【007/ゴールドフィンガー】
製作年 1964年、英
監督  ガイ・ハミルトン
出演  ショーン・コネリー → 大列車強盗 レッドオクトーバーを追え!
                   オリエント急行殺人事件
     ゲルト・フレーベ ハロルド坂田
【あらすじ】
 世界的実業家で金の収集家でもあるゴールドフィンガー(ゲルト・フレーベ)の不明瞭な密輸ルートを探るべく英諜報部員ジェームス・ボンド(ショーン・コネリー)は、ゴルフのパートナーとして近づき、隙を見てゴールドフィンガーの車に発信器を取り付け後を追う。車はスイスに向かうが、追跡するボンドを何者かが狙撃する。狙撃手はマイアミで全身金粉を塗られ窒息死したジルの妹で、ボンドではなくゴールドフィンガーを狙ったものだった。ボンドは秘密工場に潜入しようとするが、復讐に燃えるジルの妹と鉢合わせする。しかし、敵に見つかりジルの妹はゴールドフィンガーの手下のオッドジョブ(ハロルド坂田)に殺され、ボンドも捕まる。ボンドはゴールドフィンガーの大それた作戦の一端を知っていることを匂わせたため殺されるのを免れ、拘束されたままアメリカの秘密アジトまで連れていかれ監禁される。ゴールドフィンガーの目的は合衆国金貯蔵庫を核汚染させて金価格を操作しようとするものだった。ボンドは外部に連絡しようとするが失敗する。
 作戦が実行され、毒ガスが軽飛行機より撒かれ守備兵がバタバタと倒れる。救護兵を装ったゴールドフィンガー一味は巨大な金庫に核爆発装置をセットし、ボンドは装置に手錠で繋がれた。しかし、ボンドの魅力で一味を裏切ったガロワのおかげで兵士たちが駆けつけ銃撃戦となる。ボンドはオッドジョブと一騎打ちとなるが、機転を利かして倒し、駆けつけた上司が爆破装置を止めた。飛行機でワシントンに向かうボンドを乗務員を装ったゴールドフィンガーが襲うが、墓穴を掘り機外に吸い出されてしまう。
【解説】
 007シリーズの3作目で、前2作のアメリカでの興行成績があまり振るわなかったため、今回はアメリカを舞台にし、悪役に独日コンビを設定するなどアメリカの市場を意識したつくりになっている。本編とは関係ない冒頭のエピソードは今作品から始まったが、「トゥルーライズ」でも真似たオープニングになっている。
 初代ジェームス・ボンド役のショーン・コネリーはスコットランドの労働者階級の出身で、上流階級出身のボンドをコネリーが演じるのを原作者のイアン・フレミングは始めは好ましく思っていなかったが、原作のボンドにはなかった力強さと渋さが新しいボンド像に加わったこともありフレミングも満足したそうである。シリーズに6本出演した後、ボンドのイメージを払拭するため「風とライオン」(75年)、「ロビンとマリアン」(76年)、「薔薇の名前」(86年)など多数の作品に出演し、「アンタチャブル」(87年)では頑固なアイルランド系の警官を演じアカデミー助演男優賞を受賞した。老境に達した後も「ザ・ロック」(96年)「エントラップメント」(99年)などの話題作に出演し名優の名をほしいままにしている。
 シリーズ屈指の悪役ゴールドフィンガーを演じたゲルト・フレーベは、ドイツ出身で英語はしゃべれなかったため別人が吹き替えしている。ハロルド坂田は、ハワイ出身の日系レスラーで五輪の銀メダリストでもあった。
 前2作まではジェームズ・ボンドはベントレーに乗っていたが、レーダーやマシンガンなどの秘密兵器を満載した真のボンドカーと呼べる車は本作品のアストン・マーチンDB5からである。アストン・マーチン社は1913年に設立され、以来スポーツカーやレーシングカーを生産してきたがたびたび経営危機に陥っていた。1947年に企業家デビッド・ブラウンの支援を受けて立ち直り、以後の車名には彼のイニシャルDBが付けられるようになった。現在は米フォード社の傘下となっている。
 第5作で日本が舞台になった「007は二度死ぬ」(66年)には日本初の本格スポーツカー、トヨタ2000GTが登場している。第10作「007/私を愛したスパイ」(77年)からはロータス・エスプリがボンドカーとなり、水陸両用の機能や対空ミサイルまで装備するようになる。第15作「007/リビング・デイライツ」(87年)では再びアストン・マーチンのV8ボランテが起用され、DB5を彷彿とさせる数多くの秘密兵器を搭載していた。第17作「007/ゴールデンアイ」(95年)では、プライベートでアストン・マーチンDB5、公用にはBMW・Z3ロードスターと使い分けて乗っていたが特殊な装備はなかった。第18作「トゥモロー・ネバー・ダイ」(97年)では一転してリモコン機能や自動パンク修理機能などの特殊装置を装備したBMW750iLが登場しマニアを喜ばせている。第20作「ダイ・アナザ・デイ」(2002年)では再々度アストン・マーチンのV12ヴァンキッシュがボンドカーに返り咲いた。秘密兵器開発担当のQがボンドに新車を渡すとき「壊すなよ」と釘を刺すが、木っ端微塵にしてしまうのがいつものパターンである。