【カットスロート・アイランド】
製作年 1995年、米
監督  レニー・ハーレン → ダイハード2
出演  ジーナ・デイビス → テルマ&ルイーズ
     マシュー・モディン フランク・ランジェラ
【あらすじ】
 女海賊のモーガン・アダムス(ジーナ・デイビス)は、伯父のドーグ(フランク・ランジェラ)に襲われた父親を救出するが、父親は頭皮に入れ墨した地図をモーガンに託して息絶える。地図はラテン語で書かれていたため、港で奴隷として売られていたショウ(マシュー・モディン)を買い取り翻訳させた。地図は、モーガンの祖父がカットスロート・アイランドという島に隠した宝の場所を示していたが、3つそろえないと特定できない代物だった。もう1つの地図を持つ伯父のモデカイと組むため赴くが、ドーグ一味に襲われる。ショウの機転で何とか逃れるが、モーガンは撃たれてしまう。ショウが手術して助けるが、モデカイの地図を隠し持っていたので船底に閉じこめられる。嵐が襲ってくるが、そんな折り手下のスカリーが裏切り、モーガンと忠実な部下はボートに下ろされてしまう。一夜明けると、目の前にカットスロート・アイランドが現れるが、ドーグとスカリーも到着していた。船底から抜け出したショウも島にたどり着き、ドーグから地図を盗むが流砂に捕まり、モーガンに助けられる。3つそろった地図で宝の在処を突き止めたのもつかの間、ドーグに横取りされてしまう。
 ドーグはジャマイカのポートロイヤル港総督とも手を結んでおり、宝を船に積み込むと出航した。モーガンは自分の船に忍び込み、捕らわれていた部下を救出するとスカリーたち反乱者を海に投げ込んだ。モーガンの船とドーグの船との間で激しい砲撃の応酬が始まるが、モーガンはドーグをうち破り、宝も取り返すと部下たちに平等に分配した。
【解説】
 かつてダグラス・フェアバンクスやエロール・フリンなどの剣劇俳優が活躍するパイレーツ・ムービーなるジャンルがあったが、70年代以降はめったに製作されなくなった。
 監督のレニー・ハーレンと主演のジーナ・デービスは93年に結婚し、次作の「ロング・キス・グッドナイト」(96年)でも共作したが、98年に離婚している。港のシーンは中世の面影が残るマルタ島で撮影されたが、船の航行シーンは、奇景で知られるタイのプーケット島で撮影された。ここは、レオナルド・デカプリオ主演の「ザ・ビーチ」(2000年)や「007/黄金銃を持つ男」(94年)にも登場している。
 一般に海賊と言った場合、多くの人がイメージするのは本作品にも登場するパイレーツと呼ばれる”カリブの海賊”だと思うが、ジョリー・ロジャーと呼ばれる黒地に骸骨が描かれた旗を掲げてカリブ海を暴れ廻っていたのは18世紀の最初の30年間である。それまでにも、スペインの財宝船団を襲う英仏蘭の海賊がいたが、多くは私掠船免状を持った公的な海上略奪者だった。無敵艦隊を撃破しナイト位に叙されたキャプテン・ドレークやホーキンズといった提督たちも元はこのような海賊だった。英仏蘭西の講和が成立すると一転、海賊行為は取り締まりの対象となった。しかし、儲けの多い海賊稼業はすぐには止められないのか減ることはなかった。
 海賊になるのは、強制徴募によって軍艦に乗せられた水兵や商船で酷使されていた水夫が大半で、彼らが船を襲ったときには真っ先に船長など上級職の者に憎悪が向けられた。また、アフリカからの奴隷船から逃れた黒人も海賊の仲間に加わることがあったが、肌の色で差別されることはなかった。海賊の船長は全員参加の海賊会議で選出されたので、横暴な船長とかは解任されることもあった。略奪品はほぼ平等に分けられたが、一部は老後や負傷した場合のために積み立てられた。封建制度が根強い時代に民主的で平等な社会を形成していたためか、荒くれ男の集団にもかかわらずこれまでに多くの文学や映画で取り上げられ子供にまで人気があるのはこの辺の実相にあると思われる。
 海賊船としてよく使われたのは、3本マストのガリオン船よりも快速が出せる三角帆のスループ船の方で、喫水も浅いため軍艦などに追われた場合、浅瀬に逃げ込むこともできた。本作品にも登場するジャマイカのポートロイヤル港は、”海賊のバビロン”と呼ばれるほど多くの海賊が基地にし彼らを目当てに売春宿、居酒屋、賭博場が軒を連ねていたが、1692年の大地震で壊滅したため、今度は旧約聖書に出てくる神に滅ぼされた悪徳の町ソドムにたとえられた。 
 本作品の主人公のような女海賊は実在し、特に有名だったのはアン・ポニーとメアリー・リードである。2人とも男勝りの性格で、捕らえられた時にも他の男どもが降伏したのに2人だけは最期まで抵抗した。裁判で絞首刑が宣告されたが、2人とも妊娠中だったので刑は執行されなかった。