最近呑んだ吟醸酒について
2003年4−6月分
これからの話は消費者(飲み手)という立場で書いていきます。評論家や蔵元、酒屋の立場では見ていません。また、音楽とか味覚とかいう物は大変抽象的で表現が難しいのですが、平易に書きたいと思います。 よく、食べ物店の紹介記事で絶賛している物を食べると、首を傾げたくなる時が多々ありますし、テレビでリポーターが口に入れたとたん「うまい」と発言しているウソ等はここでは、しないように心がけています。
◆月に一度の例会とイレギラーで飲んだ吟醸酒について、ズバリ、どういう酒か皆様への判断基準を書きます。
A;味、B;香り、C;コストパフォーマンス、D;総合評価を、各5点評価(5;最上 4;良 3;まあまあ 2;まだまだ 1;評価外)で表します。 総合評価3−(マイナス)以下ではもう一度買うかと言えば、考えてしまうレベル。2ではタダで贈られても困ってしまうレベル。
私の独断と偏見なしで評価し、E;寸評も入れます。なお、会での評価も、判断基準の参考にしています。また、評価はこの日に飲んだ吟醸酒の味で、次回も酒の性格上、ロットや時間が変れば同じとは言切れませんが、傾向としては、間違ってはいないと思います。
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◇イイお酒を、イイ友と、イイ肴と、イイ会話で月1回楽しむ会です。◇
2003年6月28日(土)
1.英君酒造(静岡県由比町) 大吟醸 「英君 秘蔵滓(かす)酒」
原料米;山田錦、 精米歩合;40% 【アルコール分】16.5度 【日本酒度】+5 【酸度】1.4 【酵母】M310 1.8L \7,350(税込)
A;味5、B;香り4、C;コストパフォーマンス3+、D;総合評価4+
E寸評; 真っ白に白濁した吟醸酒です。もろみの成分が酒の中に溶け込んでいます。白濁した部分は米粒の一部ですので、甘く柔らかな味わいが有るものですが、今ひとつ滓酒にした意味合いが飲み手に伝わってきません。飲み始める時には”滓”はビン底に沈殿していました、上澄みのところと、攪拌して真っ白になった酒が同じ味で大差ないのです。で、あったら、もう少し無濾過の上澄みだけを瓶詰めしたら如何でしょうか。酒滓の旨みを酒の中に取り入れる工夫は無いものでしょうか、高級酒だけに一考を呈します。佳酒ではありますが、この値段にしたら深み、コクがいま一歩足りなく、光がない。
2.三和酒造(静岡県清水市) 大吟醸 「臥龍梅(がりゅうばい)」 無濾過原酒
原料米;山田錦、 精米歩合;40% 【アルコール分】18〜19度 【日本酒度】+5 【酸度】1.6 1.8L \5,250( 税込)
A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評; 「全国新酒鑑評会・金賞受賞酒」 。山田錦の旨さが存分に醸し出された佳酒です。このお酒を飲んで吟醸酒の原点を、見直すには最適な1本です。ここまでの出来の良いお酒は肴を選びます。通常な肴では負けてしまうでしょう。この様なお酒は、料理が終わって、デザートのアイスクリームかコーヒーを頂く時に替わりにこのお酒を一口頂きます。食後酒ですが、この旨さが今まで頂いた料理を完璧に仕上げるのです。この時の心持ちが至福な時というのでしょう。
3.廣木酒造本店(福島県会津坂下町) 吟醸 「飛露喜(ひろき)」 生詰
原料米;− 精米歩合;−% 【アルコール分】16〜17度 1.8L @2,880(税別)
A;味4+、B;香り4+、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評; 旨い酒です。口当たりはさらりとしていますが、コクも香りもバランスして必要充分です。料理の肴に邪魔にならず、肴に媚びず、肴を立てて酒本来の領域を自覚していながら、旨さを発散させています。晩酌酒にしては勿体ないくらい上質な佳酒です。
4.楯の川酒造(山形県平田町) 純米吟醸 「一雫入魂 楯野川 雄町」 2003
原料米;雄町、 精米歩合;50% 【使用酵母】山形酵母 【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+1 【酸度】1.5 1.8L \3,000(税 別)
