予防について


フィラリア

Q.春からフィラリア症予防薬を投薬するのはなぜですか?   冬は投薬しなくても大丈夫なのですか?                               A.一年中蚊の活動が活発な地域では、冬でもフィラリア症の予防薬を投薬しなければなりません。気温が下がって蚊の活動が停止する期間は投薬を中断することができます。

Q.4月の上旬から蚊が見られた場合、1ヵ月後の5月からフィラリア症予防薬を使いはじめますが、すぐに投薬しなくても大丈夫なのですか?
A.フィラリア症の予防薬は、実はフィラリアの幼虫を駆除する薬です。蚊が運んできたフィラリアの幼虫が体内に入ったとしても、すぐに投薬しなくても問題はありません。蚊が活動を開始して1ヵ月後に投与する薬で、それまでに感染した幼虫は心臓に到達する前に、十分駆除することが可能です


Q.冬になり蚊が見られなくなってから1ヵ月後にもフィラリア症予防薬を投薬するのはなぜですか? 蚊がいなくなり、感染の心配がなくなっても、投与しなければいけないのですか?                                   A.フィラリアの幼虫は、脱皮を繰り返しながら発育して成虫になります。そのすべての発育段階で100%駆除できるわけではありません(表参照)。体内に入るときはL3、その後L4、L5と成長して成虫になりますが、L4という発育段階以外では十分に駆除することができません。つまり、予防薬を毎月投薬しても、実は一部の幼虫はL3のままでいるために、完全には駆除できないのです。しかし、その1ヵ月後の投薬で駆除することが可能になります。これが、毎月あるいはシーズンの終わりに、蚊が活動を停止していても1ヵ月後に投薬する理由です。

 フィラリアの発育段階      存在場所                     L1 ミクロフィラリア       感染犬の血液中→蚊               L2 第2期幼虫           蚊の体内                    L3 感染幼虫          蚊の体内→犬の体内(組織)           L4 体内移行幼虫         犬の体内(組織)                    予防薬はL4段階で100%駆除                           L5 未成熟虫           組織→血管内                  成虫              肺動脈・心臓


Q.フィラリア症予防薬の投薬が毎月1回なのは、薬が1ヵ月間効いているからですか?                                   A.フィラリア症の予防薬は、心臓に寄生してしまう前に幼虫を駆除するために投与します。駆除効果が持続するのではなく、投薬前1ヵ月間に感染したフィラリアの幼虫を駆除するものです。効果が1ヵ月持続するわけではありません。
Q.蚊がいないときにはフィラリア症に感染しないのですか?                  A.蚊が吸血するときにフィラリアの幼虫を感染犬から、他の犬に運びます。蚊が吸血しない限り、フィラリア症への感染はありません。

②ノミ

Q.犬や猫に少しくらいノミが寄生しても、問題ないですか?                  A.ノミに刺されると非常にかゆく、犬や猫に精神的なストレスを与えます。また、ノミに頻繁に刺されると、ノミアレルギー性皮膚炎になる可能性もあります。一度このアレルギー状態になると、その後は少数のノミ寄生でも皮膚炎に悩まされることになります。また、バルトネラ・ヘンセレという菌に感染した猫に人間が引っかかれたり、噛まれたりすると、様々な症状を引き起こす「猫ひっかき病」になることも。これはノミが媒介して猫から猫へとうつす感染症です。つまり、ノミは犬や猫だけでなく、人間の健康まで脅かす危険があるので、徹底した駆除が必要です。

Q.ノミは一度にどのくらい卵を産むの?                             A.ノミは犬や猫に寄生すると数秒で吸血を開始します。その後8~24時間で交接を開始し、24~48時間で産卵を開始し、ピーク時の4~9日間は毎日40~50個を産みます。参考までに、交接から産卵までの期間、ノミの吸血量は1日あたり体重の約1.5倍にもなります。例えばメスノミが72匹いると、1日の総吸血量は1mlになるわけです。

Q.ノミが卵から成ノミになるまでの期間はどのくらいですか?               A.温度や湿度などの環境による差はありますが、平均3~4週間で卵から成ノミになるといわれています。最短で12~14日、最長で約180日という例も報告されています。

Q.ノミアレルギー性皮膚炎とはどんな病気ですか?                     A.ノミが犬や猫の血を吸うと、ノミの唾液中に含まれるアレルギーの基になる物質が犬や猫の体内に入ります。ノミによる吸血が繰り返されると犬や猫はこの物質に対してアレルギーとなり、激しいかゆみや湿疹、脱毛などを伴う皮膚炎を引き起こします。一度ノミアレルギーになるとその後は少数のノミの寄生でもこの皮膚炎に悩まされることになります。定期的なノミ対策を行い、ノミが寄生しない状態に保ってあげることが大切です。

Q.ノミ対策は暑い時期だけでいいですよね?                       A.ノミは暑い季節、梅雨時や夏場だけの問題ではありません。確かにそれらの時期はノミが大量発生しますが、そうなってしまってからでは環境中の未成熟なノミ(卵、幼虫、さなぎ)まで含めて完全にクリーンな状態にするには時間がかかってしまいます。ですから、大量発生時期の前から予防的にノミ駆除剤を使うことが推奨されています。また、調査によって冬でも犬では10頭に1頭、猫では5頭に1頭がノミの被害を受けていることが分かりました。必要に応じて1年を通したノミ対策も行いましょう。


