【カナディアンエキスプレス】
製作年 1990年、米
監督  ピーター・ハイアムズ
出演  ジーン・ハックマン → ポセイドン・アドベンチャー クリムゾン・タイド 
                   フレンチコネクション

     アン・アーチャー J・T・ウォルシュ
【あらすじ】
 キャロル(アン・アーチャー)は友人から勧められるままに、弁護士のターロー(J・T・ウォルシュ)とホテルのラウンジでブラインドデートすることになったが、彼はホテルの自室に戻ったところに訪れたマフィアの2人組に殺されてしまう。隣室にいたキャロルは彼らに気づかれなかったため無事だったが、男たちが去った後恐ろしくなりその場から逃げた。
 検事補のコールフィールド(ジーン・ハックマン)は指紋から現場にいたキャロルを割り出すが、すでにカナダの山中に身を隠していた。コールフィールドは仲間の刑事と共にヘリで向かい、山荘に到着するが、追跡してきたヘリから銃撃を受け仲間の刑事は死んでしまう。コールフィールドはキャロルを連れて車で脱出し、たまたま通りかかった大陸横断鉄道に飛び乗るが、追跡してきた殺し屋も乗り込んできた。コールフィールドは次の駅から電話して、救援の警察官を派遣するよう同僚の検事補に頼むが、マフィアに買収されていたらしく、やってきたのはニセ警官であやうく殺されそうになった。コールフィールドは女を渡すよう殺し屋から取引を持ちかけられるが、当然拒絶する。
 鉄道公安官の存在を知ったコールフィールドはキャロルを預けようとするが、鉄道公安官は何者かから殺されてしまう。逃げ場を失った2人は屋根に逃げるが、しつこく殺し屋が追ってきて格闘になるが、なんとか撃退できた。乗客になりすましていた女殺し屋が最後に2人に迫ったが、あっけなく自滅してしまい、キャロルは裁判所の証言台に無事に立つことが出来た。
【解説】
 この映画は1952年に製作された「その女を殺せ」(劇場未公開)のリメイクである。監督のピーター・ハイアムズはNASAを激怒させた「カプリコン・1」(78年)、難解な「2001年宇宙の旅」(68年)のわかりやすい完結編である「2010年」(84年)、ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演の「タイムコップ」(94年)などのSFを中心とした娯楽映画一筋の人で、この映画を含め撮影監督も自分でこなすなど職人気質の監督である。
 アン・アーチャーといえばハリソン・フォード主演の「パトリオットゲーム」(92年)、「今そこにある危機」(94年)の”ジャック・ライアンシリーズ”で演じたライアンの妻役が印象深いが、「危険な情事」(87年)でもマイケル・ダグラスの気丈な妻を好演していた。J・T・ウォルシュは、「グッドモーニング・ベトナム」(87年)で注目を集めてからは、名バイプレーヤーとして90年代の映画に頻繁に登場していたが、過労のためか1998年に45歳の若さで亡くなっている。
 カナダの鉄道は1836年、ラプレリー〜セントジョン間にロバート・スチーブンソン社の蒸気機関車が走ったのが始まりである。カナダの大陸横断鉄道であるカナディアン・パシフィック鉄道(CP)は、1885年にブリティッシュ・コロンビア州のクレイゲラシーで東西の線がつながり完成した。アメリカの横断鉄道と同様に中国から多数の労働者が建設に従事したため、太平洋側の起点であるバンクーバーには北米でも有数のチャイナタウンが形成された。現在はこのバンフ経由の路線と、カナダ国鉄(CN)のジャスパー経由の路線の2本が横断鉄道として存在している。アメリカに旅客鉄道会社としてアムトラックがあるように、カナダにもVIAと呼ばれる旅客鉄道企業体があり、カナダ唯一の大陸横断列車”ザ・カナディアン号”を運営しているのもこの会社である。雄大なカナディアン・ロッキーを越えていくこの列車は、人気が高くシーズンともなると予約も取れないほどである。バンクーバー〜トロントまでを3泊4日で結んでおり、編成は当然寝台車がメインだが、誰でも利用できる2階建ての展望車と最後部に連結されるラウンジ兼展望車、食堂車に荷物車、そしてコーチと呼ばれる座席車も連結していて格安で旅をする人や区間乗車する人にも配慮がなされている。トロントはまだ大陸内なのだが、他のVIAの列車を乗り継ぐことで東海岸のハリファックスまで行くことが出来るようになっている。
 この映画の主なロケ地であるカナディアン・ロッキーの中でも最も景観が優れているジャスパーとバンフは共に国立公園だが、バンクーバーからこの景勝地まで走っているのが”ロッキー・マウンテニア号”である。これはVIAではなくグレート・カナディアン・レイルツアー社という旅行会社が運営しているもので、途中の駅で乗客は列車を降りてホテルに1泊するようになっている。これは夜間帯に通過して景勝地を見逃すのをさけるためだが、かなり珍しいサービスである。