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(業務インフォメーション)

〜労務管理や社会保険についても行政機関による調査があります〜


労働基準監督署や労働局、年金事務所の調査とその対応について
労務管理は労働基準法をはじめ、安全衛生法や労働保険料徴収法、職
業安定法、健康保険法、厚生年金保険法などすべて根拠となる法律が
存在しています。そのため各種法令違反がないか、手続きがが適正に行
われてかいるかどうかを調査されることがあります。
労働基準法や安全衛生法などの違反がないかを監督する労働基準監督
官による立入調査(臨検)や社会保険の適用や保険料について適正に行
われているかを調査する年金事務所による総合調査などは実は頻繁に行
われているのです。ここでは、各調査はどのようなものなのかについて確
認し日頃の労務管理の重要性を考察致します。


労働基準監督官は司法警察官?
労働基準監督署は「所」ではなく「署」!?

〜書類送検などの司法処理がされる場合も!〜


労働基準監督官の査察(調査等)について
突然、労働基準監督署から監督官が会社に訪れ出勤簿や賃金台帳を確認させて下
さいと調査されることがあります。労働基準監督署は事業場が労働基準法や労働安
全衛生法、最低賃金法などの労働法令に違反がないかを調査し、違反や違反する恐
れがある事項を見つけると、それを指導・監督を行う行政機関です。その労働基準監
督官には「司法警察の職務」も労働基準法第102条によって規定されていますので、
@労働基準法
A最低賃金法
B労働安全衛生法
C家内労働法
D作業環境測定法
Eじん肺法
F賃金支払い確保法
といった一定の法違反については、刑事訴訟法による司法警察職員として捜査権や
逮捕権などが付与さています。そのため、労働基準監督官としての行政指導であって
も、それに従わない場合や嘘の改善報告を行ったり、あるいは違反内容そのものが悪
質であったり、再発を繰り返す常習性を有する場合などは司法警察官としての職務を行
使し、逮捕することや身柄を拘束しなくても書類送検することができる権限を有している
ことをまずは知っておく必要があります。
(実際に各都道府県労働局のホームページでは送検事例が紹介されています。)

【埼玉労働局HPで公開されている送検事例】
http://saitama-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/jirei_toukei/souken_jirei.html
【東京労働局HPで公開されている送検事例】
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/jirei_toukei/souken_jirei.html
平成26年度司法処理状況の概要について
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/news_topics/houdou/2015/_121334.html
労働基準監督官の査察(調査等)の対応
<一般的な定期監督について>
労働基準監督官の行う調査には「定期監督」として、年間計画の方針に基づき行わ
れるものがあります。多くの場合、労働基準監督官の調査は事前連絡はありません。
まずは、労働基準監督官であるかどうか持参されている帳票の提示を求め確認し、
調査の目的を伺って下さい。そして確認を終えたら調整可能なら後日に、その場でな
らない場合はその場で調査に応じることになります。内容によっては突然訪問するの
ではなく出頭が命じられ、出頭期日や持参資料が記載された通知が届くことがありま
す。いずれにしても内容を確認し、期日が指定されている場合は予め専門家に相談
することをお勧めします。当然のことではありますが、労働基準監督官の調査にはき
ちんと従うことが重要です。ここで「従う」というのは、何も「言いなりになる」と言う意味
ではなく、自らのミスや把握不足などがあれば、労働基準監督官と「同じ方向で点検
する」という姿勢で臨むということです。労働基準監督官も行政指導として行っていま
すので、余程の悪質な場合や重大事故が発生した事案でなければ定期監督におい
きちんと是正をする事業主に対しては直ちに送検などの司法処分を行うようなことは
まずはありません。(もちろん、そもそも司法処理は十分に調べてから行うものです。)

そして、どんなに適正に労務管理を行っていても指摘事項はあるときはあるものです。
もちろん、指摘事項に異議があれば説明をすればよいのです。このように調査がされ
結果として違反事項があれば、「是正勧告」がなされ期日が示されたうえで改善報告
をするよう求められます。

また、「是正勧告」とは別に「指導票」というものが交付されることもあります。この「指導
票」は法令違反とまでは言えないまでも改善が必要と思われる場合(例えば、休憩につ
いて適正に取扱い自由利用が保障されていない場合は適正な賃金を支払うことや変則
的なシフトの場合などは1ヶ月単位の変形労働時間制等を活用することで週40時間以
内の労働制のルールを明確にすることなどの指導です。)があります。その他、安全衛
生法違反について、危険を伴う有害物質等について「使用停止等命令書」が交付される
といった行政処分がされることもあります。労働時間や作業環境において、労働者の危
険がないか労働災害の防止なども行政側の重要な使命なのです。

