【大列車強盗】
製作年 1979年、米
監督  マイケル・クライトン
出演  ショーン・コネリー → オリエント急行殺人事件 レッドオクトーバーを追え
                    007/ゴールドフィンガー 
     ドナルド・サザーランド レスリー・アン・ダウン
【あらすじ】
 ロシアとの間でクリミア戦争を戦っているイギリスは、兵士の給料を金塊でまかなっていた。月に1度ロンドンからフォークストンまで汽車で運び、そこからフランスに船で送っていた。その金塊を入れた金庫には4つの鍵が付いており、銀行の総支配人と頭取が1個ずつ、残りの2個は鉄道会社が保管していた。イギリス中の犯罪者がねらっていたが、ピアース(ショーン・コネリー)もその一人だった。彼はスリと金庫破りのプロであるエイガー(ドナルド・サザーランド)と愛人で変装の名人ミリアム(レスリー・アン・ダウン)と共にまず4つの鍵の型を採ることにした。総支配人と頭取の鍵を色仕掛けと巧みな詐術で手に入れたが、駅事務所においてある2つの鍵は、常に警備員が見張っており、配置を離れるのは75秒だけだった。彼らは刑務所にいた小柄なウィリーを脱獄させると、ウィリーとエイガーの連携プレーでみごと2つの鍵の型を採ることに成功する。
 ピアースは貨車に同乗している警備員を大金で買収して、後は決行するだけだったが、ウィリーがスリで警察に捕まり計画を自白してしまう。そのため、輸送の警備が強化されるが、エイガーが棺桶に入って金庫と同じ貨車に潜入することに成功、ピアースは客車から屋根づたいに貨車まで行き、2人して金庫の金塊を盗み出すと、手下が待ち合わせている地点に金塊の袋を放り投げた。
 列車が駅に着くと何事もなかったようにピアースは改札を出ようとするが、警察に見つかり逮捕される。裁判で有罪を宣告されるが、ミリアムらの手助けで当局の手からまんまと逃げおおせた。
【解説】
 監督のマイケル・クライトンと言えば「ジュラシックパーク」(93年)やTVドラマ「ER 緊急救命室」などの原作者だから作家が本業であるが、映画製作にも意欲的で本作品のほかにも「ウエストワールド」(73年)、「未来警察」(85年)などで自作の監督をつとめている。クライトンはハーバード大学医学部に在籍中からミステリーを書き始め、卒業後に発表した未知の病原体の恐怖を描いた「アンドロメダ病原体」が世界的ベストセラーとなり映画化もされた。以後も幅広いジャンルの小説を執筆する一方、映画の製作にもたずさわる多才ぶりで、現在でも新作の小説は書き上げるそばから映画化の話が殺到する売れっ子である。社会派としての作品もあり、バブル期の日本企業のアメリカ進出を描いた「ライジング・サン」(93年)ではショーン・コネリーが、ハイテクやセクハラ、吸収合併などで揺れるアメリカ企業の実相を描いた「ディスクロージャー」(94年)ではドナルド・サザーランドが再び出演している。
 鉄道のシーンはアイルランドのアスローン〜ムリンガー間で撮影されている。客車に使われているのは貫通通路がない一つ一つのコンパートメントにドアが付いた古いタイプのものだが、ボギー客車になって車体が長くなっても馬車を数珠つなぎにしたような形式が20世紀になっても使われていた。また、イギリスの客車は当時の名残りで現在でもドアの内側に取っ手が付いていないものがあり、その場合窓を開けて外側の取っ手を回して降りなければならないのだが、海外からの乗客は当然まごつくので降りられずに次の駅まで乗り過ごしてしまうことがよくあるそうだ。
 鉄道を使ったアクション映画ではお約束とも言える列車の屋根の上でのスタントはショーン・コネリー自らが演じており、元ジェームズ・ボンド役者として面目躍如といったところである。

【イギリスの鉄道】 
 鉄道発祥国のイギリスは、世界に先駆けたばかりに損した部分がある。それは、機関車がまだ小振りな内に路線網が完成してしまい、機関車を大型化しようとしてもホームの角や橋桁にあたってしまうため出来なかったのである。そのためイギリスの機関車は標準軌でありながら、大きさは狭軌の日本の機関車とあまり変わらず、同じ標準軌のアメリカの機関車とは大人と子供ほども差がある。
 イギリス国鉄(BR)の成立は第二次世界大戦後の1952年と遅かったのだが、他の国と合わせるように1994年には分割民営化された。日本を含め民営化は順調な国が多いのだが、イギリスは複雑な分割方式をとったため、サービスの低下、事故の頻発、列車の運休や遅延といった問題が吹き出し、挙げ句のはてに線路保有会社のレールトラック社が破綻してしまい政府の管理下に置かれてしまった。イギリスでは多くの公共事業を民営化してきたが、こと国鉄の民営化に関してはうまくいっていないのが現状である。