最近呑んだ吟醸酒について
2001年7−9月分
これからの話は消費者(飲み手)という立場で書いていきます。評論家や蔵元、酒屋の立場では見ていません。また、音楽とか味覚とかいう物は大変抽象的で表現が難しいのですが、平易に書きたいと思います。 よく、食べ物店の紹介記事で絶賛している物を食べると、首を傾げたくなる時が多々ありますし、テレビでリポーターが口に入れたとたん「うまい」と発言しているウソ等はここでは、しないように心がけています。
◆月に一度の例会とイレギラーで飲んだ吟醸酒について、ズバリ、どういう酒か皆様への判断基準を書きます。
A;味、B;香り、C;コストパフォーマンス、D;総合評価を、各5点評価(5;最上 4;良 3;まあまあ 2;まだまだ 1;評価外)で表します。 総合評価3−(マイナス)以下ではもう一度買うかと言えば、考えてしまうレベル。2ではタダで贈られても困ってしまうレベル。
私の独断と偏見なしで評価し、E;寸評も入れます。なお、会での評価も、判断基準の参考にしています。また、評価はこの日に飲んだ吟醸酒の味で、次回も酒の性格上、ロットや時間が変れば同じとは言切れませんが、傾向としては、間違ってはいないと思います。
2001年9月22日(土)
1.廣木酒造本店(福島県会津坂下町) 特別本醸造 生酒 「飛露喜(ひろき)」
原料米;− 精米歩合;−% 【アルコール分】16〜17度 1.8L @2,100(税別)
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4
E寸評;本醸造でありながら、雑味も無く品性もあり、吟醸酒を喰うレベルを持っている。これだけで飲んでいれば、何にも過不足はない。強い個性で料理をいじめないし、肴にもよく合うし、八方美人的に付き合いが良い。晩酌酒にすれば値段も手頃で最高。
2.佐久の花酒造(長野県南佐久) 純吟 無濾過生酒 「佐久の花」
原料米;新美山錦 精米歩合;55% 【アルコール分】17〜18度 1.8L @2,500(税別)
A;味4+、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評;相変わらず「佐久の花」は美味い。味も香りも申し分ない。純米酒の欠点は何一つ見あたらないどころか、アルテン酒を足下に見ている。特に香りの良さは最高。立ち上る香りは強すぎず、弱すぎず、品よく甘く香る。この香りが酒質を引き立てている。呑み疲れしない佳酒。
3.正義櫻(岡山県倉敷市) 純米吟醸 原酒 「備前雄町」
原料米;備前雄町 精米歩合;60% 【アルコール分】18〜19度 【日本酒度】+9 【酸度】1.8 1.8L @2,900(税別)
A;味3+、B;香り3、C;コストパフォーマンス3+、D;総合評価3+
E寸評;残念ながら老年期に入ったようで、力も品位も香りもない。うす茶色の酒にヒネ香が混じり、だらけた酒質が雄町を悲しませる。歳をとっても色気があれば、老いらくの恋も良いでしょうが、それが無ければ、若い娘とお付き合いをしたい。
4.正義櫻(岡山県倉敷市) 吟醸生原酒 「備前山田錦」
原料米;備前山田錦 精米歩合;58% 【アルコール分】19〜20度 【日本酒度】+7 【酸度】1.8 【使用酵母】協会9号 1.8L @3,000(税別)
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4
E寸評;蔵元の「正義櫻」の水のせいであろうか、「雄町」もこの「山田錦」も、ベースの味はきわめて似通っている。米も使用酵母も仕込みも違うのに、その差が見受けられない。
この山田は現役のバリバリ。山田の旨みと戻り香が良い。しかし高い辛口のおかげで、口中にいつまでも酸味が残る。
5.中尾醸造(広島県竹原市) 吟醸 「誠鏡 まぼろし」
原料米;− 精米歩合;−% 【アルコール分】16〜17度 180ml 缶入り @お土産
A;味3+、B;香り3+、C;コストパフォーマンス・お土産、D;総合評価3+
E寸評;広島土産をいただいた。
酸味の強い辛口の吟醸酒です。新幹線の中で地元の肴をつまみながら飲むのには十分な吟醸酒でしょう。
6.河野合名(会津若松市) 吟醸・熟成酒 「春高楼」
原料米;八反錦 精米歩合;50% 【アルコール分】15〜16度 【日本酒度】+2 【酸度】1.5 1.8L @3,000(税別)
A;味5、B;香り4、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評;今年の1月にも飲んでいるが、またのお付き合い。
熟女に再会したが、裏切られず堪能させてもらった。いつ飲んでも変わらないコク、品位と旨み。蔵元バンザイ。
2001年8月25日(土)
1.神沢川酒造場(静岡県由比町) 吟醸 「正雪」 生
原料米;山田錦 精米歩合;50% 【アルコール分】16〜17度 1.8L @2,900(税別)
A;味4+、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評;前回、雄町のような濃厚さはないが、爽やかな中に、旨みがわき出してくる。欠点のないくらいに上手く造られている。厚化粧せず、ヤキモチ妬かず、いつも傍にいてくれる様な、イイ女性だろう。肴は選ばないが、やはり一級品と合わせたい。