【是正勧告を受けたら】

きちんと勧告内容を確認し、指定期日まで報告ができるよう対策を講じ、改善しましょ
う。もし、指定期日までに報告ができなければ、進捗状況報告を行い指定期日を変更
してもらうなど、必ず労働基準監督官へ相談や報告をされて下さい。労務管理上の指
摘は、御社の改善の良い機会として適正に改善して下さい。顧問社労士がいる場合
は、必ず顧問社労士に報告や改善実施の前に相談し労働基準監督署へ伺う場合は
同行してもらうなどの対応をされるとよいでしょう。また、顧問社労士がいない場合で
も、スポットでも構わないので、可能な限り是正勧告対応を専門としている社労士に
相談されることが望ましいかも知れません。なぜなら、是正勧告には必ずと言っても
過言ではないくらい「割増賃金」や「労働時間」について指摘を受けるからです。割増賃
金は単なる計算内容についてのみならず「労働時間」や「休日」あるいは、「管理監督
者」についてなど、きちんと制度を理解したうえで計算処理ができなえればなりません
し、各種手当についてや、例えば営業職につての外廻りや直行直帰の場合の「みなし
労働時間」などいての実態、「所定超え」なのか「法定超え」なのかの実態など、とて
も「役所に聞けばタダで教えてくれる」の範疇では無いからです。(むしろ、監督署が
御社に実態を聞いている立場になるのですから。)労務管理も法律があっての管理
ですし、就業規則や労働契約も存在し従業員の方との信頼関係にも直接影響します
から、法律どおりに容易にいかないことも多々あるかも知れませんし、困難も伴うこと
かも知れませんが、ここは見直しのいいきっかけと捉えて、是非、向き合って適正な
対応をするようにして下さい。

【是正勧告を無視するとどうなるの?】
是正勧告は行政指導の位置付けであり、法的な強制力はありません。そのため、是
正勧告を無視しても大丈夫?という素朴な疑問があるかも知れません。しかし、是正
勧告がされているということは「法違反の事実」が確認されていることを意味している
わけですから、労働基準監督官がその違反事実を見逃すとは考えられません。まし
てや労働基準法や最低賃金法などは刑罰法規ですから、その事実をもって、改善の
意思がなく悪質な確信犯と判断されれば直ちに逮捕や書類送検といった司法処理も
可能と言えば可能なのです。しかし、通常は余程、悪質であったり危険が切迫してい
る場合ではない限り直ちに捜査や司法処理はまずはされず、是正勧告書を交付し行
政指導を行うことで改善を促すのです。従って、是正勧告は労働基準監督官が法違
反について司法警察官としての職務を行使させないで違反事業場が自主的に改善し
てもらうための監督指導ととらえるべきです。要するに是正勧告そのものに法的強制
力があっても無くても、労働基準法や最低賃金法、安全衛生法違反が確認されてい
るわけですから、無視をするなど勧告に誠実に是正対応しなければ、違反事実につ
いて罰せられることになりかねないのです。

【絶対にやってはいけないこと】
すべての調査に言えることですが虚偽の報告をすることは言語道断です。法違反は
労働基準監督署に対して行っているのではなく、雇用する労働者の方(退職者も含
む)に行っている以上、特に後述します「申告監督」の場合は、ほぼわかってしまい
ますし、定期監督であっても、その労働者の方や退職者、またはご家族の方などか
らの申告(通報も)による再監督も十分にあり得ることであり、報告内容に虚偽が発
覚すれば送検の危険はかなり高まります。実際は労働基準監督官は内偵(ないて
い)と言って、振込によって支払ったと報告された未払い賃金の振込み状況の金融
機関への照会や各種関係者の聞き込みなど相当な下調べを行って司法処理をしま
すので、虚偽の報告を行ったことについての言い逃れはできません。とにかく虚偽報
告は自殺行為ですし、直ちに発覚せずとも発覚に怯えながら毎日を過ごすことは精
神衛生上苦しいはずですので絶対に止めて下さい。
ちなみに、監督官の臨検(立入り調査)自体についても、拒んだり、妨げたり、尋問に
答えなかったり、虚偽の陳述をしたり、帳簿書類を提出しなかったり、虚偽の帳簿書
類を提出した場合といった臨検拒否自体にも労働基準法第120条により30万円以下
の罰金となる罰則規定が設けられている点にも留意するべきでしょう。
<その他の調査について>
労働基準監督官が行う調査は定期監督の他、「災害調査」「災害時監督」「申告監
督」があります。まず、「災害調査」については、死亡災害や瀕死重傷、爆発や中毒
により一度に3名以上が負傷した場合などの重大災害が発生した際に発生状況の
把握と原因究明のために即時に行われます。また、「災害時監督」については、災
害調査を行うまでの重大災害ではないものの、重篤な災害だと言える労働災害につ
いて行われる調査です。送検事例などを見ると、労働安全衛生法違反によるものが
非常に目立ちます。特に建設業をはじめ運送業、製造業などは常に危険と隣り合わ
せの仕事については、注意が必要です。
労働基準法違反事業場において、そこで働く労働者はその違反を労働基準監督署
へ申告できる権利があります。この権利を行使したことによる申告に基づく、調査が
「申告監督」となります。この「申告監督」は実際に法令違反の申告があって行われ
ている調査ですが、事実内容を確認するために労働基準監督署へ後日、呼ばれる
こともあります。なお、申告監督は先の定期監督と通常は見分けることができませ
ん。しかしながら、定期監督よりも申告監督の方が法令違反の疑いを持っての調査
となりますので、より具体的な内容になると考えられます。ただどちらの調査であっ
ても「適切に是正しなければならない」ことに大きな違いなどありません。
送検事例から
労災隠しは大変なことになります!
実際に休業を伴う業務災害が発生したら、労働基準監督署へきちんと災害事実を
報告して下さい。「労災隠し」というのは「労災保険隠し(?)」ではなく、「労働災害隠
し」の略称です。要するに、労災保険の話ではなく、労働安全衛生法の話なのです。
通勤災害を除く業務災害が発生し、その療養のための休業が1日〜3日までの場
合は、1月〜3月期間といった3ヶ月ごとに区切った各四半期のうち、災害発生日の
属する四半期の最後の月の翌月末日までに「労働者死傷病報告(休業4日未満の
様式)」を提出し、休業が4日以上または死亡の場合は遅滞なく、「労働者死傷病報
告(休業4日以上または死亡の場合の様式)」を事業場の所轄する労働基準監督署
(安全衛生課)へ提出して下さい。この報告を行わなかったり、虚偽の報告をすると
「労災隠し」となりますので、「たかが報告」などど軽く考えると大変な代償を負うこと
になりますので十分な注意が必要です。※寄宿舎や施設内での火災事故や食中
毒などでも報告対象となる場合もありますので、十分な確認が必要です。

