LCA手法による容器間比較報告書<改訂版>
の概要(報告書抜粋)

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1 発足の趣旨(略)

2 改訂版を発行するにあたって
「LCA手法による容器間比較」というあえて火中の栗を拾うような報告書を2000年5月に600部出版した。しかし、現在でも本報告書の入手希望者が多いため、再版することにした。これを機会に、新たなデータの入手、様々な意見、批判等をもとに再検討し、データやシナリオの見直しを行い、より納得のいくように改定した。したがって、初版とは多少異なった結果となった部分もある。
主要な変更点は、廃棄シナリオの変更、リサイクル率を回収率から再資源化率に変更、スチール缶に3ピース缶の追加、紙容器の海外における板紙製造のシナリオの変更、等である。関連団体から公表されているリサイクル率は、業界によって考え方が異なっており、実際に原材料として製品製造に投入された率ではない。今回の容器to 容器およびカスケードへのリサイクル率は製品製造に直接投入された原料使用量で算出した。また一般的に販売されている500mlのスチール缶は3ピース缶がほとんどであり、2ピース缶は、全くないわけではないが、あまり普及していない。したがって今回は実状に合わせた500mlの3ピース缶を取り入れ、実際にはあまり販売されていない2ピース缶も残しておくこととした。紙容器に使用されている板紙はすべて海外で生産されたものであり、実状に合わせて板紙は海外製造とするシナリオとした。
 データおよびシナリオは生き物である。今後、本報告書のさらなるバージョンアップも視野に入れて、再々版も行いたいと考えている。今回の結果に対して、前回に増す外部からの幅広い批判、意見、最新のデータ提供等を歓迎する。この報告書を出版することで活発な議論がなされることも目的の一つである。尚、 容器間比較研究会は、個人として参加したメンバーで構成されており、内容はそのメンバーだけで検討して得た結果である。
 前報告書ではインベントリー分析結果をもとに、安井の時間消費法によるインパクト分析結果を示したが、その結果は容器間比較研究会メンバーの主観的な意志決定が多分に入っているものであることを改めて強調しておきたい。したがって安井の方法によるインパクト結果だけではなく、今回は他のインパクト手法も検討し、それらの結果との比較も行った。ただし他のインパクト手法も多分に主観的であり、客観的な方法はないことを認識しておいてもらいたい。 
本報告書を読んだ方からの多数のご意見、ご批判を歓迎する。

3 実施主体と構成員
実施主体:容器間比較研究会
研究会メンバー:

構成員 氏名 所属
安井  至 東京大学生産技術研究所 教授
伊藤 健司 科学技術振興事業団CREST研究チーム
大川 隆司 東洋ガラス株式会社
駒谷  進 キリンビール株式会社
坂村 博康 元東京大学生産技術研究所 助手
知久  清 東洋ガラス株式会社
中澤 克仁 東海大学工学研究科
中村 秀次 生活クラブ連合会
西ヶ谷 信雄 元全国都市清掃会議
吉田  陽 宝酒造株式会社
事務局: 東京大学生産技術研究所 安井研究室
(◎は研究会リーダー、その他50音順、敬称略)

4 容器間比較研究会の目的
 本研究会の目的は、これまで公開されてきた既存のデータを主に使用し、不足データはヒアリング等で補いながら、LCA手法により素材毎に異なる各容器間のライフサイクルにおいて発生する環境負荷をできるだけ公平な立場で比較検討することである。また、インベントリー分析の結果を用いて、容器に対するインパクト評価を試みることも目的の一部としている。

5 対象製品と機能、機能単位
 対象製品は、ペットボトル、ワンウェイびん、リターナブルびん、アルミ缶、スチール缶、紙容器である。機能は、飲料容器の中味保持のみであり、保存状態や保持時間等は考慮しなかった。内容物は非炭酸飲料(清涼飲料)で統一し、中味自体の評価は行っていない。機能単位は「容器1回当たり同一容量」とするため、実際に販売している容量の内、対象とした全容器で取り扱われている500ml容器を機能単位とした。以下の表5-1に、本報告書で対象とした飲料容器の本体及び付属品とその重量を示した。

6 前提条件
6-1 対象範囲(システム境界)
 対象範囲(システム境界)はできるだけ公平性を保つため、広く取るように心掛けた。全ての容器に対して、資源採取、素材製造、容器製造、充填、流通、リサイクル(処理施設への輸送・二次材料・再生材製造等)、廃棄(焼却・破砕・埋立処理等)までとした(図6-1-1参照:実線内は容器製造工程・輸送に係わる範囲、二重実線内は機能単位が含まれている部分、破線内は容器廃棄工程・輸送に係わる範囲)。資源採取ステージ及び素材製造ステージでは、海外も対象範囲とした。付属品等の製造・加工、発電、上水供給、下水処理、廃棄物処理も対象とした。
 中味充填および販売時点における什器に係わる環境負荷(自動販売機・販売店での冷蔵ケース等の販売に伴う環境負荷)は対象外とした。カスケードリサイクルは回収・再生材製造までを対象とし、その後の他製品への製造工程は含まれていない。