A;味4+、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4
E寸評; 柔らかく甘ったるく丸い。今回のただ1本の純米酒です。純米酒の鈍重な欠点は無くアル添酒と互角に競っていますが、それでも純米酒のマイナスがどうしても比較されてしまいます。雄町の懐の深さとキレが見いだせません。
5.酒田酒造(山形県酒田市) 大吟醸 「上喜元 山田錦」 中取り
原料米;山田錦 精米歩合;40% 【アルコール分】16〜17度 1.8L @5,000 (税別)
A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価5
E寸評; 強い酸味が口中に残りますが、嫌な酸味ではなく、一夏過ぎには一皮むけた良い娘になるでしょう。味わいが深く、濃く、キレもあります。後からの含み香に上品さが伺えます。
2003年5月31日(土)
1.西田酒造店(青森県青森市) 特別本醸造 「喜久泉」 無濾過本生
原料米;華吹雪 精米歩合;60% 【アルコール分】15〜16度 1.8L 2,000円(税別)
A;味3+、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4
E寸評;”田酒”醸造元の蔵元から今回初めて出た弟分!
田酒はまだ呑んだ事はありません。ですから何とも言えませんが、弟分の本醸造君は所詮本醸造の域を脱していません。甘く柔らかくキレは良いのですが、渋味が有っていつまでも口中に残ります。料理にはどれでも来いの万能選手です。”喜久泉”の吟醸タイプが出ていますが、そちらに期待しましょう。
2.天法酒造(長野県戸倉町) 大吟醸 「天法」
原料米;山田錦 精米歩合;38% 【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+4〜5 【使用酵母】アルプス酵母 【酸度】1.4 1.8L 5,000 円(税別)
A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評; 新酒 です、山田錦のよそよそしさがありません。ガツガツと迫ってこず、柔らかく、ふんわりと飲み手を包んでくれます。何の心配無しに付き合えますが、気が付くと相当深い付き合いになっています。構えず心優しく付き合ってくれる数少ない佳酒です。口福の頂点に居ます。
3.初亀醸造(静岡県岡部町) 純米吟醸原酒 「初亀」 別誂え
原料米;山田錦 精米歩合;50% 【アルコール分】17〜18度 【日本酒度】+1 【酸度】1.3 【使用酵母】協会9号 1.8L 5,000 円(税込)
A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評; 優しさよりも自己を主張しています。青リンゴのように爽やかな味わいと適度な香り付けがされバランスしています。純米の欠点である鈍重さと香りの弱さが見あたりません。純米でここまで仕上がった吟醸酒は数少ないでしょう。一時を夢の中に誘ってくれる佳酒です。口福の頂点に居ます。
4.墨廼江酒造(宮城県石巻市) 大吟醸 「吟星四十 墨廼江」
原料米;吟の精(秋田県産酒造好適米) 精米歩合;40% 【アルコール分】16〜17度 【使用酵母】宮城酵母 1.8L 3,865 円(税込)
A;味5、B;香り4+、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評; 美味いですね。香りは邪魔にならない程度ですがしっかりと主張しています。味は雑味もなく丸くバランスし、キレも良いです。呑むほどに米の旨みが伝わってきます。純米だから、アル添だからという問題ではなく、しっかりと造られた吟醸酒は素晴らしい。
5.瀧自慢酒造(三重県名張市) 純米吟醸 「瀧自慢」 酒米全量手洗い
原料米;麹米・山田錦(20%)、掛米・美山錦(80%) 精米歩合;各50% 【アルコール分】16〜17度 【使用酵母】蔵内自家酵母 1.8L 3,150 円(税込)