労災隠しの送検事例で目立つのは、「建設業」や「運送業」「人材派遣業」などです。
特に建設業の労働者死傷病報告は下請事業者の労働者が被災した場合は、その
被災労働者を直接雇用する下請事業主がその災害の工事にかかる元請事業主の
労働保険番号を記載し、また元方事業者欄に元請事業者を記載し事故現場となる
工事現場を管轄する労働基準監督署へ報告しなければなりません。そのため「元請
事業主に迷惑をかけたくない」などの動機により、「自らの資材置き場」で災害が発生
したことにするなど「虚偽の報告」(労働基準監督署ではこのような発生場所を他の
場所へ飛ばすということで、このような手口を「飛ばし」と言うそうです。)をしたり、治
療費を会社で工面し、報告自体を行わないとする「隠ぺい」をしたと思われる事業
者に対しておこなったと考えられる送検事例が目立ちます。また、不法就労である
外国人労働者の方の労災について、その発覚を恐れて隠ぺいする事例や二重派
遣などで責任の所在がうやむやといった無責任雇用によると考えられる事例もあり
ます。

建設業の場合は下請事業主の従業員の方について労災事故が発生した場合は、
元請事業主が率先して災害事実を伝えてもらうよう下請事業主に十分な注意喚起
を行うことが必要です。また、建設事業に適用される請負い事業の一括は元請事
業主に労災適用(元請事業主、下請事業主や一人親方などの労働者性を有しない
方は特別加入で自らの保険関係で適用)が義務付けられていますが、災害報告
や労働者死傷病報告義務を下請事業主と同様に元請事業主にも連帯して課すな
ど制度のありかたそのものを見直す対策も必要かと思われます。
「労働時間管理」という発想がない経営者は重大なリスクを抱えています!
ここでいう長時間労働の問題となるのは、「労働時間には上限があることを考え
ない」「賃金さえ払えばいくらでも働かせていいと思われている」「休日も電話があれ
ばすぐに出勤してもらうよう常に一般社員にまで携帯対応を求めている」「裁量や待
遇に均衡しないのに労働時間管理を従業員個人に丸投げする」などと言った意識の
無さや体制の低さの事を言います。従って、一概に会社だけの責任とは思われない、
いわゆる単なる残業代稼ぎのためのダラダラ残業等の問題は、当然ながら、ここと
は少し違う話になります。

「賃金不払い残業」「名ばかり管理職」「長時間労働」「過労死・過労うつ・過労自殺」
これらの問題の多くは「労働時間や休日管理」を怠った結果と言えます。人は「拘束
される」と何もしていなくてもストレスを受けるものです。自営業者である私や権限を
有する経営者は、「拘束感」がほとんどないため、例え長時間労働や休日労働を
実際に行っていたとしても、「拘束」というストレス因子にあまり気付きにくい事なの
かも知れませんが、「拘束」というストレス因子を有する一般従業員の方については
1日8時間、1週間40時間までが労働時間の原則であることを十分に踏まえて管理す
る必要があります。実は本来は時間外労働や休日労働は「違法」なのです。しかし、
現実問題として時間外労働や休日労働は発生してしまします。そこで労使間協定の
範囲内で認められており、その労使協定が労働基準法第36条に定められた書面協
定である36協定なのです。

ただ、その36協定も万能ではありません。認められる時間外労働も多くの業種が
上限が原則として決まっており、その上限を超える残業は例え36協定があっても「違
法」となりますので注意が必要です。(一定の事情により上限を超えることを「特別条
項」として定めその範囲内であれば上限を超えても違法とはならない場合がありま
すが、この「特別条項」に定める時間範囲や回数にも原則として限度が定められてい
ます。)特にサービス業においての店長などの管理職についてですが、大きな権
限(労働時間や休憩等に関する裁量や店舗で働く他の社員、アルバイトへの人事
権、時間単価に換算した場合の相当な待遇など※厚生労働行政においては一定の
基準が定められていますので必ず確認して下さい。
厚生労働省HPはこちら ※PDFファイルです。)を与えることができないのであれば、
割増賃金は払わなければなりません。もちろん健康面でも労働時間管理は絶対に
不可欠です。36協定を締結すれば何時間でも、あるいは何日でも労働させて「良
い」は大きな間違いであり、その誤解は罪を招く危険因子です。労務管理において
は「賃金」についても、「健康管理」についても「全ては労働時間からなる」と言って
も過言ではないくらいで、実は労働時間管理は労務管理そのものなのです。「賃
金」については十分考えても「労働時間や休日」を考えない。いくら口では「社員は
家族」「サービス残業(賃金未払い残業)は会社への将来の貸しだと思えばいい」
「賃金ではなく、やりがいを重視してほしい」と言ってみても、経営者は労働者を労
働者として取り扱うべきルールがあり、結局は労働者として雇用しているのですか
ら、そのルールを守る気が無いのであれば、残念ながらそれらは単なる労務管理
に対する怠漫を正当化するための詭弁と言われても仕方がありません。
一方、ルールをきちんと考える経営者は労働者側もきちんと労務提供を考えるは
ずですし、経営者側の指揮命令にも「大きな説得力」が生まれるものです。

