茶室を独立させた一棟として建設できなかった為、最大の条件は現有の家屋との 接続でした。この為、まず床、天井、屋根などのインターフェイスが決まり、また防犯、暖冷房の観点からも、かなり従来建築の要素を取り入れなければなりま せんでした。これらの条件を加味して、六畳分の面積で四畳半の茶室と一畳半の水屋と決めました。この水屋 は、現有の五畳の和室に繋がるので小さくても十分対処でき、また隣の和室から露地に出る設計も可能となりました。水屋は茶室とフスマで仕切り、必要な場合 には六畳間としても使えるようにしています。風炉先には窓が欲しいのですが、道具の収納場所として物入れをつくり、水屋の前には床下収納庫を設置してあり ます。
そのうえ雨の場合には、露地を横目に、濡縁を通って貴人口から入ることもできるように工夫 し、貴人口はアルミサッシの障子付きガラス戸、躙り口はその上の連子窓を含めて、シャッターで防犯、防寒対策が万全となりました。
しばらく使用してみて、この配置がとくに気に入ったのは、図らずも曲がり屋の形式をとったと いうことです。茶室から見ると寄付待合が斜前に見え、雨の日に中立を待合でお願いしてもドラで知らせることができ、また茶事以外でもお互いに身近に感じら れる位置にあるため、一つのまとまった間取りとして使用できます。昔東北地方で馬を飼っていたころ曲がり屋を使用したというのが実感として分かりました。
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