【デイズ・オブ・サンダー】
製作年 1990年、米
監督  トニー・スコット  → クリムゾン・タイド トップ・ガン
出演  トム・クルーズ → トップ・ガン レインマン
     ニコール・キッドマン ロバート・デュバル
【あらすじ】
 整備士を引退して田舎に引っ込んでいたハリー・ホッジ(ロバート・デュバル)の元にレースチームのスポンサー、ティムが訪れNASCARレースへの再起を促した。ティムは腕利きのドライバーとしてコール・トリックル(トム・クルーズ)を連れてきた。ストックカーレースの経験がないコールだったが、試し乗りで好タイムを記録し皆を安心させた。しかし、実際のレースに出場すると激しい車同士のせめぎ合いに実力を発揮出来ないでいた。そんなコールをハリーは野生馬でも調教するかのようになだめたりすかしたりして上達させて行き、とうとう初優勝するまでに腕を上げた。
 ライバルのローディとは常にトップを争っていたが、あるレースで多重事故が発生し、その煽りでコールとローディの車は激しく衝突し2人とも病院にかつぎ込まれる。コールはそこで美人の女医クレア(ニコール・キッドマン)と出会い、しだいに親密になっていく。レースに復帰したコールだが以前の勢いがなく若手のドーランに挑発される始末。怒ったコールはドーランにわざとぶつけるが、車を壊されたティムはハリー共々クビにしてしまう。荒れるコールにクレアも愛想を尽かして距離を置くようになった。そんなコールに救いの手を差し延べたのは事故で再起不能になったローディだった。提供された車をハリーが懇切丁寧にカスタマイズし、なんとかデイトナ500レースに間に合わせた。レース場にはクレアも戻ってきてくれて愛を確かめ合った。レースは因縁のドーランと激しいデッドヒートとなったが、最終コースでコールが抜き去って優勝した。
【解説】
 「トップガン」と同じ製作者、監督、主演が顔をそろえており、音楽にもジェフ・ペック、ガンズ・アンド・ローゼス、シカゴなどのトップ・アーティストが参加している。このサウンド重視でMTV世代をターゲットにした映画作りは本作品の製作者であるドン・シンプソン&ジェリー・ブラッカイマーが始めたもので、記念すべき第1作「フラッシュ・ダンス」(83年)は、アメリカは当然として日本でも大ヒットした。「ビバリーヒルズ・コップ」(84年)「トップ・ガン」(86年)とヒットを連発するが、ドン・シンプソンは薬物の過剰摂取で亡くなってしまう。以後、ジェリー・ブラッカイマー1人となるが「アルマゲドン」(98年)「パール・ハーバー」(2001年)などの超大作を成功に導いている。
 ニコール・キッドマンはオーストラリアで数本の映画に出演後、本作品でアメリカ映画デビューを飾り、彼女を推薦したトム・クルーズと撮影直後に結婚した。クルーズとの3本目の共演に当たる「アイズ・ワイド・シャッド」(99年)では2人の大胆なシーンが話題になったが2001年に離婚が成立した。しかし、演技力には益々磨きが掛かり「ムーラン・ルージュ」(2001年)のノミネートに続き、「めぐりあう時間たち」(2002年)でアカデミー主演女優賞を獲得した。
 ビッグ・ジョン役のフレッド・ダルトン・トンプソンは本ホームページでも取り上げている「レッド・オクトーバーを追え」「ダイハード2」「イントルーダー/怒りの翼」にも出演していたが、その貫禄を生かし1994年に地元のテネシー州から上院議員に立候補し当選している。
 NASCARはナショナル・アソシエーション・フォー・ストックカー・オート・レーシング(全米ストックカー・レーシング協会)の略で、市販車の形をしたレーシングカーでレースを行う主催団体である。数多くのカテゴリーが存在し、その頂点にあるのが本作品の舞台にもなっているウィンストン・カップ・シリーズ(2004年からスポンサーが変わりネクステル・カップとなっている)で、2月から11月までのほぼ毎週行われている。市販車とはいってもシャシーはスチールパイプで組み立てられ、エンジンは700馬力もある。外見が市販車のレーシングカーなのだが、レーギュレーション(規格)は厳しく少しでも市販車の形状から逸脱していると失格となる。
 現在、使用されている車はダッジ、シボレー、フォード、ポンティアックとアメリカ車だけである。コースはインディカーと同じくアメリカ人好みのオーバル(楕円形)コースが大半を占め、F1などと違い完走すれば最下位でもポイントをもらうことが出来る。故意にぶつけるのは映画の中の話で実際にはやらないそうだが、何十台も狭いコースにひしめき合うので勢いでぶつかることはよくあることでレースを終えた車がボロボロになっているのは事実である。
 NASCAR最大のイベントがウィンストン・カップ・シリーズの開幕戦でもあるデイトナ500レースで、開催されるフロリダ州デイトナビーチには毎年20万を越す観客が押し寄せ、あのインディ500レースと共にアメリカ・モータースポーツ界の頂点に立つイベントとして大変な人気を誇っている。