なお厚生労働省では平成27年5月18日より、大企業については違法な長時間労
働を繰り返す企業名を公表することとしています。(内容はこちら ※PDFファイル
です。)
危険作業を行う場合は徹底的な安全体制を!
労働安全衛生法では、高さ2メートル以上で墜落により労働者に危険を及ぼすお
それのある場所には、囲い、手すり、作業床等の墜落を防止する措置を講じなけ
ればならないと規定されています。それにもかかわらず、それを行っていない場合
や、最大荷重1トン以上のフォークリフトを運転するためにはフォークリフト運転技
能講習を修了する等の資格が必要にもかからわず無資格者をフォークリフトに運転
させていたなどの労働安全衛生法違反に伴う死亡事故も多く発生していることも、
送検事例により伺えます。労働安全衛生法は非常に膨大な法律で、建設業や運送
業、製造業などの安全衛生管理体制や危険防止策、有害物質の取り扱いなど細か
く規定された法律です。労働災害事態はいくら注意していても起こってしまう要素
もあるのかも知れません。しかし、重篤な障害事故や死亡事故は防ぐことができる
はずだと思います。コスト削減のために安全削減までしなければならず、それで人
の命が奪われるようであれば、残念ながらその仕事はやめるべきです。



年金事務所の総合調査は特に加入漏れに注意!!
〜会計検査院の実地検査の場合は〜
〜各種調査の中でも最も莫大な金額が伴う恐ろしい調査になることも!?〜


年金事務所の調査について
年金事務所の調査に「総合調査」があります。総合調査は健康保険や厚生年金保
険の被保険者や被保険者となるべき方について適正な手続きを行っているか否か
を確認するための調査です。時効の関係から調査は過去2年について行われるも
のが一般的で
@資格取得をするべき方について手続きがされているかどうか
※パートタイマー等の取得手続き漏れなど
A資格取得日や資格喪失日が適正かどうか
※試用期間中の取得手続き漏れなど
B届出られた「標準報酬」に誤りがないか
※現物支給の算入漏れや通勤手当の算入漏れなど
C月額変更届に漏れがないか
D賞与届に漏れがないか
E住所届が適正かどうか
F60歳以上の年金受給者で加入漏れがないか
などが調査されます。
通常は指定された日に年金事務所で行われます
年金事務所が行う総合調査は、通常は「社会保険事務の総合調査について」など
事業所宛に調査指定日時や持参資料などが記された案内が送付されます。
年金事務所が行う総合調査は、よく「呼び出し調査」などとく言われますが、通常は
事業所への立入調査ではなく、過去に2年分の社会保険に加入していない方も含
めた全労働者分の労働者名簿や出勤簿、賃金台帳などが提示資料を持参して、
所轄の年金事務所の調査会場で行われます。なお、提示資料は労務関連資料の
みではなく全従業員数が適正かどうかの確認資料として源泉所得税の領収証書な
ども求められます。
とにかく加入漏れの指摘に注意!!
今でも「アルバイトやパートは社会保険に入れない」「時給制は正社員じゃないから
社会保険に入れていない」「試用期間中は社会保険に入れない」「パートは皆、年間
103万円以内で働いてもらっているから社会保険に入れないし、旦那の扶養にもな
っている」などの理由で社会保険に入れていない方が散見されます。所得税と健康
保険や厚生年金などの社会保険の適用はまったく異なるのですが、どうも「お金」で
判断となってしまっているケースも見られますし、「本人の希望」「会社の希望」と言っ
た、まるで「任意適用」と考えられているケースも見られます。そのため、一度調査
が来ると、その適用漏れの指摘に驚かれるのでしょう。社会保険の適用は原則とし
て、適用除外者(2ヶ月以内の所定の期間を定めて雇用される者など)を除き、アル
バイトやパートタイマーの方でもすべて@所定労働時間とA所定労働日数で判断さ
れると考えて下さい。アルバイト等の時給制や日給制であっても、その方の年間収入
がいくらであっても、とにかくまずはその方が週何時間(1日何時間)勤務で1ヶ月何
日労働なのか。この2点が重要です。年金事務所の判断基準としては、その適用事
業所で雇用する一般従業員(いわゆる社会保険の適用を受ける正社員の方)と比較し

@1日または1週間の所定労働時間数が3/4以上である場合。
(例えば正社員が1日8時間勤務の場合は1日6時間以上である場合。)
※ただし、日によって所定労働時間数に波がある場合で3/4未満の日もある場合は
1週間で3/4以上である場合。(例えば正社員が週40時間勤務の場合は週30時間
以上である場合)
※この@の基準は平成28年10月1日以降は1週間の所定労働時間数が3/4以上
である場合のみで判断されます。

A1ヶ月の所定労働日数が3/4以上である場合。

の@とAのいずれも該当する場合は社会保険に加入しなければならない方として
取り扱われますので注意されて下さい。(ただし、70歳以上の方は厚生年金保険
に加入できませんし、75歳以上の方は健康保険に加入できません。)