6-2 シナリオの設定
 シナリオ設定において、将来的にはガラスびん用のカレット使用率及びアルミ缶用の二次地金使用率が向上すると考え、それらが向上した場合(市中カレット使用率70%、アルミ二次地金使用率80.85%)の環境負荷予測を行い、未来型として示した。尚、スチール缶と紙容器については、将来とも"容器 to 容器"は行われないと考え、未来型は考慮しなかった。また、現時点では"容器to容器"のデータが全くないペットボトルについても未来型は考慮しなかった(容器to容器:製造された容器が廃棄された後、再度同じ容器用の再生材として製造して利用するリサイクル、カスケード:製造された容器が廃棄された後、同じ容器以外の別用途の再生材として製造して利用するリサイクル)。
リターナブルガラスびんでは、5回使用(回収率80%)と20回使用(回収率95%)のシナリオについて分析した。紙容器のCO2排出量は、バイオマス(黒液)を入れるか、入れないかで意見の分かれるところであり、本報告書ではバイオマスと化石燃料を合算したシナリオと、化石燃料のみのシナリオの両方を分析した。スチール缶は、実際に販売されている3ピース缶と、試作品等で出されている2ピース缶について分析した。製造及び廃棄シナリオの主な設定条件を以下の表6-2-1に記した(場内カレット:容器製造工場内で発生するカレット、市中カレット:容器製造工場外で使用後に回収されたカレット)。

6-3 エネルギー種類別排出及び輸送発生原単位(略)

7 インベントリーデータ分析
 これまでに発表された飲料容器のLCA関連資料を基にして、不足データ部分が生じた場合は、その度に文献やヒアリング等で調査し、必ず充足した形で補充して抜け落ちがないように努めた。輸送に関しては、各容器・素材の輸送条件の違いによる格差が出ないように、トラック輸送は9割積載・片道100km往復輸送、船輸送は9割5分積載・往復輸送に条件を統一した。また、容器に付属するキャップ、パッキン、ラベル、塗料、インキ、ラミネート等はインベントリー対象とした。

7-1 対象とした環境負荷項目
 インプット項目:各種エネルギー(電力・C重油・軽油等)、各種資源、用水
 アウトプット項目:大気系排出物質(CO2、SOx 、NOx)、水質系排出物質(BOD、COD、SS)、廃棄物(固形廃棄物、液体廃棄物)
 その他、各容器の使用後、リサイクル及び廃棄処理工程から排出される固形廃棄物を最終処分場に埋立処理した場合を想定し、その埋立重量と体積を算出した(重量-体積換算係数は、7-2(7)で扱われている数値を引用した)。また、使用済み容器から再度製造される二次材料や再生材量も示した。

7-2 引用した資料及びヒアリング調査(略)
7-3 各種飲料容器のインベントリー範囲(略)
7-4 インベントリー分析結果のまとめ(略)

8 各容器(500ml)におけるインベントリーデータ集(略)

付録1 第一版からの追加および変更(P41〜P43:略)

付録2 リターナブルびん回収率及び製品の流通距離が環境負荷量に与える影響(P47〜P54:略)

付録3 容器間比較に関するインパクト評価(ライフサイクル影響評価)の試み(P57〜P69)

 図6の結果をまとめると、
(i) 環境負荷の統合値は、ワンウェイびん、ペットボトル、スチール缶、アルミ缶が大きく、
(ii) リターナブルびん、紙容器が少ない。
(iii) また、いずれの容器の場合も、未来型の環境負荷が小さくなり、
(iv) ガラスびんはリターナブル回数が増えるほど環境負荷が小さくなることがわかる。
(中略)
容器間の統合値の順位が逆転している場合もあるが、一般にLCAにふくまれる曖昧さから判断するとこの程度の違いは許容範囲であり、それを踏まえれば図6が全てのLCIAの結果を代表するとしても問題ないと考える。
(中略)
 「時間消費法」によるLCIA重み付け係数の算出のためにはまだいくつかの課題を解決する必要があり今後も検討が必要である(例えば環境負荷の閾値の概念の組み込み等)が、LCIAの重み付け係数の違いが容器間比較の結果にあまり影響しないことが示せたことは非常に重要であると考える。
(後略)

付録4 インベントリー範囲 データ収集と前提条件の詳細(P73〜P228:略)

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