「米の炊飯に関する調査」結果報告
「米の炊飯に関する調査」の結果およびそれを用いたLCA比較結果を以下に示します。回答数は最終的に107件でした。
ご回答をおよせいただいた方々に御礼を申し上げます。また、非常に有意義な結果が得られたのですが、学会発表等を考慮して報告が大幅に遅れたことをお詫び申し上げます。
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T.アンケート調査の目的および実施状況
1.目的
2001年3月27日〜5月28日に、「無洗米と普通米のLCA比較」(普通米とは無洗米以外の米とします)の暫定結果をHPにて公表してプレクリティカルレビュー(公開討論)を実施しました。その検討過程で「米のとぎ汁の家庭内処理(庭などに撒くこと)の検討」が必要であることがわかりましたが、文献等でその正確な値を見つけることができませんでした。
本調査は、日本における家庭内処理割合を推計することを主な目的としましたが、インターネットを用いて調査を行うためのノウハウの蓄積および回答バイアスの調整等の検討も目的としました。調査する主な項目は、
です。また、調査を補佐する(回答バイアス等を調整する)ために、他の調査項目を設定しました。
2.実施状況
2001年5月1日〜5月20日に、インターネットを通して募集した環境情報ボランティアを中心として、アンケート調査を実施しました。調査開始時点のボランティアメンバーは28人(終了時点では34人)でしたが、ボランティアメンバーを中心とした一次回答者に対して別の調査実施者を勧誘することを依頼したため、最終的に回答数は107件になりました。
市場調査は、母集団を規定してそこから無作為抽出することで、母集団に対してなんらかの推定を行うというのが一般的なプロセスです。本調査の母集団は、本来「日本の家庭における米の炊飯実施者」となりますが、本調査は母集団からのランダムな選定を経ない調査であるため、母集団の特性を数学的に推定することは一般には難しいとされます。しかし、近年、予め募集したモニターに対してアンケート調査を実施するモニター法が、従来の調査方法で実施した場合と同様の結果を導き出すことが経験的に指摘されています。モニター法は簡便かつ効果的に調査を実施する手法として極めて有効であるため、前述経験則の裏付けが望まれます。
本調査は、
等で回答バイアスの調整を試みました。
環境ボランティア自身の回答は一般市民よりも環境意識が高いことが予想されるため、家庭内処理割合が一般よりも高めに出る可能性があります。そこで、環境庁の全国調査から、「環境認識」、「環境行動」を調査する部分を本調査項目にコピーして、本調査結果と全国調査結果を用いて家庭内処理割合を修正することを試みました。
環境庁の全国調査「環境にやさしいライフスタイル実施調査」は、
のように実施され、平成9、10年も同様に実施されました。3年間の調査結果の経年変化は観察されませんでした。そこで、平成8年の「環境にやさしいライフスタイル実施調査」における問1の「地域レベル、国レベル、地球レベルの環境の実態」、ならびに問8の「環境保全行動についての自己評価」を、本調査の問4、5にそれぞれ用いました。
U.集計結果
以下に各アンケート調査結果とそれに対する考察を述べます。クロス集計表(2x2分割表)を用いて5%の有意水準でχ2検定して有意な差が認められたことを中心に報告します。また関連係数は、クラマーの関連係数(Cr)を用います。
(クラマーの関連係数:完全関連の場合に1、完全無関連の場合に0として0〜1の間の数値で関連性の強さを表す指数:2x2分割表の場合は、Cr=sqr(χ2/n)の式で表される。ここでsqrは平方根、nは件数を示す)
ちなみに、下記図中の数字は、割合ではなく回答者数です。
1.米の種類(問1-1)
炊飯する米の種類は、107件の回答中、無洗米を使用している件数は13件でした(全体に対して12%)。全国無洗米協会(03-3211-6271)によれば、2001年3月時点で無洗米は年換算約28万トンが出荷されていると推測されています。農林水産省「農林水産統計月報」によれば、平成9〜11年の米の収穫量平均は939万トンであるため、単純計算すると、無洗米の普及率は約3%となりますが、外食産業および主食以外に利用される分があるため、実際の普及率はそれより若干大きいと予測されます(政府所有米に関しては、同需要平均14.2万トンの内、同主食用平均は6.3万トンでした)。環境意識が高い人に無洗米を使う傾向が見られますが、件数が少なかったため統計的に有意ではありませんでした。
なお、無洗米と普通米(無洗米以外の米)を両方使っている人は今回の調査ではいませんでした。
2.一回に炊飯する量(問1-2)
一回に炊飯する米の量は、3合が最も多く、ついで2合でした(平均 2.7合)。年齢が高いほど炊飯する合数が少なくなる傾向がありますが、優位な差はみとめられませんでした(Cr=0.139)。
家庭内処理する人と炊飯する合数との間に何らかの関連があることを予想しましたが、連係数(Cr=0.007)が小さいことからそういった傾向は無いものと考えられます。
3.とぎ汁の排水状況(問1-3)
普通米のとぎ汁の排水処理(重複回答可能)は、台所から排水するのが最も多く、ついで「庭の植木などに撒く」(家庭内処理)が多いことがわかりました。その他として、洗剤の代わりに食器洗いに使用する、芋の下煮に使用する、EM培養液に使用するなどがありました。普通米炊飯の人に限ると、「庭の植木などに撒く」人の割合は、34%でした(炊飯する合数で加重平均すると33%)。
4.家庭内処理する割合(問2-1)
家庭内処理する習慣のある人について、実際の炊飯で家庭内処理する割合を下表の「回答数」に示します。それぞれの回答番号に下表に示す割合を割り付けて加重平均したところ、157.5/32/10*100=49%となりました(炊飯する合数で加重平均すると51%)。