パートタイマーの方など一般の社員より勤務時間等が短い従業員の方を多く雇用し
ている事業所は社会保険の適用漏れには十分な注意が必要です。
60歳以上で年金を受けられている高齢者の加入漏れに注意!
加入漏れの方が60歳上で老齢年金を受けている場合ですと、さらにややこしいこと
があります。それは、厚生年金加入適用者として働いているわけですから、受けて
いる老齢年金は減額調整される場合があるのです。それを満額受けていた場合は、
不正受給になりますので、最大過去2年まで遡り、加入するべき保険料の納付と受
けるべきでない部分(本来調整されるべき部分)の年金額の返還が求められます。
賞与支払届も忘れずに!!
賞与を支給しているのに、単に年金事務所へ届出を忘れてしまったケースもあれば、
(ちなみに賞与支払期を事前に年金事務所へ届出ておくと賞与支払届総括表など
の様式が送付されますので届出忘れの防止ができます。この場合は賞与の支払
いが無くても「総括表」のみの提出が必要です。)「賞与」という名目でなくても、社
会保険上で賞与とみなされる手当が届出ていないケースもあります。例えば年2回
の賞与の他に、決算状況によって「決算手当」が一時金として支給された場合など
です。この場合は当該「決算手当」についても賞与支払届の提出が求められます。
特に介護事業を行っている事業所で処遇改善加算を活用し介護職員に一時金を支
給する場合は社会保険においては「賞与支払届」の対象とされると思われますので、
その支給についても届出漏れが無いように注意が必要でしょう。

なお、社会保険では定時決定の際に前年7月1日〜当年6月30日までの1年間で
4回以上支給されている場合は、その合計額を12ヶ月で割って1ヶ月分の報酬とし
て算入しなければならないなどの取り扱いがありますので、賞与や賞与性のある一
時金について年何回の支給なのかなど十分な注意と確認が必要です。例えば当初
は年3回の賞与として、賞与支払届を提出した場合で決算時も一時金を支給したた
め結果として年4回の賞与となった場合などは賞与支払届と重複して算定基礎届
に算入しないよう、その取り扱いにはあらかじめ年金事務所へ確認されることが必
要でしょう。
その他の主な注意点
その他の主な注点としては、資格取得時や定時決定の際の算定基礎届に「現物給
付」として算入しなければならない「住居の利益」や「食事の利益」などが漏れていた
り、特に法人役員の方に見られるのですが、複数の法人を経営されそれぞれ役員
報酬を受け取っているなど「2以上事業所から報酬を受けている」場合でも、適用事
業所選択届が出ていないケースなどです。もちろん、他の法人は非常勤役員などの
場合(ただし、非常勤とは形式ではなく実態判断が必要なため年金事務所とも相談
されるべきでしょう。ちなみに代表者は理論上、非常勤扱いは無理があると言えま
すので、特に注意と事前確認等が必要でしょう。)や報酬を受けていない場合などは
必ずしも2以上事業所勤務の選択届等は必要とは限らない事もありますが、複数の
法人の経営をしている場合などは報酬も含め社会保険の適用については十分に
注意されて下さい。同時に2以上の事業所で使用され、それぞれにおいて社会保険
被保険者とならなければならないケースでは、それぞれの事業所で受けた報酬は
合算されて標準報酬は決定され、それぞれ按分されて保険料を納めます。
会計検査院の実地検査に基づく年金事務所の調査
「会計検査院」という機関を時々テレビや新聞で見たり聞いたりしたことがあると思い
ます。「会計検査院」という機関は、国の収入や支出の決算や政府関係機関、独立
行政法人等の会計が適正なものなのかどうかを検査する憲法上の独立した機関で
す。従って、「社会保険制度」も国の制度であり、その運営機関である「日本年金機
構」の会計が適正かどうかも毎年検査されているのです。さらに、その検査において
「保険料は正しく徴収されているのかどうか」「保険給付は適正に給付されているの
かどうか」も年金事務所が検査対象となっているのです。。
ここまでですと、「会計検査院は年金事務所(日本年金機構)を対象に検査をしてい
るのだから、われわれ適用事業所には関係ない」と思われるかも知れません。とこ
ろがその調査は「総合調査」と同様、対象となった選定事業所(選定基準や選定方
法は公開されていませんが短時間のパートタイマー等を多く雇用している事業所や
年金受給者を雇用している事業所が対象となりやすいかも知れません。)について
「加入漏れ」や「徴収不足」「高齢者の加入漏れによる年金額の返還」をきちんと年金
事務所が調査しているのかどうかを会計検査院が検査をするのです。(もちろん、会
計検査院は年金事務所のみではなく、公共職業安定所や労働基準監督署、税務署
などの多くの政府関係機関等を検査する機関ですから、所得情報や給付情報は個
人単位で把握している機関と言えますので、老齢厚生年金受給額の検査の場合は
具体的な年金受給者の個人名を告げられての調査もあるのです。)

実際に行われた会計検査院による実地検査の内容がHPで公開されています。その
内容を見ますと、非常に多額の徴収不足が指摘され、容赦なく徴収決定措置が執ら
れている状況が報告されています。

〜参照(会計検査院HPより)〜
【平成25年度の会計検査院による検査報告(保険料徴収不足関連の検査) 】
http://report.jbaudit.go.jp/org/h25/2013-h25-0235-0.htm
【平成24年度の会計検査院による検査報告(保険料徴収不足関連の検査) 】
http://report.jbaudit.go.jp/org/h24/2012-h24-0211-0.htm

【平成25年度の会計検査院による検査報告(老齢厚生年金の給付関連検査) 】
http://report.jbaudit.go.jp/org/h25/2013-h25-0252-0.htm
【平成24年度の会計検査院による検査報告(老齢厚生年金の給付関連検査) 】
http://report.jbaudit.go.jp/org/h24/2012-h24-0230-0.htm


