【大列車作戦】
製作年 1964年、米
監督  ジョン・フランケンハイマー → グランプリ
出演  バート・ランカスター → カサンドラ・クロス 大空港
     ポール・スコフィールド ジャンヌ・モロー
【あらすじ】
 第二次大戦末期、連合軍がパリまで侵攻しようとしているさなか、ドイツ軍の一部隊がジュー・ド・パーム美術館にある印象派の絵画を持ち出そうとしていた。指揮している芸術至上主義者のバルドハイム大佐(ポール・スコフィールド)は、絵画をドイツに送って売りさばき、戦費に充てようと企んでいた。美術館の女館長から、持ち出しの阻止を懇願されたラビッシュ(バート・ランカスター)らフランス国鉄のレジスタンスは、多大な犠牲を強いられるので最初断るが、結局引き受けることにする。ベテラン機関士のブル親父が美術品列車を運転する事になるが、妨害工作がばれ銃殺される。代わりに操車場主任のラビッシュが運転することになるが、通過する各駅と示し合わせて、列車をドイツに向かっている振りをさせながら、パリの周りをグルグル回らせ、元の駅に舞い戻させる。わざと脱線させた機関車に美術品列車をぶつけ、後部からも機関車を衝突させて立往生させるが、関係した鉄道員の多くが報復のため処刑された。
 次第に連合軍が近づいてきたので、誤爆をさけるためラビッシュらは敵を攪乱して美術品列車の屋根に白ペンキを塗るが、ラビッシュを除く全員が殺されてしまう。一人になってもあきらめないラビッシュは線路の爆破を企てるが、機関車に人質が乗せられているため思うように阻止できない。それでも、線路の留め金を外してようやく機関車を脱線させる。ラビッシュは、一人だけあきらめきれずに列車にいたバルドハイム大佐を射殺するが、犠牲の多かった作戦に暗然とするのであった。
【解説】
 原題が”ザ・トレイン”というだけあり鉄道が主役の映画である。実話がもとになっており、冒頭の美術館のシーンで登場する印象派の絵画には、本物も使用されているそうだ。フランス国鉄(SNCF)とフランス軍の全面協力により、機関車の衝突や脱線もすべて本物の機関車が使用されているが、この頃フランス国鉄も無煙化の時期を迎えていたため、余剰となった古い機関車を惜しげもなくお釈迦にしている。装甲機関車も登場するが、さすがにこの時期まで本物は残っておらず映画用に既存の機関車に装甲を張ってそれらしく見せている。
 監督のジョン・フランケンハイマーはテレビ畑の出身だが、バート・ランカスター主演の「明日なき十代」(61年)でみとめられた。硬派な男気を感じさせる映画が多く、”タフガイ”ランカスターとはこの映画を含め4度コンビを組んでいる。80年代以降、低迷していたが「RONIN」(99年)で久々のヒットを飛ばしたものの、2002年7月6日に惜しくも亡くなっている。
 主演のバート・ランカスターは、”ばら戦争”で有名なイギリス王朝ランカスター家の血筋を引きながら俳優になる前、サーカスの空中ブランコ乗りをやっていた変わり種で、有名なリング・リング・サーカスにも在籍していたことがあるそうだ。経験を生かした「空中ブランコ」(56年)なる作品もあるが、この映画でも優れた運動能力を発揮し、機関車へ飛び乗ったりなどのスタントも自分自身で演じており、とても50歳をすぎているようには見えない。バルドハイム大佐役のポール・スコフィールドは、イギリスの舞台を中心に活躍していた俳優で映画出演は多くないが、その少ない出演作の「我が命つきるとも」(66年)では信念を貫きヘンリー8世に処刑された人文主義者のトマス・モア役で、みごとアカデミー主演男優賞を受賞している。

【フランスの鉄道】
 1837年にパリ〜サンジェルマン・アン・レイ間20qを蒸気機関車が走ったのがフランス初の鉄道と言われている。黎明期のフランスではボイラーの後ろに動輪を持ってきた「クランプトン型」の機関車がよく使われたので”汽車に乗る”ことを”クランプトンに乗る”と言っていたくらいである。その後もシリンダーが4つ付いた複式機関車(日本の蒸気機関車はほとんど2つ)など、鉄道発祥国のイギリスでは根付かなかった扱いの難しい技術をあえて採用するなどこだわりを見せていたが、それが後に大きく花開くことになる。
 1981年、フランス国鉄(SNCF)により時速260qの速度でTGVの営業運転が開始されて、長年日本の新幹線に奪われていた高速世界一の座をヨーロッパに取り戻した。その後もTGVの種類は増えて、二階建てのTGV-Duplexやユーロスター、タリスといった新型列車が登場している。路線網も拡大し現在は国境を越えてイギリス、オランダ、ドイツ、イタリアにまで広がっている。