【戦争プロフェッショナル】
製作年 1968年、英
監督  ジャック・カーディフ
出演  ロッド・テイラー ケネス・モア
【あらすじ】
 中央アフリカのコンゴでは、モーゼ将軍が率いる反乱軍に悩まされていた。ユビ大統領はアメリカ人のカリー大尉(ロッド・テイラー)を傭兵として雇い、奥地の町に取り残された住人と保管されているダイヤを救出するように要請する。カリーは腹心で原地出身のルッフォ軍曹や、アル中のリード軍医(ケネス・モア)、元ナチス将校のヘンラインが率いる総勢40人の兵士で、にわか仕立ての軍用列車を編成し、奥地の町に向かうことにした。途中、反乱軍と間違われて国連軍の空襲を受けたり、クレアという若い夫人を救出したりして、町までたどり着く。
 反乱軍が近づいているのですぐ出発したかったのに、ダイヤを入れた金庫にはタイム・ロックがかかっており3時間後でなければ開かないと言う。カリーは待つ間に、伝道所の人々に避難を勧告しに行くが、逆に難産の女性の治療のためリード軍医をおいていかなければならなくなった。
 ようやく金庫が開いた時、反乱軍が襲ってきて交戦が始まった。列車は出発できたものの、迫撃砲が連結器に命中して、ダイヤと大半の住人が乗っている最後尾の車両だけ反乱軍の待ちかまえる町に引き返してしまった。しかし、カリーらは夜になると、虐殺に酔いしれた反乱軍の隙をつき、ダイヤを奪取することに成功する。伝道所にも向かうが、リードらは無惨に殺されていた。
 帰路の途中、ダイヤに目がくらんだヘンラインは、管理していたルッフォを殺害するが、それを知ったカリーはヘンラインを追いつめ復讐する。
【解説】
 原作はウィルパー・スミスの「カタンガから来た列車」で、ベルギーから独立まもない頃のコンゴが舞台になっている。アフリカで高まりつつあったナショナリズム運動に押されるように、1960年にベルギーは急きょベルギー領コンゴの独立を決定したが、自立化への準備が整わず部族間の対立が続いた。そのうちカタンガ州の分離独立運動が激化し、いわゆる「コンゴ動乱」が勃発してしまった。国連安全保障理事会は国連軍の派遣をおこなったものの、カタンガ州はダイヤやコバルト、銅など鉱物資源に恵まれた地域だけに米、英、ベルギーの西側諸国とソ連ら東側諸国、隣国のローデシアなどが介入し、混乱はなかなか収まらなかった。当時の国連事務総長ハマーショルドは、調停に自らおもむくが乗機が墜落し亡くなっている。この航空機事故に関しては現在でも陰謀説が囁かれている。
 事態の収拾に躍起となった国連は、軍事行動に出て一応の沈静化を見ることが出来たが、国連軍が去ると再び内乱状態になり、最終的に軍事政権が樹立され、国名は「ザイール」に変更された。(現在は軍事政権が倒れ、国名もコンゴ民主共和国となっている)
 撮影は物情騒然なコンゴでは当然出来ないため、似たような風土のジャマイカでおこなわれた。使われた機関車はイギリス製で、ジャマイカ鉄道で60年近くも使われていた老兵である。
 監督のジャック・カーディフは撮影監督としての方が有名で、パウエル&プレスバーガーの名コンビ監督の元で撮影監督をした「黒水仙」(46年)、「赤い靴」(48年)では、テクニカラーでの卓越した映像表現が高い評価を受けている。当ホームページで紹介している「アフリカの女王」、「ナイル殺人事件」、「アバランチエクスプレス」では撮影監督として参加しているが、監督としてメガホンを取った映画も10本近くある。長年の功績を讃えられ、2000年度には撮影監督出身者として初のアカデミー名誉賞を送られている。
主演のロッド・テイラーはオーストラリア出身で、他の出演作には「タイムマシン/80万年後の世界へ」(59年、ジョージ・パル監督)や「鳥」(63年、ヒッチコック監督)などがある。
 この映画に登場する軍用列車は無蓋車に土嚢を積んだ簡単なものだが、道路が未発達なアフリカでは鉄道が生命線であるため、第二次大戦後も装甲列車が活躍し、路線の保安をおこなっていた。
 コンゴの鉄道開業は1909年だが、現在の路線の総延長は4800q余に達しており、営業キロ数はアフリカでは南アフリカに次いで第2位である。軌間は日本と同じ1067oが大半を占めている。これはコンゴの南部からアフリカ最南端までマイル台地という標高1000m〜1500mほどの台地が続いており、ヨーロッパで主流の標準軌(1435o)だと、港のある平地から勾配の厳しい台地上までの路線を引くのが困難なためである。軌間が同じということもあり、日本からも機関車や客車などが輸出されている。