【「総合調査」と「会計検査院の実地検査」の違い】
年金事務所からの調査の案内の時点で「総合調査」なのか「会計検査院の実地検
査」なのかのいずれかの把握はできます。後者の場合は「会計検査院の実地検査
に伴う受検について」といった案内がされます。頻度とすれば多くは「総合調査」です
が、毎年、どこかで会計検査院の実地検査は行われています。
調査の内容としては「総合調査」と「会計検査」の違いは差ほどありませんが、「総合
調査」は年金事務所が行政運営の一環としての調査ですから、例えば加入漏れの指
摘事項についても、その状況や直ちに加入手続きを取るなど対策によって遡及手続き
まで求められない場合もあるようです。もちろん、厳格な決定がされても不思議では
ありませんので、決して軽く考えたり、甘く見てはいけません。また、調査記録は年金
事務所に保存され、再調査や次回調査などもあり得るため、しっかりと対応しなけれ
ばならないことは当然の事です。一方、「会計検査院の実地検査」は年金事務所が
検査されている立場でもある以上、指摘事項は法令に従い厳格に処理されます。そ
のため、指摘に対して会計検査院に今後の対策や「今から全員きちんと入れます」
「そんなこと知らなかった」などと言っても会計検査院は社会保険行政を行う機関で
はありませんし、保険料徴収漏れ等を検査している機関ですから、社会保険手続き
そのものの要望等を言っても、残念ながら、いわゆる「お門違い」になってしまい。聞
き入れて貰えません。だからと言って年金事務所に言っても、年金事務所は会計検
査院からの指摘事項に従う他ありません。従って、結局はそう言った指摘が無いよう、
日頃の社会保険の適正手続きに注意してゆくしかないのです。

今後は、公務員共済や私学共済も厚生年金に統合され「被用者年金一元化」がされ
ることが予定されており、(平成27年10月実施)民間企業においても、さらなる厳格
運用、厳格適用が求められることでしょう。現にその一環でしょうか、すでに平成23
年からおおむね4年間で全適用事業所に定時決定時調査を実施するなどが図られ
ていますし、今後に従って総合調査自体も厳しいものとなって行くと考えた方がよい
でしょう。

建設業についても国交省と厚労省が連携し、未手続き事業所の加入促進を進めて
いますし、建設業以外の業種でも年金事務所が常に未手続き事業所へ民間事業者
への委託も活用し加入指導を実施しています。厚生年金や健康保険などの社会保
険に関る加入指導や実地調査等が今後、厳格化してゆく方向にあることは、ほぼ間
違いないと考えられます。

現に平成27年4月以降は厚生労働省が国税庁とも連携し納税情報を共有すること
で未手続き事業所(約80万社)を割り出し本格的な加入実施が行われる方針である
ことは既に打ち出されています。

【遡及手続きを指摘されると非常に「厄介」な処理が...】
例えばパートタイマーの加入漏れが指摘され、時効にかかる2年前まで遡って加入
手続きを取った場合、当然に保険料が発生するのですが、その人数や過去の報酬
額によって、健康保険料と厚生年金保険料を合算し、数千万円を超える額となること
があります。そのような場合は当然ながら一回での納付は困難となりますので、分割
して納めることになるのです。しかし、その場合に発生するのが年14.6%の延滞金
です。従って、未納額が多く納付が遅れれば延滞金だけで数百万円の出費となる場
合も考えられ非常に多額で厳しい出費となってしまいます。加えて厄介なのが社会
保険料は「労使折半負担」というところです。過去2年に遡って数十万円の保険料を
従業員の方に清算してもらうことは非常に困難です。(ましてや退職してしまった方に
つてはほぼ無理なこともあるかも知れません。)また、その方が国民年金や国民健
康保険に自ら負担していた場合は各保険料の還付手続きが必要となり、そこから、
ある程度捻出し清算をお願いすることになるでしょうし、旦那さんの扶養となっていた
場合は「思わぬ大きな出費」となってしまうでしょう。(この場合は、旦那さんは勤
め先の会社へも「健康保険被扶養者(異動)届」等の提出により、奥さんを被扶養者
や国民年金第3号被保険者ではなくす手続きも必要です。)所得税にも影響します
から場合によっては税務上必要な手続きもあるでしょう。
健康保険や厚生年金保険は適用手続きが非常に甘い後手後手の状況である事業
所も度々散見され「調査があって初めて知る」と言った、状況は危険です。当然に私
たちも含め十分な注意喚起が必要な制度だと言えます。