回答番号 | 回答数 | 割合(割) | 回答数x割 |
1 | 4 | 0.5 | 2 |
2 | 4 | 1.0 | 4 |
3 | 5 | 2.0 | 10 |
4 | 0 | 3.5 | 0 |
5 | 9 | 5.5 | 49.5 |
6 | 2 | 7.5 | 15 |
7 | 6 | 9.5 | 57 |
8 | 2 | 10 | 20 |
計 | 32 | 計 | 157.5 |
5.家庭内処理する量(問2-2)
家庭内処理する習慣のある人について、実際の炊飯で処理するとぎ汁容量を下表の「回答数」に示します。回答数は、炊飯する合数ごとに回答数を集計しました。4合の米を4回研ぎ合計4.5Lのとぎ汁水がでると仮定して、全回答者の排水量を合計すると、95.1Lとなります。また、同仮定から家庭内処理する容量を算出すると、合計65.7Lとなるため、65.7/95.1*100=69%のとぎ汁が家庭内処理されることになります(炊飯する合数で加重平均すると69%)。
回答数 | |||||||||
回答番号 | 炊飯する合数(合) | ||||||||
1.0 | 1.5 | 2.0 | 2.5 | 3.0 | 3.5 | 4.0 | 5.0 | 6.0 | |
1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2 | 0 | 1 | 3 | 1 | 3 | 0 | 0 | 1 | 0 |
3 | 0 | 0 | 1 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 |
4 | 1 | 1 | 4 | 1 | 4 | 0 | 1 | 1 | 0 |
5 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
6 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
7 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
米研ぎの回数と乾固形物量の関係(下図参照)から、最初から69%の研ぎ汁は全水質汚濁物質の89%に相当すると推測すれば、家庭内処理によって削減されるとぎ汁の割合は、回答者平均で、34%x50%x89%=15%であると推測できます。
6.台所からの雑排水の処理方法(問3)
雑排水の処理は、下水道、浄化槽、側溝で処理する割合がそれぞれ87、5、7%でした。日本全体の下水道普及率(http://www.asahi-net.or.jp/~zw2y-mtn/:ミニ百科:汚水処理施設整備率)は55%であるため、本調査の回答者は、側溝・河川に直接放流する人が少ないことが分かります。
「台所からの雑排水が下水処理または合併浄化槽処理でない場合に家庭内処理される」傾向がありますが、回答数が少なかったことから有意な差が認められませんでした(Cr=0.204)。この傾向が正しければ、上記3〜5の結果は、加算される方向にずれる可能性があります。
7.回答のバイアス調整(問4)
環境庁の調査結果と本調査を比較した結果を下図に示します。本調査の回答者の環境に関する認識は、全国調査と非常に強い相関があることがわかります(相関係数は、地球レベル、国レベル、地域レベルのそれそれについて1.00、0.92、0.88)。また、家庭内処理する割合と本結果(環境の実感)との関連は認められませんでした。
環境の実感(地球レベル、国レベル、地域レベル)の認識に関する、環境庁調査結果と本調査結果
8.環境バイアス調整(問5)
環境庁の調査結果と本調査を比較した結果を下図に示します。本調査の回答者の環境保全行動は、上記と同様に全国調査と強い相関があることがわかります(相関係数は、勧誘、情報、行為のそれぞれについて、0.92、0.73、0.96)。家庭内処理する割合と本結果(環境保全行動)との関連があり(Cr=0.25〜0.30)、保全行動を「行っている」人は家庭内処理する傾向が強いことがわかりました。ただし、前述のように「環境配慮の勧誘」と「環境配慮行動」は本回答と相関が強いため家庭内処理の補正は行う必要がないと判断しました。
蛇足ですが、前述の「環境の実感」と「環境保全行動」の関連を調べてみたところ、あまり関連がないことがわかりました。これは、「どのような環境の実感をもっていても、それが環境保全行動と関係ない」ことを意味しており、興味深いと思われます。
環境保全行動(環境配慮の勧誘、環境情報の取得、環境配慮行為)に関する、環境庁調査と本調査結果
9.回答者年齢、性別等(問6)
年齢は、20〜40代の方が多く、性別は女性72名、男性35名でした。これまた蛇足ですが、上記問4、5との関連を調べたところ、「若い人ほど地球環境に悲観的」(Cr=0.12)であり、「男性は女性に比べて地域環境に楽観的」(Cr=0.20)であることがわかりました。属性によって環境に対するイメージの違いが大きいことが示唆されます。
10.回答者所在地(問6)
回答者の所在は、東京都、神奈川県、千葉県、兵庫県、大阪府などの都市部が比較的多い傾向になりました。逆に下水道処理設備が普及していない地域の回答数が少なく、問3の結果と同様の傾向が認められました。
11.調査情報入手元(問7)
回答者が調査情報をどこから入手したのかを下図に示します。環境情報ボランティア(24名)を中心とした一次回答者に、調査の趣旨を説明して調査紹介を依頼した結果、40名以上の二次回答者が調査に協力していただきました。二次回答者数が比較的多かったため、前述のように回答者属性のバランスがよかったものと考えられます。
V.結論
米のとぎ汁に関するWebを使ったアンケート調査(有効回答:107件)から、
以上