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(業務インフォメーション)

賃金不払い残業の撲滅とワークライフ・バランス(仕事と生活の調和)の2つの視点

最近の労務管理の傾向として、「ワークライフ・バランス」への取り組みが重要になりつつあります。
平成22年4月1日からは労働基準法も改正され、時間外労働については割増賃金のみならず、代
替休暇(改正により引き上げられた割増賃金部分に代替する有給休暇)による付与が可能となる制
度ができることや、年次有給休暇取得促進の一環として、労使協定による時間単位での取得が可能
となるなど、「仕事と生活の調和」を図るべく環境整備も労働基準として整備されつつあります。これ
までは、「労働時間管理」と言えば、どちらかと言えば「割増賃金」の問題としてとらえられる傾向が
強く、厳しい経済情勢下の企業にってみれば「割増賃金=コスト」をいかに抑えるかが重要視され、
これが「名ばかり管理職」や「不適切な労働時間の自己申告」を発端とする「賃金不払い残業」などの
問題の温床を生み出す要因となっていたと考えられています。

しかし、労働時間というのは「賃金」だけの問題ではなく、働く従業員の「心身の健康」にも関わるもの
であり過労による「うつ病」やひどいケースですと命を落とす危険性すらはらんでいます。
「コスト削減は安全の削減であってはならない」ものであり、「コスト削減」と言っても、そこは絶対に
履き違えてはいけない部分です。

「働く」ということは、「時間に拘束される」ことでもあり、一定のプレッシャーなど緊張感が必ず伴いま
す。もちろん、そのプレッシャーは必要であり、その中から生み出される付加価値は計り知れない利
益(売上など数値的なものだけではなく、「喜び」や「感謝」、「達成感」と言った「思い」に至る部分も含
めて)を生み出します。しかし、そのプレッシャーが例えば週60時間を超える時間外労働が長期間に
わたる場合や店長の名のもとに休みのない過酷な勤務が強いられ続けられるなど限度を超えたもの
となれば、人間である以上、必ず「疲労」となり、「それがいつまで続くかわからない」「あたりまえにされ
てしまっている」となると、「人を壊す」結果となりかねません。過重なプレッシャーも長時間に縛られ
限界を超えると「人は壊れてしまう」のです。


労務管理は適正な待遇管理の他、健康管理の視点も欠かせません


労働時間の適正把握について
〜労働時間等に関する規定の適用除外となる管理監督者とは?〜

日々の労働時間については、会社はきちんと把握しなければなりません。就業規則等で始業時刻
および終業時刻を定めていることはもちろんのこと、タイムカード等で客観的に記録しておく必要が
あります。残業などについても、その必要性や仕事量の配分にも留意し、「残業報告書」や「業務日
報」なども活用し適正に把握する必要があります。場合によっては残業規制を行ったり、一部の従
業員に業務が集中しすぎないよう課題設定の見直しや変更(「課題自体が無理がある」こともある)
チームの再編成なども行う必要性もあるかも知れません。

もっぱら、割増賃金計算のための労働時間の把握については、管理監督者(役職名などの呼称の
問題ではなく、人事管理を行う立場にある者などで管理者にふさわしい処遇を受けている者など実
態により判断)や裁量労働制の適用者等については適用除外とすることは可能とされています。た
だし、これはあくまで実態により判断されるべきものであるため、呼称や形式のみをもって適用除外
とする(例えば、実態を考慮せずに「店長」は管理職とする等)ことは許されません。なお、管理監督
者であっても深夜時間(午後10時〜翌朝5時まで)に支払う割増賃金は適用しますので注意が必要
です。

【監督または管理の地位にある者の範囲】(S22.9.13基発17号、S63.3.14基発150号】
労働基準法第41条第2号(労働時間等に関する規定の適用除外)に定める「監督若しくは管理の地
位にある者」とは?
@労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者
A労働時間、休憩、休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請せざるを得ない重要な立場
 と責任を有し、現実の勤務態様も労働時間などの規制になじまないような立場にあること
B賃金などの待遇面でその地位にふさわしい待遇がなされていること
を総合的に判断する必要があります。

従って、本来労働時間等に関する規定の適用除外をうける管理監督者は極めて限定される狭い枠
の範囲であり、「権限と責任(経営者と一体的な立場)」」「勤務態様(勤務時間について厳格な管理
を受けない)」「それにふさわしい待遇」が伴って初めて判断要素を主張できると考えなければなりま
せん。


管理監督者等の適用除外は、なぜ認められているのかを十分に留意


労働時間の適正管理について

労働時間の把握に関連しますが、労働時間の「管理」は適正かどうかと言った問題があります。
実は「労働時間管理」は割増賃金を計算するために行うものではなく、従業員の「健康管理として」
行うべき管理なのです。従って、裁量労制の適用者やみなし労働時間制の適用者、管理監督者で
あっても「健康管理」は必要ということになります。労働基準法と言うのは、すでにご存じのとおり、
1日の労働時間や1週間の労働時間を規制している法律です。(労使協定に基づく時間外労働や休
日労働の上限についてはガイドラインがあります。)割増賃金さえ払えば良いという問題なのではな
く、労働時間については別に基準があり、罰則もあるということになります。(労働基準法は刑罰法
規である以上、労働基準監督官にも司法警察の職権を有し最終的には司法処理がされ得るもの
です。)従って、会社には雇用責任として全ての従業員に対して「労働時間の長さ」と「健康への配
慮」をする必要があります。労働安全衛生法では週40時間を超える労働で1箇月100時間を超え、
かつ疲労の蓄積が認められる労働者が申し出た場合は医師による面接指導を受けさせる義務が生
じるとされています。また、週40時間を超える労働で1箇月80時間を超える労働者の申出等の一定
の長時間労働についても医師による面接指導やそれに準ずる措置を講じなければなりません。(労働
安全衛生法第66条の8、第66条の9、第104条)


労働時間管理は健康管理であるという再認識が求められている

平成22年4月1日から改正労働基準法が施行され、1箇月60時間以上の時間外労働の
割増賃金率の引き上げ措置(中小企業は当分の猶予措置がある)および、その部分の割
増賃金との代替休暇や年次有給休暇の取得促進のための時間単位の付与が可能となる
などの取り組みがされます。現状の御社の労働時間について、大切な従業員様の「健康
管理」といった視点を再確認しながら、今一度点検されて見て下さい。



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