A;味5、B;香り4、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評; 瀧自慢で振られたのは年寄りだけです。今年の生娘は案の定、あか抜けて化粧なくても充分綺麗です。”酒米全量手洗い”と表示されていますが、それがどの様に大変なのか、どこに成果が出ているのか、よく分かりませんが、実に爽やか飲み手を飽きさせません。初対面(一口目)は良いのに、回を重ねるほど欠点が出てくるものは多いのですが、これは何時までも最初の印象を崩しません。
2003年4月26日(土)
1.浜福鶴銘醸(神戸市東灘区) 純米吟醸 「空蔵 山田錦 13BY」 無濾過本生
原料米;山田錦 精米歩合;60% 【アルコール分】17度 【日本酒度】+3 【酸度】1.3 1.8L @2,800 (税別)
A;味4+、B;香り4、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評;開栓した時は新酒のようなきつい酸味が口中を刺していた。”新酒?”と間違うほどやんちゃ娘ぶりを発揮していたので、絡まれるおそれがあるので手控えていたが、1時間ほどして、その酸味が取れておしとやかなお嬢さんに大変身してしまった。飲み手の顔を見られたのであろうか。1年物の古酒であるが大多数の酒と違って、落ち着いた旨さが伝わってきます。
13BYとは平成13年酒造年度のお酒と言う事。あらら、まだ解らないですよね、簡単に言うと1年前のお酒です。今飲んでる新酒は14BYです。15BYになるのは7月1日を過ぎて醸造されたお酒です。
2.浜福鶴銘醸(神戸市東灘区) 大吟醸にごり 「空蔵 山田錦」
原料米;山田錦 精米歩合;40% 【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+3 【酸度】1.3 1.8L @5,000 (税 別)
A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評; 空蔵のお酒にはいつも脱帽の限りですが、この酒はこの蔵の”フラグシップ”で(と思われる)、いまさら何を言えばいいのでしょうか。堂々とした風格、品性豊かな味わいと香り、どれを取ってもただただ至福の時に遊ぶのみ。
アル添された吟醸酒で、決して純米ではありません。2月に飲んだ芳水酒造・芳水(ほうすい) 「一番」 の時にも書きましたが、美味しい酒と純米酒はイコールにはなりません。製造過程の違いにばかり注目せず、本当の旨い酒とはどの様な酒なのかもう一度考えて欲しいと、今回も思いました。
3.浜福鶴銘醸(神戸市東灘区) 純米吟醸 「空蔵 雄町おりがらみ」
原料米;雄町 精米歩合;50% 【アルコール分】17度 【日本酒度】+−0 【酸度】1.9 1.8L @2,800 (税 別)
A;味5、B;香り4、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評; 淡く白濁した中から、雄町の柔らかい旨みと、まとわりつくような口当たり、何時までも旨さが口中に残ります。米の旨さが充分に味わえ、常用酒にしては勿体ない佳酒。
4.酒田酒造(山形県酒田市) 特別純米 「上喜元 雄町」
原料米;雄町 精米歩合;60% 【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+3 【酸度】1.3 【酵母】熊本酵母 1.8L @2,800 (税 別)
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4
E寸評; 酸味の中から酒の旨みが湧き上がってくる。キレが悪く何時までも酸味が口中に残り、純米の鈍重さが出てしまった。香りが弱いので、どんな料理にも合うでしょう。
■今回はこのほかに差し入れ物のお酒も飲みましたが、あまりのレベルの違いに、ここでは言及しません。一般的に大メーカーの普通酒を飲み慣れている人は感激して飲まれる事でしょうが、小学生と大学生の違いぐらい 格差が有るでしょう。蛇の目のお猪口は琥珀色に染まり、ひね香と精米の悪さから来る蒸れたような味わいは悲しくなるものを覚えます。これも肩書きの、純米原酒にだまされるのです。まだまだ、この様な日本酒が大手を振ってまかり通っているのです。日本酒人口の減るのを助長している蔵元さんです。
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