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Q
解雇にはどんな種類があるのでしょうか?また、どのような解雇が認められるので
しょうか?
A
解雇は普通解雇と懲戒解雇に大別することができます。まず、普通解雇ですが、
普通解雇とは人員整理や従業員がその業務に不適格と判断される場合などに行
なう解雇です。一方、懲戒解雇は従業員が懲戒事由に触れる行為をしたことによ
って行なう制裁としての解雇となります。どちらにしても、会社からの労働契約の
解約権の行使となります。
現在、法律で解雇を制限する規定は業務災害による
療養中や産前産後休業中及びその後30日間の解雇の禁止や育児・介護休業を
申し出たことを理由とした解雇の禁止、労働組合員であること及び労働組合に加
入もしくは結成、結成しようとしたことの故をもっての解雇の禁止などいくつかの解
雇を無効・制限する規定がみられるぐらいで何をもって合理性があるかどうかを定
めた規定は見あたりません。その意味では法的には解雇は自由に行なうことがで
きると言えるかも知れません。しかし、一方で法律は権利を濫用することを禁止し
ています。(民法第1条)そのため、解雇権が濫用されているかどうかは個々の事
実関係によって具体的に判断されなければなりません。但し、一般論として言える
ことは不合理な解雇をするとか、労働契約に内在する信義誠実の原則に違反して
の解雇は権利の濫用として無効とされるでしょう。

Q
長引く不況で整理解雇を行なう計画が大手企業でも目立ちはじめましたが、整理
解雇を行なう場合のいわゆる4要件とはどのようなものなのでしょうか?
A
「労働者は労働契約に基づいて就労している」ということを認識していない人は非
常に多いようです。実際上、「労働契約書」などといった書面により契約を交わして
就労することは殆どなく実感として、労働にも「契約がある」という意識を持って就
労している者や経営者はそう多くはないのではないでしょうか?しかし、「就労し賃
金を得る」或いは「賃金を支払、労働させる」といった利害が生じている訳ですから
そこには当然、「ルール」が存在することになります。わかりきっていることでも、
社会経済状況により「リストラ」やその最終手段となる「人員整理」を行なわなけれ
ば経営再建は難しく、より多くの社員や家族を路頭に迷わせるこ結果になりかねま
せん。そこで、「整理解雇」の適法性を判断するために、判例は厳格な4要件を要
求してきました。その4要件は次のとおりです。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
@ 客観的見地から人員削減措置が業務上必要であるか
A 労働時間短縮・配転、出向・一時帰休・新規採用の中止
希望退職者募集など整理解雇回避に努力がなされたか
B 整理解雇される人員の選択基準に合理性及び妥当性が
あるか
C 労働者や労働組合に対して誠意をもって十分に協議・説
明をしたか
最近では、この4要件すべてが存在しなければ法的効果が発生しないという意味
での要件ではなく、4要素を総合的にとらえて判断す るべきであるとする考え方
が、東京地裁等でみられるようになりまし  た。また、パートタイマーや期間雇用
者など一般に終身雇用・年功序列の下にない労働者や従業員が小規模の中小零
細企業については必ずしも、4要件が判断要素として束縛されるわけではなく、雇
用実態や企業規模を踏まえて判断する必要があるでしょう。
<参考>
ナショナルウェストミンスター銀行事件:東京地裁判決(平12・1・21)

Q
一度提出した「退職届」を撤回することは可能なのでしょうか?
A
実は「退職届」には2つのとらえ方があります。それは@合意退職の申込みとA労
働者の一方的な意思表示です。@の場合は「退職願」「辞職願」Aの場合は「退職
届」「辞職届」と、記載区分をしていればわかり易いのかも知れませんが、一般的に
はそのように記載分けているとは考えられません。そのため、原則的には@ととらえ
るべきでしょう。但し、既に転職先が存在しているなど、明らかに一方的な意思表示
と認められる場合は当然、Aに該当することになるでしょう。
さて、それでは一度提
出した「退職届」を撤回することは可能なのでしょうか?これは、@とAによってそ
れぞれ異なります。@の場合は合意退職の申込みの承諾権者(会社)の意思表示
があって労働契約が終了します。従って、承諾権者からの意思表示が到達するまで
は撤回することが可能とされています。但し、意思表示到達後や承諾権者に不測の
損害を強いるような特段の事由が存在する場合は不可能といえます。一方Aの場合
は原則として、退職願を提出した時点で一方的に撤回することはできません。

Q
経営者が解雇権を濫用する訳がない!我が社にとって、利益をもたらさない者を解
雇をしてもよいではないか!何故、日常では「解雇はできない」と考えられているの
か!
A
先の質問でも若干触れましたが、解雇の有効性については法律では一定の制限事
由(産前産後休業中または業務災害療養期間中及び終了後30日間の解雇制限や
労働基準監督署へ申告したことを理由とした解雇の無効など)が見られるくらいで、
原則としては触れられていません。従って、法律上では解雇は自由ととらえることが
できます。しかし、殆どの方は「解雇は自由」とは考えないでしょう。それどころか「解
雇は不自由」とか「解雇は本来許されない」と考えているはずです。これは、日本型
雇用システム(終身雇用制と年功序列制)の形成を踏み、雇用社会の実情から生ま
れた「解雇権濫用の法理」という、裁判所が確立した法論理の影響があると思われ
ます。この「解雇権濫用の法理」とは、裁判所が懲戒解雇や普通解雇について労働
者保護の観点からそれは過酷すぎないかどうか、解雇権濫用とされないだけの合
理性や妥当性が存在するかどうかをあらゆる実情のうえで判断するための法理論
です。法律は雇用社会のルールや規制を定めたものであり、判決(判例)は雇用社
会のトラブルを裁定し結論を下すものです。雇用社会はトラブルの防止→法律、発
生したトラブルの決着→判決の間に存在しているといえます。いわば、法律と判例は
必ずしも一致しているとは言えず、これは矛盾があるともとらえることができます。
その為、「解雇権」を与えられた「会社」には「解雇権行使」が解雇権濫用にあたらな
いかどうか、客観的合理性を有するかどうかを考えて行く必要があるのです。
これは、解雇を巡る労使紛争を防止する企業防衛のための「リスク管理」でもあるの
です。
<参考>
日本食塩製造事件:最高裁判決(昭50.4.25)

Q
先日、当社の社員が万引きをしたために懲戒解雇処分を行なった。ところがその社
員は退職金欲しさに辞表を提出してきた。当社の退職金規程では「懲戒解雇につい
ては退職金を支給しない」と明記しているだけである。そのため、この辞表を受取って
しまったら退職金を支給しなければならないのだろうか?
A
結論から言えば、退職金を支払う必要はないと言えます。社員は退職する権利を
有しているため辞表を提出することができます。また、会社側もそれを受取るべき
でしょう。しかし、この辞表の提出によって懲戒事由が消滅するわけではありませ
ん。それは、たとえ解雇日前に退職を申し出た場合も同様です。即ち、退職金を受
ける権利を有する訳ではありません。尚、懲戒事由が発覚する前に辞表を提出し、
退職してしまった場合はどうなるのでしょうか?この場合は、懲戒事由が発覚してい
る限り、退職金を支給しないものと解することは十分可能であるといえます。
<参考>
大器事件:大阪地裁判決(平11.1.29)





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