2.麓井(ふもとい)酒造(山形県八幡町) 吟醸 「輝ら星の如く」 生 原酒
原料米;山田錦、美山錦 精米歩合;−% 【アルコール分】17〜18度 【日本酒度】+4〜6 【酸度】1.4 1.8L @3,076(税別)
A;味4+、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評;旨い。美味い酒であるが、酸味と旨みがまだ巧くかみ合っていない。二つの味がまだ自己主張をしている。新婚当時のように華やかさはあるが、まだ二人の呼吸が合っていない。年を重ねるとイイ夫婦になるであろう。飲むのが早すぎた。
3.瀧自慢酒造(三重県名張市) 純米吟醸 斗瓶取り 「瀧自慢」 備前雄町
原料米;備前雄町 精米歩合;50% 【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+3 【酸度】1.4 1.8L @4,095(税別)
A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評;芳醇で爽やか品性が高い。斗瓶取りだ、備前雄町だとの能書きは要らない。ただただ、旨〜い!。小股の切れ上がった小紋を着た若奥様がこちらの目の中を覗いている。視線から離れることが出来ず、手が伸びる。やはり、この女性もどこかの会友の家に泊まりに行ってしまった。嗚呼。
会友からのコメント(クリックして下さい)
4.墨廼江(すみのえ)酒造(宮城県石巻市) 大吟醸酒 「600−K 墨廼江」
原料米;山田錦 精米歩合;40% 【アルコール分】17.3度 【日本酒度】+4 【酸度】1.3 1.8L @6,625(税別)
A;味5、B;香り4+、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評;兵庫県”特A地区産”の山田錦100%使用し、総米量600kgという少量仕込みにて丹念に醸した大吟醸の原酒です。(裏ラベルより)
適度な酸味とその上に乗った旨みが、口中に広がる。冷やしたときにその旨さが冴える。旨みがギッシリと詰まった吟醸酒だがアルコール臭がする。前回の”吟星四十”が旨かったので、今回も挑戦したが、良い所の姉妹はどちらも甲乙付けがたく、素晴らしい。蔵元に敬意を表して脱帽。
2001年7月28日(土)
1.市島酒造(新潟県新発田市) 王紋冷酒 「吟醸 生」
原料米;− 精米歩合;−% 【アルコール分】14〜15度 720ml 差入れ酒
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス差入れ酒、D;総合評価4
E寸評;イメージとすると本醸造クラスかと思われていたが、なになに頑張って吟醸酒の名前を現実のものとしている。柔らかくて飲みやすく、香りも一人前に付いているし、食中酒とすれば最高。お中元で貰ったものを差し入れてくれたが、一般的な大量生産される(?)吟醸酒もレベルが上がった。
2.墨廼江(すみのえ)酒造(宮城県石巻市) 吟星四十 「墨廼江」
原料米;吟の精(秋田県産酒造好適米) 精米歩合;40% 【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+4〜5 1.8L @3,575(税別)
A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評;骨太のドッシリした旨みが凝縮されて、口の中で旨みが爆発する。秋田県産酒造好適米、吟の精の旨さもさることながら、造り手のコンセプトの勝利であろう。この価格では文句無しにベスト。
3.初亀醸造(静岡県岡部町) 「富蔵(とみぞう)」
原料米;山田錦 精米歩合;50% 【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+2 【酸度】1.4 【使用酵母】静岡HD1、協会14 1.8L @3,875(税別)
A;味4+、B;香り4+、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評;サラリとした味わいの中に旨みが凝縮している。ペパーミント系の爽やかさが夏の暑さを和らげる。決して肴を選ばず、引き立てる。冷蔵庫から取り出したときも、常温の時も同じように爽やかな姿勢が好感度をアップする。
4.神沢川酒造場(静岡県由比町) 純米大吟醸 「正雪」 備前雄町
原料米;備前雄町 精米歩合;45% 【アルコール分】15〜16度 【日本酒度】+2 1.8L @4,200(税別)
A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評;正雪(しょうせつ)の吟醸酒には毎回脱帽するところが多いが、この”雄町”は抜群に旨い。雄町の素性を全て出し切って、ドウダ!と言わんばかりの仕上がりになっている。味は厚みがあって濃厚、香りは邪魔しない程度にバランスしている。旨い美味いで飲み過ぎるが、決して呑み飽きせず端正さを崩さない。
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