【トップガン】
製作年 1986年、米
監督  トニー・スコット → クリムゾン・タイド デイズ・オブ・サンダー
出演  トム・クルーズ アンソニー・エドワーズ バル・キルマー
【あらすじ】
 カルフォルニア州ミラマー海軍航空基地にある通称トップガンと呼ばれるエリートのみが入学を許される空中戦訓練学校に、F−14トムキャットのパイロットで通称マーベリック(トム・クルーズ)
とRIOと呼ばれるレーダー索敵手グース(アンソニー・エドワーズ)のコンビが仲間入りした。トップを狙うライバルにはアイスマン(バル・キルマー)組がいた。講義が始まり民間人の教官が現れるとマーベリックは前日士官クラブで出会った女性だったので驚いた。航空物理学博士の彼女はチャーリーと名乗り敵機の情報に詳しかった。実戦訓練が始まるとマーベリックは教官を出し抜くほどの腕前を見せるが、ハメをはずし過ぎるきらいがあった。マーベリックはチャーリーから自宅での食事に誘われたので喜んで向かうが、ミグとの実戦経験がある彼の話を聞くのが目的だったので落胆し2人の仲も気まずくなるが、彼女がマーベリックを愛していると告白し2人の恋は燃え上がった。訓練も後半に差し掛かったある日、前を飛んでいたアイスマン機のジェット後流のためマーベリック機はエンジンが停止し緊急脱出するがグースが亡くなってしまう。避けられない事故だったとしてマーベリックは査問会議でも責任は問われなかったが、気力を失ったマーベリックは訓練でも生彩を欠いた。しかし、教官のマドカフ中佐よりこだわり続けていた父親の死の真相を聞かされ立ち直ると、アイスマンが首席となった卒業式に出席した。休む間もなく出動命令が下ると、マーベリックは単機でミグ4機を撃墜した。今度はトップガンの教官としてミラマー基地に戻ると、チャーリーが待っていた。
【解説】
 日米で年間興業収益1位となった本作品でトム・クルーズはトップガンならぬトップスターとなり今もその地位は少しも揺らいでいない。数々の青春スターが共演したフランシス・フォード・コッポラ監督の「アウトサイダー」(83年)では格別目立つ存在ではなかったし、前作となるトニー・スコット監督の兄リドリー・スコット監督の「レジェンド/光と闇の伝説」(85年)も成功作とは言えなかったが、翌年の本作品で爆発的な人気を得て、以後は「ハスラー2」(86年)ではポール・ニューマンと、「レインマン」ではダスティン・ホフマン、「ア・フュー・グッドメン」(92年)ではジャック・ニコルソンなど大物俳優との共演が続き、「ミッション:インポシブル」(96年)からは自ら製作にも乗り出し大ヒットさせている。本作品は好戦的との批評もあったためか、一転してオリバー・ストーン監督の「7月4日に生まれて」(89年)ではベトナム後遺症で悩む傷痍軍人を体当たりで演じている。相棒役のアンソニー・エドワーズは長らく目が出なかったがTVシリーズ「ER緊急救命室」のグリーン医師役で一挙に注目を浴びる存在になった。まだ無名だったメグ・ライアンや「ショーシャックの空に」(94年)のティム・ロビンズも出演している。
 ロック・サウンドを重ねた画面作りは「アイアン・イーグル」と同じだが、本作品のプロデューサーは「フラシュダンス」(83年)「ビバリーヒルズ・コップ」(84年)で成功を収めたジェリー・ブラッカイマーで、やはり手慣れた感があり大ヒットにつながっている。
 グラマンF−14トムキャットの開発は1968年に始まった。前年に行われたモスクワ航空ショーでソ連は新鋭戦闘機ミグ23フロッガー、ミグ25フォックスバットなどを登場させたため、アメリカは対抗すべき戦闘機が是非とも必要になった。こうして1970年に初飛行したF−14の最大の特徴は可変翼を採用したことである。コンピューターで自動制御されるこの翼により大型戦闘機であるにもかかわらず、この映画の空中戦でも見られるように急な引き起こしや小さな旋回半径で相手の後ろに回り込むなどの離れ業が可能となった。もう一つの特徴は火器管制装置AWG−9によって約100q以内24個の攻撃目標を同時に追跡でき、任意の6目標にフェニックス・ミサイルを誘導できる長距離多目標同時攻撃能力である。戦闘機にもかかわらずレーダー索敵手を乗せているのは複雑なこのシステムを統御するためである。
 大変高価なためアメリカ以外で採用した国はオイルマネーで潤っていた革命前のイランだけだったが、その後アメリカとの関係が悪化したためスペア部材の供給は停止され現在稼働可能のものはないと言われている。長い間、主力艦載機の地位を保ってきたがさすがに実戦配備から30年も経過したためF/A−18ホーネットへの転換が進んでおり2007年までには全機が引退する予定である。架空のミグ28を演じたのはF−5タイガーで、教官のアグレッサー(敵軍部隊)機にはA−4スカイホークが使われている。