Q.1回のノミ駆除で、全てのノミはいなくなりますか?                  A.いいえ、定期的なノミ駆除が大切です。 目に見えているノミは、実はたったの5%。あとの95%は卵、幼虫、さなぎの状態で周囲に隠れています。これらの未成熟期のノミを根絶するためには、定期的なノミ駆除でノミのライフサイクルを断ち切ることが必要。また、ノミを駆除した後に新たに侵入してくるノミに備えるためにも、定期的なノミ駆除をすることが大切です。

Q.ノミが媒介する寄生虫について教えてください。                     A.犬や猫は瓜実条虫(サナダムシ)という寄生虫に感染していることがあります。瓜実条虫の成虫は50cm以上になり小腸に寄生しますが、条虫が繁殖するためには中間宿主が必要で、この中間宿主となるのがノミなのです。つまり、瓜実条虫を駆除するにはノミを同時に駆除しなくてはなりません。瓜実条虫は、虫体が瓜の実に形が似た片節が多数連なっているのが特徴で、感染している犬や猫では、糞便や肛門の周囲にこの片節がバラバラの状態で見られます。 そして、この片節には瓜実条虫の卵がたくさん入っていて、この卵をノミの幼虫が食べると幼虫の中で条虫の卵は幼虫へと発育し、ノミの発育とともに感染力を持つ感染幼虫になるのです。この状態のノミを犬や猫がグルーミングのときなどに食べてしまうとことにより瓜実条虫の感染が起こります。また、まれに人間の子供が感染を受けることもあります。 マダニおよび関連する病気について

 

③マダニ

Q.マダニとダニは同じですか?                             A.一口にダニといっても、その中には吸血をすると目に見える大きさになるマダニのほか、顕微鏡で見なければ見つからないダニ(英語でマイトと言います)が含まれています。ダニ(マイト)には、アトピーの原因となるチリダニ(ハウスダストマイト)、疥癬や毛包虫症の原因になるダニや耳ダニなどがいます。 マダニ(動物病院で慣用的にダニと言われることがありますが正しくはマダニです)は、屋外の草や木に潜んでいて、犬や猫が通ると寄生します。しかし、ほかのダニ(マイト)には屋内のほこりのなかにいるものや、他の動物から移ってくるものがあります。マダニはほかの動物から直接移ってくることはありません。マダニが多くいるとされている地域では、散歩中などに草むらに顔を突っ込むことを止めさせた方がよいでしょう。 マダニがたくさん寄生すると、大量に吸血されて貧血になることがあります。また、マダニは、バベシアなどの犬に重篤な症状を引き起こす病原体を運ぶこともあります。 なお、ダニは昆虫ではなくて、どちらかというとクモに近い生物です。


Q.マダニはどんな姿なの?                              A.幼ダニ→若ダニ→成ダニと成長するマダニ。成ダニはとても大きくなります。

Q.マダニは、どのような場所でペットに寄生するのですか?  A.散歩のときが、注意のとき。 やぶや草むらなどに生息するマダニは、ペットの散歩のときに寄生する機会を狙っています。都会の公園や河原などもマダニの生息地帯。少しでも緑が多い場所に近づくときには、マダニに注意してください。


Q.マダニはどうやって病気を媒介するの?                        A.吸血と唾液の分泌を繰り返して、病気を媒介します。 皮膚が薄く吸血しやすい 頭や耳を好んで移動します。 くちばしを刺し、セメント状の物質を出して自分の体を固定します。 吸血と同時に唾液をペットの体内に吐き出しますが、これが病気を媒介する大きな原因となります。 吸血開始から48時間以内なら、病気を媒介する危険性が低いので、 駆除薬の投与で早い対応を心がけましょう。
Q.マダニがつくと、ペットはどうなってしまうんですか?               A.貧血や皮膚炎をはじめ、命にかかわる病気にも。 マダニは多くの病原体を媒介します。そのため、吸血による貧血や皮膚炎だけでなく、命さえおびやかす病気にかかる可能性があります。 小さなチワワに大量発生。貧血状態になる場合もあります。 マダニに寄生された部分に痛々しい傷跡が。


Q.マダニはどんな病気を媒介するの?                        A.マダニは、死にもつながる病気を媒介します。 犬バベシア症 バベシア原虫が犬の赤血級を破壊。貧血、発熱、食欲不振。黄疸などがみられ、急性の場合は死に至ることもあります。 貧血による元気消失。 貧血による口腔内粘膜のそう白。


Q.マダニのピークはいつですか?                           A.春と秋、2回のピークシーズンがあります。マダニのシーズンは、成虫が多い春だけと思われがちですが、秋に若ダニや幼ダニが多く発生することは意外と知られていません。だから、年間を通じた定期的なマダニ対策が重要です。

Q.どうやってマダニの寄生をチェックするの?                  A.お出かけから帰ったら、頭や耳、目のふち、お腹、足の指の間、背中、しっぽなどをチェックしましょう。

Q.マダニが寄生したらどうすればいいの?                    A.もしマダニを発見しても、決して無理にとろうとしてはいけません。化膿したり、病原体をペットにうつしたりするので、見つけたらすぐ病院へ。

Q.マダニは人への影響があるの?                              A.ペットだけでなく、人体への感染例も報告されています。

《ライム病》  マダニからペットや人にも感染。                            人に感染した場合、皮膚症状、神経症状、関節炎などがみられます。


《日本紅斑熱 》  マダニが人にリケッチアという病原体をうつすことで、日本紅斑熱を引き起こすことがあります。    発熱、全身の発信などの症状だけでなく、死亡する場合もある大変危険な病気です。


《SFTS(重症熱性血小板減少症候群)》 2013年に日本でも初めて死 亡例が報告された、ウイルスによる感染症。