途中のラスベガスに立ち寄ると、超人的な記憶力のレイモンドのお陰で大金を手に入れる。レイモンドは言い寄ってきた娼婦とのデートを本気にするが、約束の時間には現れず、チャーリーの元に戻ってきたスザンナがダンスの相手をしてやった。
 ロスに到着し、レイモンドの処遇を決めるための診断が行われるが、レイモンドはチャーリーと一緒に住むことと病院に帰ることの区別も出来なかった。結局、レイモンドは病院に戻ることとなり、チャーリーが見送る中、列車で帰っていった。
【解説】
 監督のバリー・レヴィンソンは、テレビ業界の出身で半自伝的作品「ダイナー」(82年)で監督デビューした。ロビン・ウィリアムズ主演の「グッドモーニング・ベトナム」(87年)が大ヒットし、次作となった本作品がアカデミー作品賞、監督賞に輝きメジャー監督の仲間入りを果たした。かつてメル・ブルックス監督の「新サイコ」(78年)に端役で出演したこともあり、本作品にも医師役で出演している。
 ダスティン・ホフマンがニューヨーク・アクターズ・スタジオに通っていた時、ジーン・ハックマンと同居していたのは有名な話である。「卒業」(67年)でセンセーショナルなデビューを果たし、「真夜中のカーボーイ」(69年)や同じアクターズ・スタジオ出身のスティーブ・マックィーンと共演した「パピヨン」(73年)などで汚れ役も演じ演技派俳優としての地位を不動のものにし、「クレイマー・クレイマー」(79年)で最初のアカデミー主演男優賞を受賞した。「トッツィ」(82年)では女装にも挑戦し、小柄な体格ながらかつて自身が主演した「小さな巨人」(70年)という形容がふさわしいハリウッドを代表する大物スターとなった。本作品でもサバン症候群と呼ばれる特殊能力を持った自閉症の人々と実際に接して役作りを行い、見事2度目のアカデミー主演男優賞を獲得している。バリー・レヴィンソン監督作には以後も「スリーパーズ」(96年)「ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ」(97年)「スフィア」(98年)とよく出演している。
 冒頭でランボルギーニ・カウンタックやフェラーリ412が登場するが、主役は49年型ビュイック・ロードマスター・コンバーチブルである。ビュイックはGMブランドの中でキャデラックとシボレーの中間に位置する車種で、この当時ロードマスターは最上位クラスのバリエーションだった。4つずつ並んだ車体横の装飾がV型8気筒エンジン搭載であることを誇示している。
【米ビッグスリー・GM(ゼネラル・モーターズ)】
 世界最大の自動車会社GMは、1908年ビュイックなどを買収したウィリアム・デュラントによって創設された。デュラントはこの後退陣や復帰を繰り返す波瀾万丈の人生を歩むが、会社自体は巨大化して行き、キャデラックを最上位に、ビュイック、オールズモビル、ポンティアック、シボレーと顧客のニーズに合わせた車種をそろえ、当時世界最大でT型フォード一辺倒のフォード社に対抗した。このマーケティングを重視した戦略で1920年代にはフォード社を抜き、現在に至るまでトップの座に君臨している。大戦後、GM中興の祖といわれるアルフレッド・スローン社長は、それまで各事業部ごとに独立していたデザイン部門をGM全体で統括することにし、ハリー・アールをデザイン部長に抜粋した。デザイン重視の車は大衆に受け入れられてGMの車は益々売り上げを伸ばしていきシェアが40%にも達して独占禁止法に触れそうになった。そのため、他社にオートマチックトランスミッションの技術を提供するなど戦後消え去るメーカーもある中余裕を見せつけている。