【エアフォース・ワン】
製作年　１９９７年、米
監督　　フォルフガング・ペーターゼン　→　Ｕボート　パーフェクト・ストーム
出演　　ハリソン・フォード　→　アメリカン・グラフィティー
　　　　　ゲーリー・オールドマン　グレン・クローズ
【あらすじ】
　モスクワでのレセプションで、テロには屈しないと宣言したジェームズ・マーシャル米大統領（ハリソン・フォード）は大統領専用機”エアフォース・ワン”で帰路につくが、同行する報道陣に変装したテロリストたちにハイジャックされてしまう。護衛官は素早く大統領を脱出ポッドに押し込み脱出させたが、大統領の妻子を始め５０人近くが人質になってしまった。テロリストの首領コルシュノフ（ゲーリー・オールドマン）は逮捕されたラデク将軍を解放するようにホワイトハウスのベネット副大統領（グレン・クローズ）に要求してきた。一方、着地した脱出ポッドは空で、脱出したはずの大統領は機内に潜伏していた。反撃を開始した大統領は２人のテロリストを倒し燃料の一部を投棄した。コルシュノフは空中給油機を要求し、低空での飛行を強いられるが、それは大統領側のねらいで人質の大半はパラシュートで脱出した。しかし、テロリストが気密扉を開けたため機体が大きく振られ、空中給油機は引火して爆発した。外に投げ出されそうになった大統領はかろうじて救出されるが、妻子共々テロリスト側に捕まり、要求を再度突きつけられる。しかし、隙を付いて大統領はコルシュノフに組み付き格闘の末、機外に放り出した。パイロットが死んだため大統領自ら操縦するが、敵側のミグ戦闘機が襲いかかってきた。味方のＦ−１５戦闘機が駆けつけ空中戦となり撃退したが、大統領専用機は損傷を受け高度が下がり始めた。輸送機からワイヤーが下ろされ脱出しようとすると、裏切り者の護衛官が発砲してきた。しかし、大統領は相手を打ち倒し輸送機に脱出した。
【解説】
　「インデペンデンス・デイ」に続き戦う大統領が登場するが、非人間のエイリアンと人間のテロリストの違いはあるものの、始末の悪さに関しては大差がない。
　大統領を演じたハリソン・フォードは、下積みが長く出演する映画は端役ばかりで、３５歳の時に出演した「スター・ウォーズ」（７７年）のハン・ソロ役でブレイクするまで大工で生計を立てて家族を養っていた。このハン・ソロ役とインディ・ジョーンズ役でアクション・ヒーローとしての地位を確立したが、「ワーキング・ガール」（８８年）や「６デイズ／７ナイツ 」（９８年）のようなラブ・コメディーから「フランティック」（８８年）や「推定無罪」（９０年）のようなサスペンス物まで幅広く活躍しており、デビューは遅かったもののハリウッドを代表する大スターに成長した。
　大統領専用機第１号となったのはコンソリデーテッドＢ−２４爆撃機を輸送機に転用したもので１９４３年に登場したが、時の大統領フランクリン・ルーズベルトは一度も乗ることなく亡くなった。以後ダグラス社のＤＣ−４、ＤＣ−６の軍用機バージョンが使われたが、１９５３年に就任したアイゼンハワー大統領は欧州連合軍総司令官時代から愛用していたロッキード・コンステレーションを大統領専用機として使用した。ケネディー大統領の時代からジェット機となり、ボーイング７０７が使われるようになった。この大統領専用機から現在のような白と青を基調とした機体塗装が施されるようになったが、このデザインをしたのは「恋に落ちて」でも紹介した工業デザイナーのレイモンド・ローウィーである。
　次に登場したのが本作品の主役で、現在も使われているＶＣ−２５Ａ（機体はボーイング７４７ジャンボ旅客機）である。機内には大統領執務室や随行員室など”空飛ぶホワイトハウス”を維持するのに必要な機能がそろえてあるが、手術台を備えた医務室や１００人分の食事が用意できる調理室などもある。本作品にも出てくる空中給油機能やミサイル妨害装置、核爆発の電磁波衝撃から耐えられる構造などは事実だが、脱出ポッドについてはセキュリティー上明らかにされていない。ただ、墜落時の衝撃から耐えられるポッドは備えられているといわれる。
　通信装備も備えられているが、緊急時は全世界の米軍司令部や部隊に通信、指揮ができる空中指揮機Ｅ−４（機体はボーイング７４７ジャンボ旅客機）の方が使われる。「トータル・フィアーズ」（２００２）にも登場したこの緊急事態対応機は、大統領がエアフォース・ワンで海外を歴訪するときも同行し、来日時は横田空軍基地で待機している。ちなみに、エアーフォース・ワンとは大統領が搭乗する空軍機のコールサインのことで、大統領が海軍機に搭乗する時はネイビー・ワン（２００３年５月１日イラク戦争の勝利宣言のためブッシュ大統領を乗せて空母リンカーンに着艦したＳ−３Ｂバイキング対潜機など）、海兵隊機の場合はマーリン・ワン（ホワイトハウスからキャンプ・デーヴィッドやエドワーズ空軍基地に向かうＶＨ−３Ｄシーキング・ヘリコプターなど）と呼ばれる。