労働保険料算定基礎調査
〜こちらも会計検査院の実地検査の場合もあり〜

きちんと労働保険料が申告されているかどうか
毎年、労働保険料について賃金総額を集計し労災保険料と雇用保険料を申告納付
していますが、この労働保険料が正しく申告されているのかどうか調査されることが
あります。なお、多くの事業においては労働基準監督署で行われますが、建設業等
で二元適用(労災保険と雇用保険をそれぞれ別に申告)の場合は雇用保険につい
ては都道府県労働局等で行われます。この申告内容についての調査についても、資
料を持参して各労働基準監督署(あるいは都道府県労働局)で行う方法が多いようで
す。調査対象も原則として前2年度の2年間について行われますが、場合によっては
前年度のみを対象に行われることもあるようです。持参する資料も各保険年度にか
かる賃金台帳や労働者名簿、出勤簿等が求められます。なお、建設業の元請工事
の場合は対象年度に終了した工事台帳や工事請負契約、総勘定元帳などが求めら
れます。(建設業で下請事業主に雇用される賃金総額で申告する場合は、賃金台帳
や作業日報等が求められます)特に建設業の場合は労災保険料の算出に際して、
賃金総額を労務費率を用いらずに実質賃金で算出されている場合は算出が適正か
どうかの調査も多いようです。
雇用保険の加入漏れに注意!
雇用保険被保険者はパートタイマーやアルバイトであっても@1週間の所定労働時
間が20時間以上であり、A31日以上の雇用見込みがある場合は原則として強制適
用です。法人役員や同居の親族(ただし、公共職業安定所へ各種雇用実態証明書を
提出し、雇用保険被保険者となる場合を除く)の方、高校生や大学生や専門学校
生等の昼間学生など一定の場合は雇用保険被保険者となりません。雇用保険の適
用を受ける方は強制適用ですので十分に注意が必要です。※平成29年1月1日以
降は雇入れ時点で65歳以上であっても雇用保険被保険者資格を有する方は雇用
保険被保険者となりますので「雇用保険被保険者資格取得届」により所轄公共職業
安定所へ届出が必要です。
その方は労働者に該当しますか?
労災保険料の算定基礎に含めるべき賃金は保険年度中に労働者に支払われた賃
金総額となります。そのため、意外と「この方は労働者に該当されるのかどうか」の
判断が重要な方がいます。例えば使用人兼務役員であったり、事業主と同居の親
族などです。このような方は「労働者性」の判断があり、使用人兼務役員については
役員報酬と賃金がどのように区分されているかも重要になります。(特に労災事故が
発生したときに、労働者性の判断の重要な要素となります。)労働者に該当する場合
は、その方の賃金(役員報酬は賃金ではありません。)も算入漏れのないように注意
しなければなりません。なお、労働者として取り扱わず特別加入者として労災適用を
受けたい場合は別途、労働保険事務組合に委託し第1種特別加入保険料を納めな
ければなりません。特別加入制度は労災適用を受けられない役員や事業主と同居
の親族を対象とした任意に加入できる制度です。なお、一人親方等(第2種)や海外
派遣者(第3種)も対象としています。
使用人兼務役員や事業主と同居の親族等の適用の判断はこちら 
(厚生労働省※PDFファイルです。)

また、福祉作業所など就労継続支援施設も雇用型であるA型である場合は当然の
ことながら、雇用契約を結んだ労働者である障がい者の方に支払う賃金も労災保険料
の計算基礎に含め、労災適用を受けることになります。もちろん雇用保険の被保険
者となる資格を有する方は雇用保険の適用も受けます。一方、非雇用型であるB型
施設の場合は、雇用契約を結ばず、就労支援を受ける障がい者の方は施設利用者と
なり、作業に伴い支給する工賃は賃金総額に含めず、その利用者の方は原則として
非雇用型であることから労災や雇用保険の適用を原則として受けないことになりま
す。(B型施設の利用者の工賃のあり方や労災保険等の適用についてなど、制度の
あり方として、検討が必要な部分なのかも知れません。)

訪問介護事業に従事するいわゆる「登録型ヘルパー」である介護職員の方は訪問介
護事業所に使用され指揮監督等を受けて訪問介護業務に従事されている方も労働
基準法第9条の労働者に該当しますので、その方に支給される給与も賃金総額に含
めなければなりませんし、雇用保険の被保険者となる資格を有する方は当然に雇用
保険の適用も受けます。

さらに、出向社員の労災保険については出向先での賃金総額に含める取扱いとなっ
ていることなどにも注意が必要です。
元請工事と下請工事の請負金額
建設の事業については、その保険年度中に終了した元請工事について、その請負金
額に労務費率を乗じた額を賃金総額として労災保険料算定基礎賃金を求めることに
なっています。これは工事毎に全下請事業の従業員の賃金総額を正確に判断する
ことが困難な場合に用いられる計算方法です。(賃金総額を正確に判断して算出する
方法でも可能です。)そこで、下請工事の請負金額まで含めてしまったり、若しくは昨
年度からの工事で今年度中に終了した元請工事の算入が漏れてしまったり、注文者
からの資材の支給を受けたり、機械器具等を貸与された場合のそれらの相当額の算
入漏れの無いように注意しなければなりません。工事経歴書や施工体制台帳、総勘
定元帳等で確認して下さい。

工事でも注意が必要なのは、いわゆる「売買契約」に「工事代金」が含まれているケ
ースなどです。例えば太陽光パネルや機械設備等の販売施工を行っているA社が設
置工事を下請工事会社B社にお願いする場合はA社は元請事業主として、B社の行う
設置工事にかかる労災保険料を負担しなければならない場合があります。ちなみに
建設業法では公共工事はもちろんのこと民間工事についても、発注者(施主)から工
事を直接受ける元請事業主が「工事はすべて下請事業主の○○が行う」と事前に書
面により承諾を受けている場合を除き丸投げ工事は禁止されている点にも十分注意
して下さい。(公共工事は事前に書面による承諾を受けていても全面禁止)「当社は
機械設備の販売はするけど直接工事を行いませんので、労災は下請業者のBさん
が自社で行って下さい」は、、A社が取付工事を施主等から直接受注し工事代金も受
けて下請工事をB社へ発注しているのであれば、たとえA社が家電販売店や商社で
建設会社でなくても工事を発注者(施主等)から直接受けている「元請事業主」になる
場合もあると考えられますので工事の受注関係についてその適用に十分注意、確認
し、不明点にいつては予め労働基準監督署へ必ず相談・確認されて下さい。
(昭和50年7月10日発労徴第49号、基発第388号)

