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(業務インフォメーション)


就業規則ってそもそも何だろう?
〜常時10人以上の労働者を使用する事業場には作成義務あり〜
就業規則は重要な社内規則、ルールです。実際に賃金や労働時間、休日、退職金、パ
ートタイマーの就業など多くの確認事項や課題、変更点などについて多くの疑問、相
談が業務上当然に発生します。私も多くの会社の就業規則をその会社と一緒に作成し、
あるいは変更し、また相談・確認に応じてきました。依頼される要望も「社員が増えてき
たからそろそろ作成したい。」「この助成金制度の活用を考えているのだが就業規則を
どう変更したらいいのか。また、そうするとどんなことが想定できるのか伺いたい。」「社
員に就業規則はどうなってるのか相談され対応したい。」「現社長が会長となり私が次
期社長となるため、就業規則も今のうちにきちんと整備しておきたい。」など、まずは法
律云々は置いといて当然のことながら事情や動機も各社異なります。社員に内容につ
いて意見を聴いたり、周知させたりする必要性はありますが、作成、変更の立案段階に
おいて経営者にとって就業規則についてはなかなか社員に相談するわけにもいかない
ことだと思います。

もちろん逆に私の方から提案する場合もあります。その場合中には就業規則作成につ
いて躊躇される方もおられます。なぜでしょうか。就業規則は年次有給休暇や割増賃
金、育児・介護休業、公民権行使の取扱いなどいわば労働者の権利に該当(会社にと
っては義務)する事項も記載されるからでしょうか。事情についてお話をお伺いすると、
なるほど確かにわからないでもありません。経費削減が至上命題である今日において
業務効率を追求されつづけ、厳しい競争の中いっぱいいっぱいの人員で日々仕事をさ
れています。そのような現状の中、有給休暇を一度に取得されたり、逆に残業代目的
に多くの社員が残業するようになったりされたら逆に困るとお考えになるのは決して不
思議なことではありませんしむしろ当然のことかもしれません。経営者から資金面や資
金繰りの厳しさなどを説明され「現実」という言葉に難しさを感じることももちろんありま
す。特に作成においては年次有給休暇と割増賃金の部分は大きなハードルなのかも知
れません。

でも、ちょっと待って下さい。これらについては「権利や義務」の問題というよりまずは「管
理」の問題ととらえた方が妥当だと思います。社員がおられればその人数に比例するが
のごとく労務管理は重要な位置付けとなります。そもそも労務管理とは読んで字のごとく
「労務」に関する「管理」であり、会社が行う働く人の管理です。労務に関する「何」を管
理するのかを把握しておかないと経営上やがて大きな障害にぶつかるリスクもあるの
です。社会保険同様、労務管理もリスクヘッジとしての側面もあるわけです。また、何よ
り会社は社会に貢献し利益を得るわけですから、そこには貢献当事者となる経営者と
社員の質の高い労使協調関係が欠かせないはずです。基準を知れば管理も見え、そ
れが経営戦略上の環境基盤ともなります。例えば年次有給休暇については会社はその
取得しようとする社員からの時季指定権に対し時季変更権(事業の運営上取得さると支
障が生ずる場合に他の日に変更することができる)が認められておりますし、付与の仕
方も計画付与を採用する方法もあります。残業についても残業規制(残業や休日労働
の許可制や届出、報告制など)も認められるはずですし、変形労働時間制の採用も一
考に値するものです。あるいは一定の時間枠について一律残業手当とするなど賃金体
系上で検討、整備する方法だってあるかもしれません。

あえて労働者の権利と言うのであればそもそも就業規則があろうとなかろうと年次有
給休暇も割増賃金も含め当然にそれは法によって担保されているものですから、や
はり就業規則作成が義務付けられている事業場であれば規則が整備されていない
こと自体がリスクとしてとらえた方が妥当と言えるでしょう。(今日のように、情報化が
進むとこのようなルールや基準が容易に把握できるようになります。それにより、多
様化し個別化したトラブルのリスクも増大して行きます。)そのため経営者だからこそ
先立って労働者の権利や就業規則を知ることがますます重要になってゆくと思われ
ます。成果主義や業績主義などを模索するのであればコンプライアンス(遵法)は尚
のこと重要な意義を持つことでしょう。


就業規則は「取扱い説明書」
例えば毎月支給する給与の一部に「通勤手当」があったとします。通勤手当ですから
当然に支給されない方もおられる場合もありますし交通手段や自宅と会社との距離な
どにより支給額も異なる場合が多い手当と言えます。そのため会社としてはどのような
方を対象にどのような主旨で支給する手当なのかを決めているはずですから説明でき
なければなりません。その説明を就業規則の通勤手当の規定に記載し周知をはかれば
よいことになります。疑問というのは「知らなかった」「聞いてなかった」「わからなかった」
と言ったところから始まるものです。それに納得がいかなかったり突然言われた事でご
まかされた気持ちになったりするとトラブルに発展することもあるでしょう。就業規則は
予め規定し周知しておく(会社にとっては理解・把握しておく)事でかなりトラブルを防ぐ
ことができるものなのです。いちいち就業規則で確認するぐらいでも丁度良いものなの
だと思います。(労働契約締結時についても会社は労働条件について事前に明示する
義務があります。)ちょっとした事でも、するかしないかによってその効果は大きく異なる
ものです。また、一度決めた労働条件を変更することも可能です。もちろんそれが不利
益変更の場合は説明根拠や説明責任が重要となり、客観的合理性や社会通念上の相
当性が要求されますが、その場合でも就業規則の「どこ」を「何のために」「どのように」
変更するのか説明するにも周知された就業規則があるのと無いのではその納得性にも
大きな違いがあると思われますし会社全体のモラール(士気)に与える影響も大きく異な
ると思います。労使が把握できる確認ツールである就業規則は会社を守ってくれるもの
です。日々の運用においても会社の就業規則に関連する社内書式の作成・活用もコミ
ュニケーションツールとして有効だと思います。


