労働基準法第15条、第18条の2、第22条(第2項)、第89条(第3号) |
解雇に関する改正点は以下の4点です。
@「解雇権濫用法理」の明記(法第18条の2)
A就業規則の絶対的必要記載事項である「退職に関する事項」として「解雇の
事由」を記載する必要を義務づけ(法第89条第3号)
B労働契約締結時に「解雇の事由」を書面交付により明示(法第15条)
C労働者の「解雇理由の証明書」の請求と使用者の交付義務(法第22条第2項)
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解雇権濫用法理の明記(第18条の2) |
解雇とは使用者による労働契約の解約の申入れであり、民法第627条で雇用の
期間を定めない雇用契約について当事者はいつでもその解約の申入れができる
とされています。また、解約の申入れ後二週間経過するとその雇用契約は終了す
るとされています。労働基準法第20条においては解雇の手続きとして解雇予告
(少なくとも30日前又は平均賃金30日分以上)が必要と規定されています。従っ
て、使用者は解雇権を当然に有することになります。一方、民法第1条第3項にお
いて権利の濫用が禁止されており、解雇権行使に対し一定の歯止めをかけていま
す。解雇の有効性については法律上に示されておらず、個別判断に委ねられるこ
とになり、最終的には裁判上で個別に判断されることになります。従って、解雇権行
使には客観的に「合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が要求されることにな
ります。「解雇権濫用法理」とは昭和50年に最高裁で解雇権濫用の基本的考え
方が示され確立された判例理論であり、今回の労基法改正においては労基法第
18条の2として「解雇は、客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認
められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と明記されまし
た。
※本条文は解雇権濫用法理を法律上に明定したものであって、解雇権行使につい
て客観的合理性や社会通念上の相当性の評価の前提となる事実について、その
多くを使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判上の実務を変更する
ものではありません。
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就業規則への「解雇事由」の記載(第89条(第3号)) |
就業規則には絶対的必要記載事項(必ず定め必ず記載しなければならない事項)
があり、その中に「退職(退職手当を除く)に関する事項」があります。今回の改正
では、この「退職(退職手当を除く)に関する事項」として「解雇の事由」が追加され
ました。
※就業規則に「解雇の事由」が記載されていない場合は新たに追加し、従業員の
代表者(労働者過半数が加入する労働組合がある場合は労働組合)の意見書を添
付し、労働基準監督署へ届出を行い事業場の見やすい場所に備え付けるなど周
知させなければなりません。
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労働契約締結時における「解雇事由」の明示(第15条) |
これまでも、労基法第15条において労働契約締結時(雇入れの際)に労働条件を
明示しなければなりませんでした。また、労働契約の期間や就業場所、始業終業
時刻や賃金、退職に関する事項は必ず書面交付(労働条件通知書など)で明示し
なければならないとされていますが、解雇についての事前予測可能性を高めるた
めに「解雇の事由」も書面交付により、使用者は労働者へ明示しなければなりませ
ん。 |
解雇理由の証明書の交付(第22条(第2項)) |
これまでも、労基法第22条において労働者が退職の際に使用期間、業務の種類、
地位、賃金又は退職事由について証明書を請求した場合は使用者は遅滞無く交付
しなければならないとされています。今回の改正はこの退職証明に加えて、労働者
は解雇予告をされた日から退職日までの間に、解雇理由についてその証明書を請
求することができます。また、請求を受けた使用者はこれを交付しなければなりませ
ん。(但し、解雇予告がされた日以後に当該労働者が解雇以外の事由によって退職
した場合は、使用者はこの証明書を交付する義務はありません。) |