また、建売住宅の建築・施工の場合で着工時に買主が決まっていない場合は建売
販売を行う住宅販売会社が発注者となり、その住宅販売会社から受ける各種専門
工事会社がそれぞれ元請事業主となる等の場合がありますので、建売住宅の着工
時に買主が決まっているかどうかで元請負人か下請負人かの判断が必要になりま
ますから建売住宅の場合は、その点にも注意が必要になります。
会計検査院の実地検査に基づく労働保険料調査
労働保険料の申告内容に関する調査も社会保険の総合調査と同様に会計検査院
による実地検査に基づく調査があります。労働保険料の場合は一般的には賃金の
算入漏れや元請工事にかかる請負金額の算入漏れなどですが、やはり雇用保険の
加入漏れによる徴収不足に注意が必要です。また、逆に過大徴収として返還される
ケースも割合多いようです。(例えば認識不足により役員報酬も賃金総額に含めて
いたり、誤って下請工事の請負金額まで含めていたなど多く納めていた等)

〜参照(会計検査院HPより)〜
【平成25年度の会計検査院による検査報告(労働保険料徴収過不足関連の検査) 】
http://report.jbaudit.go.jp/org/h25/2013-h25-0233-0.htm
【平成24年度の会計検査院による検査報告(労働保険料徴収過不足関連の検査) 】
http://report.jbaudit.go.jp/org/h24/2012-h24-0209-0.htm


労災において「建設の事業」とは建設業法に規定される28種類以外でも、例えば
重機等により除雪を行う事業や重機等による原発の除染作業、測量会社や建設コ
ンサルタント等が地質調査により行うボーリング工事など建設の態様を伴う作業に
ついては労災保険においては「建設の事業」として取り扱われますので、建設業法に
規定される「建設業」にあたらなくても労働保険料等徴収法等については「建設の事
業」に該当する場合も存在する点も十分に注意し、判断に迷う場合は必ず労働基準
監督署で確認されて下さい。あくまで労災保険率表による適用事業細目により、判断
されます。


その他の調査について
〜雇用関係助成金の調査なども多い〜

助成金関係の調査
雇用関係助成金制度のうち、多くは実際に適正な手続きであったかどうか調査がされ
ることがあります。支給決定が出され実際に受給した後に行われる調査も多いと言えま
す。この雇用関係助成金も公的な資金を利用していることから会計検査院の調査の対
象ともなります。その場合の調査方法は、いわゆる立入検査などではなく申請に関連し
た書類の原本(賃金台帳や出勤簿、総勘定元帳など)を調査実施期間中、公共職業安
定所や労働局等へ預ける形で行われます。なお、偽りその他不正の手段により給付を
受けた(受けようとした)いわゆる「不正受給」については、助成金の種類によっては、各
労働局のHPで企業名が公表されるものもあります。
派遣事業関係の調査
労働者派遣事業や職業紹介事業について、適正に運営されているか労働局による立入
検査が行われることがあります。労働者派遣法違反等が無いかを調査され是正指導
がされます。立入検査は派遣元、派遣先へも訪問して行われ悪質な違反が見られると
業務停止命令や許可取り消し命令がされることになります。各都道府県需給調整指導
官がその職務にあたります。


どの会社でも調査対象となっている!!
社会保険や労務管理は「社内の事」であることは確かですが、その条件基準や適用
についての価値規範は社会との調和を必要とします。そのためにどの会社にも将来
に向って必ず調査が来る仕組みが出来上がっています。

しかし、習慣化は平常となりますので、労務管理や社会保険の相談等を受けている
と、「前の会社(知り合いの会社)はこうだった」「そんなこと聞いたことが無い」「まとも
にしてたら会社なんて持たない」など、ある種の「頑丈な壁」を、まずはどう排除する
べきか困難を感じることもあります。しかし、「知っておけば何てことないこと」も実は
多く、例えば社会保険に加入しなければならない未続きのパートタイマーの方も週
で「たった1日だけ勤務時間を短縮すればいわゆる3/4条項に掛からない」ケースや
所定休日に労働させた場合でも法定休日が担保されていれば、法定外休日となり
時間外労働の割増賃金でよいルールを把握していなかったり、十分に変形労働時
間制で対応でいると言ったことも少なくありません。要するに「労働基準法」や「社会
保険」あるいは「法律」「役所」と言った言葉だけで拒絶する前に、何事も「まずは知る
こと」がやはり重要なのだと思います。

経営者の方も人間である以上、さまざまな要求が矢継ぎ早に付きつけられ、「従業
員のこと」をはじめ、「お客様のこと」「取引先とのこと」「お金のこと」「商品のこと」な
ど、次から次へと問題や課題が去っては現れ、去っては現れの毎日。本当ならその
プレッシャーに押し潰されそうになることもきっとあるはずだと思います。
そんな中、突然、御社に労働基準監督官が訪れるかも知れませんし、年金事務所か
ら総合調査または会計検査院による実地調査についての案内があるかも知れませ
ん。また、労災事故も予期せぬものです。

事前に調査内容や制度を知り、指摘事項に向き合う。苦難となることもあるかも知れ
ませんが、御社にとって大切な従業員の方々や社長ご自身のためだと考え対応
し、さまざまなリスクから回避できますよう、いつも願っています。


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