就業規則は労使共に遵守しなければならな
い重要なコミュニケーションツール。指揮命
令権を持つ経営者は説明責任も求められる。
従業員には労務提供義務がある。労使共に
遵守すべきものである。


会社の方針によって規定の内容にも違いがでるもの
書店に行くと就業規則についての優れた参考書は多くありますし、モデル就業規則も
多く目にする事ができます。参考書(新しいもの)を利用するのは非常に有効です。
ただし、注意しなければならないことは、一つ一つの規定を把握することです。特に絶
対的必要記載事項(必ず定め必ず記載しなければならない事項)は労働条件の核とも
なる事項ですし、相対的必要記載事項(定めがあれば必ず記載しなければならない事
項)は会社の実情においてその必要性を十分に吟味する必要もあるはずです。何も検討
せず、また内容の把握もしないまま、間に合わせ的に自社に置き換えて使用するのは
絶対に避けるべきでしょう。

絶対的必要記載事項
始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇(年次有給休暇や育児・介護休業、
産前産後休業なども含まれます)並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業さ
せる場合においては就業時転換に関する事項
賃金(賞与など臨時に支払われる賃金を除きます)の決定、計算及び支払の方法
賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
退職に関する事項、(解雇の事由も含む。退職手当については除きます)
相対的必要記載事項
退職手当の定めをする場合は、適用される労働者の範囲、退職手当の決定計算
及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
臨時の賃金等(退職手当を除きます)及び最低賃金額の定めをする場合は、これ
に関する事項(賞与額の支払方法、支払の時期など)
労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これ
に関する事項
安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
災害補償及び業務外の疾病扶助に関する定めをする場合においては、これに関
する事項
表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項(減
給の制裁を定める場合は、1回の減給額が平均賃金1日分の半額を超え、総額が
1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはなりません)
以上の他、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合におい
ては、これに関する事項
就業規則には絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項がある


基準監督行政の専門機関「労働基準監督署」
労働条件には最低基準を定めておりその監督行政機関として労働基準監督署が各地
に配置されています。仮に労働基準がなければ経営において指揮命令権を持つ経営
者が長時間労働や低賃金など劣悪な労働条件を提示する事も可能となり、それが横行
し最低限度を知らなければ消費や社会保障など経済社会全体にも大きな損失を及ぼす
ことにもなるでしょう。労働者は会社の従業員であるのと同じに消費者であったり、納税
者であったり社会保険被保険者であったり、社会にとっては社会の構成員といった存在
でもあるわけです。雇用というのは実に責任が重たいことを思わせられます。従って労働
基準監督署は労働基準法や労働安全衛生法、労災保険法といった労働行政にかかる専
門行政機関として存在しています。また、平成20年3月より労働契約法といった個別労働
契約にかかる法律が施行されましたが、当然のことながら労働契約上における民法など
私法上における適用も受けることは言うまでもありません。労働契約における債務不履行
など損害賠償による慰謝料請求など民事上のトラブルについては最終的な判断は裁判
所等の司法処分によることになります。
労働基準法第97条(監督組織)
第1項
この法律を施行するために、労働に関する主務省に労働基準主管局(労働に関する
主務省の内部部局である局で労働条件及び労働者の保護に関する事務を所掌する
ものをいう)を、各都道府県に都道府県労働基準局を、各都道府県管内に労働基準
監督署を置く。
労働基準法第101条(労働基準監督官の権限)
第1項
労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類
の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対し尋問を行うことができる。

労働基準法第102条
労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察
官の職務を行う。
就業規則は労働条件における最低基準の確保だけではなく民事上
のトラブルを事前に防止するためのいわば予防法務の一環でもある。


「是正勧告」とはなんだろう?
〜リスク対応は形のみではなく意識〜
労働基準監督署が行う監督業務として「是正勧告」といわれるものがあります。この
「是正勧告」とは労働基準監督官が法律に違反すると考えられる事項を「是正勧告書」
という文書を交付することにより、その対象とする事業場へ是正を行うよう勧告する行政
指導の一つです。この勧告自体は命令とは異なりますので、それを持って直ちに法律
違反とされ罰則が適用されるわけではありません。但し、だからといって報告を行わず
放置しておけば立ち入り調査(臨検など)が行われる可能性もありえますし、ましてや
虚偽の報告を行えば検察へ送検される恐れもあります。また、労働者は労働基準法違
反事業場について労働基準監督官へ申告することも認められており、その申告により監
督指導がされることも当然あります。平成15年度定期監督(労働行政の監督業務として
計画的に行われている)について埼玉労働局では賃金不払残業の増加が見られると
まとめており、平成16年度も引き続き賃金不払残業に対する監督指導を重点的に取り
組み、賃金不払残業を行わせている事業場に対しては司法処分等も含め、厳正に対応
するとの方針です。
<参考リンク>
埼玉労働局における平成15年度監督指導等の状況(埼玉労働局)


労務管理は労使協調の維持・向上を前提とする環境基盤整備として行うべきと考えます
が、トラブルの防止・対応などとして考えても労働条件の最低基準を知り、改善し適正化
を目指して行くことは企業防衛という観点から見ても重要事項となります。



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