皆様の「オムツに関する調査」の回答データを使って、LCA暫定結果を修正いたしましたのでご報告いたします。おかげさまで、曖昧だったデータの確かさが向上し、より明確な結果を得ることができました。調査へのご協力に対し、あらためて御礼申し上げます。
ありがとうございました。
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オムツに関する環境負荷算出(LCA)の結果
まず計算で考慮している範囲を図1に示します。暫定結果との違いなど注意点を列記します。
図1 布オムツと紙オムツの考えている範囲(ライフサイクルフロー)
次に、暫定結果を算出するために使用したデータの変更点を表1に示します。結果的に、おおむね布オムツに有利に、紙オムツに不利に変更することになりました。
表1 LCA算出に使った主なデータの変更
(上にあるほど重要:番号が飛んでいるのは関係ないものを飛ばしているため)
順位 | 要素値 | 単位 | 要素名称 | 変更値 | 変更理由、コメント等 |
1 | 20 | 枚/回 | :布オムツを洗濯するときの一回あたりの枚数 | 33枚相当/回 | 布オムツと同時に洗う他の洗濯物を考慮したため大幅増加:計算式も変更 |
2 | 23 | 円/枚 | :紙おむつ値段 | 26円/枚 | 地域によって価格差が大きい:影響が大きいのでもうちょっとちゃんと調べる必要があるかも。 |
5 | 100 | L/回 | :洗濯時の水使用量 | 123L/回 | 4年前の洗濯機(11機種)のカタログ値から |
7 | 2 | 枚/回 | :布オムツ一回あたりの使用枚数平均 | (変更無) | →No.10 |
8 | 5.47 | 回/日 | :紙おむつの平均交換回数 | 6.18回/日 | 皆さんの回答と文献値が違うために悩みました:交換回数に経年変化があるらしいことが分かったため、皆さんの回答を採用:図2参照 |
10 | 9.74 | 回/日 | :布オムツの平均交換回数 | (変更無) | 本当はNo.7とあわせた交換枚数が必要だが、データ数が足らなかったので文献値を採用:図3参照 |
11 | 0.1 | - | :乾燥機を使う割合 | (変更無) | データ数が足らないため変更無し |
23 | 1,500 | 円/枚 | :オムツカバーの値段 | 1000円/枚 | LCAへの影響は小さいが、コストへの影響が大きい |
24 | 28 | L/回 | :洗濯前の予備洗浄の水量 | 1L/枚 | データと共に、計算式も変更 |
32 | 50 | 枚 | :布オムツ枚数 | (変更無) | 調査値とほぼ同じ値であるため |
39 | 15 | 枚 | :オムツカバー枚数 | (変更無) | 調査値とほぼ同じ値であるため |
41 | 200 | 円/枚 | :布オムツ値段 | 100円/枚 | 大幅ダウン |
48 | 10 | 円/回 | :洗剤費用 | 7.3円/回 | 調査値 |
52 | 4 | 円/枚 | :オムツライナー値段 | (変更無) | |
53 | 0.3 | - | :オムツライナー使用割合(未使用、再使用を考慮) | 0.5 | 調査値 |
- | :紙オムツを消費者が買うときに消費するガソリン消費量 | 3cc/枚 | 今回追加 | ||
- | :ガソリン価格 | 100円/L | 今回追加 |
データの再検討で特に注目したのがオムツの交換回数です。文献でも値がかなりばらついていたのですが、検討していくうちに、紙オムツについては経年変化があるらしいことが分かってきました。図2に紙オムツの使用枚数の変化を西暦でプロットしたものを示します。1990年当時の紙オムツは一枚あたり20円〜61円だったそうですから、今よりちょと高かったことが寄与しているんでしょうか?
図2 23ヶ月までの紙オムツの使用量平均の経年変化(4つの文献から推測)
布オムツは、一枚重ねの人は交換回数が多く、二枚重ねの人は交換回数が少ない傾向にあります。交換回数ではなく、交換した枚数で計算しないといけないことになります。今回の調査で、交換した枚数の平均値をプロットしたのが下の図3です。紙オムツのように月齢に強く依存しない傾向はありますがデータ数も少ないのではっきりとしたことは言えません。ただ、経年変動や月齢変動が小さいことが期待できるため、文献データをそのまま使ってよいのではないかとの感触を得ました。
図3 布オムツの月齢別の使用枚数(調査結果から)
以上の変更を加えてLCAを再計算したものを図4に示します。暫定結果の図1と比較していただければ、結果が逆転しているように見えるかもしれません。ただ、前回も申し上げたように、この程度の差しかない場合は、どちらにしても誤差範囲内と考えられ、「紙オムツと布オムツの環境負荷はどちらが良いとははっきりいえない」というのがLCAの結論となりそうです。
また、布オムツについては、
紙オムツについては、
などの検討結果も得られました。また蛇足ですが、環境負荷の重み付けの違いは紙オムツ/布オムツのインパクト総合計比にはあまり影響しませんでした(淡水消費を除けば、インベントリの段階で各環境負荷項目間に比較的つよい相関があるため:容器間比較のケースと同じ)。
図4 紙オムツと布オムツのLCA比較結果 (23ヶ月までの合計)
(数字が多いほうが環境に悪い:単位=日本全体の一年間の環境負荷)
ちなみに費用(LCC)も算出しなおしました。図5に布オムツと紙オムツのコスト比較をした結果を示します。暫定結果よりも布オムツで約2万円減少し、紙オムツで約2万円増加しています。紙オムツが布オムツの倍もあるというのはすごいですが、オムツやオムツカバーをリサイクルするならば、その差はさらに広がります(リサイクルの効果は環境負荷よりもコストに大きく影響)。
図5 布オムツと紙オムツのライフサイクルコスト比較(23ヶ月までの合計:単位=円)
以上