【大空港】 製作年 1969年、米 監督 ジョージ・シートン 出演 バート・ランカスター → 大列車作戦 カサンドラ・クロス ディーン・マーチン ジョージ・ケネディ |
【あらすじ】 米中西部のリンカーン国際空港は30年来の大吹雪に見舞われていたが、主要滑走路の誘導路で旅客機が積雪に足を取られ身動きできなくなった。空港長のベーカースフェルド(バート・ランカスター)は、整備主任のパトローニ(ジョージ・ケネディ)にその処理を依頼した。ベーカースフェルドの義弟でパイロットのデマレスト(ディーン・マーチン)は、今夜出発するローマ便の機長だったが主任スチュワーデスのグェンとは不倫中で妊娠したことを告白されていた。 空港関係者の努力で別の滑走路から飛び立ったローマ便は順調に飛行していたが、緊急無線でアタッシュケースに爆弾を忍ばせて自殺しようとしている乗客がいることを知らされる。その乗客の隣には不法搭乗常習者の老婦人が座っていたのでコックピットに呼び出して協力を願い出た。席に戻った老婦人の演技で爆弾が入ったアタッシュケースを取り上げようとしたが事情を知らない乗客が邪魔をしたため、アタッシュケースを取り戻した犯人は説得にも応ぜず化粧室に逃げ込み爆発させてしまった。そばにいたグェンは重傷を負い、穴が開いた旅客機は急降下するが体勢を立て直しリンカーン空港へ引き返すことにした。 地上ではパトローニたちが旅客機を移動させようと懸命に働いていたが、ベーカースフェルドは緊急着陸に間に合わないときのために除雪車で旅客機を押し出そうと待機させていた。しかし、パトローニはエンジンを壊れる寸前まで噴かして脱出に成功させた。間髪を入れずローマ便が滑走路に滑り込んできてオーバーランしたものの無事に停止させることができた。 |
【解説】 アーサー・ヘイリーの原作本は全米で400万部も売れたベストセラーで、低予算全盛のニューシネマの時代にオールスターキャストで大予算をつぎ込んだ本作品も1970年度全米興行成績で1位となり心配していた映画会社の重役をほっとさせている。 パトローニ役のジョージ・ケネディは、シリーズ化された以後の作品「エアポート’75」(74年)、「エアポート’77/バミューダからの脱出」(77年)、「エアポート’80」にも職種は異なるが同じ役名で出演している。また、裸の銃を持つ男シリーズでもレスリー・ニールセン演ずる迷警部にも見劣りしない迷署長を演じている。 世界初の実用ジェット旅客機はモスキート爆撃機を生んだデ・ハビランド社のコメットで、1952年に華々しくデビューしジェットライナー時代の幕開けを告げた。しかし、その後の2年間に3機が墜落事故を起こしたため、全機の運行が停止され大がかりな事故究明が行われた。その結果、金属疲労が原因であることが分かり、大幅な改良を施したコメット4型を新たに売り出したものの、本作品の主役であるより大型で経済性の高いボーイング707(以下B707)が登場したため影が薄くなってしまった。コメットはその名の通り彗星のように登場し消え去ってしまったがジェット機の安全性に大きな教訓を残した意義は大きい。旅客機としては短命だったがこの機体を元に開発された英空軍の対潜哨戒機ニムロッドは現在でも使われている。 長年のライバルだったマクダネル・ダグラス社を吸収合併し世界最大の航空機メーカーとなったボーイング社は、大戦中に大量生産したレシプロ爆撃機や輸送機の経験を生かして「空飛ぶホテル」と呼ばれたキャビンが2層式のストラトクルーザーを世に送り出していたが、ジェット旅客機への取り組みは遅れていた。しかし、戦略空軍から給油機の大量発注があった給油機KC−135ストラトタンカーを民間機に転用することにし、B707として売り出した。また、この機体からは、電子偵察機”コブラボール”、空中警戒管制機”AWACS”、1990年まで使われたエアフォース・ワン(大統領専用機)など様々な軍用機のバリエーションが誕生した。B707は飛行時間をレシプロ機よりもほぼ半分の時間に短縮し、乗客も倍乗せられるので輸送効率は4倍となり、同じ時期に売り出されたライバルのダグラスDC−8と共に多くの航空会社が長距離路線に採用し、航空大量輸送時代の幕開けを演出することになった。 これら第1世代と呼ばれる旅客機の欠点は、本作品にも出てくるように地響きのような騒音を発することだったが、騒音が少なく燃費がいいターボファン・エンジンに換装することによって解決された。日本の航空会社がB707ではなくDC−8の方を採用したため日本ではなじみが薄い旅客機だが、見送られたのはまだ太平洋戦争からそれほど経っておらずB−29の空襲に対するボーイングへの国民感情がよくなかったためだと言われている。 |