自慢できない茶室(でも満足している)

茶道と茶碗の勉強で師事している先生から、「茶室を持ちなさい。入れ物ができ れば、道具は自ずから集まってくる。強く願うは叶うの道理」といつもいわれていましたが、正直なところ自分が茶室を持てるなどとは、ほんの数カ月前まで は、思いもよらないことでした。しかし、家の改修をしなければならないはめになり、その検討の中で、場合によっては茶室としても使える空間を確保すること が可能になるかも知れないとの希望が見えてきて、急に空想が現実味を帯びることとなり、自分でもびっくりしているところです。

茶室の設計には、京都、鎌倉、都内など、できる限り多くの茶室を見て回り、いくつかの茶室の 本を参考にしましたが、一番詳細なところまで記述してあるのは、今日庵営繕部長根岸照彦氏の、「自慢できる茶室をつくる為に」(淡交社)でした。特に裏千 家の茶道を学んでいるものとしての流派の決まりに関しては、安心して参考にすることが出来ました。その他に、中村昌生先生の「古典に学ぶ茶室の設計」(建 築設計)、建築知識別冊「和風デザイン図鑑」(建築知識)を参考にしました。そして最も身近な模範としたのは、茶道の先生宅の又隠写しの茶室です。

残念ながら、自慢できるような茶室は出来ませんでしたが、昔から原子炉の燃料の設計で養った 設計の感覚を応用することにより、与えられた条件下で、最大限の能力を発揮できるものを設計するという点で、現在の資力、既存の家屋との取り合い、茶室と してだけでなくその他の利用も勘案した空間を形成するという点で、自分なりに満足できるものが出来たのではないかと思います。

そこで、今回の私が与えられた条件で、どのように空間を設計してきたか、またその中に材料な ど、どのように自分の構想を加えて行ったか、そして最大の課題である費用をどのようにして押さえたかを紹介することにより、茶室を持ちたいが、なかなか踏 ん切りがつかないと考えられている方の参考になればと思い、舞台裏まで含めてここに紹介したいと思います。

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