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 1年は早いもので、社会保険の算定基礎届の季節だ。この数年間、年金事務所より算定基礎届にあわせて調査をしたい旨の通知がくるようになった。その通知には『厚生年金保険の適正化を図るため数年に一度会場に来ていただき算定基礎届や賃金台帳等を確認する定時決定時調査を行っております。』というようなことが書かれており、持参書類として、社会保険に加入している被保険者だけでなく、パートタイマーを含む従業員全員の賃金台帳(過去1年分)、出勤簿又はタイムカード(過去1年分)、源泉所得税領収証書(過去1年分)を指定している。
 とある年金事務所によれば、この調査の応諾は任意ではない(義務があり断れない)ということなので、その根拠はなにかと聞いたところ、厚生年金保険法第百条、健康保険法第百九十八条にあるということだった。そこには以下のことが書かれている。
 『厚生労働大臣は、被保険者の資格、標準報酬、保険料又は保険給付に関する決定に関して必要があると認めるときは、事業主に対して文書その他の物件を提出すべきことを命じ、当該職員をして…帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。』
 ここで問題が2つあることがわかった。

   ①
調査権限を有するのは厚生労働大臣であって、年金事務所(日本年金機構)にはその権限がないのではないか。
   ②
この調査には罰則が担保(正当な理由なく調査を拒否した場合は6月以下の懲役、又は50万以下の罰金)されており、実質的に国民に受忍義務を課すものである。定期的に全事業所を対象として行われる定時調査にこのようなことが適用されるはずなく、条文にある『必要あるとき』に限定されるべきではないだろうか。

 ①の点に関して問いただしたところ、厚生労働大臣の調査権限は認可(認可権限は関東信越厚生局長に委任されているそうだが)があれば年金事務所(日本年金機構)が調査をできることとなっており、その認可はすでに受けているとのことだ。②の点に関しては、その年金事務所によれば受ける義務(受忍義務)があるというので、①②に関して更に以下のような質問をした。

 厚生年金保険法第百条、健康保険法第百九十八条による調査は、罰則を担保として実質的に国民に義務を強いるのであるから、その行使は条文の中の『必要があると認めるとき』に限られるべきである。この『必要があると認めるとき』は、例えば対象事業所に法違反の疑いがある事実があるというような、客観的に合理的な理由がある場合、個別具体的な事情がある場合に限られるべきであり、数年に1度、算定基礎届のときに行われる定時調査はこれにはあてはまらないのではないか。厚生労働大臣より認可をうけたとしているが、いかなる客観的に合理的な理由にもとづいて認可を受けているのか教示していただきたいと。
 このことに対する返答は『対象となった会社に関して、客観的に合理的な理由があると認められないので、今回の調査は厚生年金法第百条一項、健康保険法第百九十八条第一項で定めるものではない。』というようなものであった。ということは、算定基礎届時に行われる『全事業所を対象とした調査』に応ずるか否かは、『客観的に合理的な理由』の基いてなされた厚生労働大臣(関東信越厚生局長)の認可がない限り、任意であるということだ。
 以上のような、とある年金事務所とのやり取りにより、今後算定基礎届時の定時決定調査依頼へどう対応すべきか、大いなる教訓を得ることができた。
 ちなみに、厚生年金法第百条一項、健康保険法第百九十八条第一項と趣旨を同じくした所得税第234条で定める調査に関する判例(最高栽昭和48年荒川民商事件)には、この『必要あるとき』について以下判示しているので、参考にすべきでしょう。

 『国税庁、国税局または税務署の調査権限を有する職員において、当該調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁内容、帳簿等の記入保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事情に鑑み、客観的な必要性があると判断される場合には、前記職権調査の一方法として、同条各一項各号規定の者に対し質問し、またはその事業、書類その他当該調査事項に関連性を有する物件の調査を行う権限を認めた趣旨であって…。』(2014.6.13)
 もし、労働基準監督官から1年前から現在までの、全従業員の時間外労働割増給与(残業手当)を計算して支払えという是正勧告を受けたらどうだろうか? 儲かっている会社だったらどうということもないかもしれないが、今の厳しい経済状況で損益ギリギリか、赤字を強いられている会社では、それこそ存亡の危機に陥る。
 1年間の残業代支払という是正勧告を受けた会社から相談を受けた。この会社は、管理職手当や諸手当の中に、見込んだ残業時間に対応する残業手当を含めて支払ってきたので、納得できないということだ。聞けば従業員との信頼関係も良好で、従業員にとってみれば月々支給される給与は、残業代込と割り切っている。だが、管理職手当や諸手当の中に残業代が含まれているという合意は口頭で行っただけで、それを裏付ける就業規則、雇用契約書、合意書はない。だから、労働基準監督官からすれば法律違反で、残業代未払いということになる。他に残業協定の届け出をしていないなどの労働基準法違反があったので、悪質とみて、厳しい是正勧告をしたのだろう。
 受けたほうはたまったものではない。基本給に加算して、諸手当という方法で、残業代を支払ってきたはずなのに、二重払いを強いられてしまう。しかも、残業代計算の基礎となる時間単価計算に、残業代である諸手当が算入されるので、金額もはね上がってしまう。従業員もびっくりしてしまうだろう。もらっていたはずの残業代を、またもらえるのだから。
 1年分の残業代を計算してみたら、1千万円を上回る数字がでてきた。これを全額支払ったら、会社が立ち行かなくなることは目に見えていたので、ある方法で支払を大幅に縮小して、この危機からなんとか逃れることができた。
 この会社のように、手当という方法で残業代を支払い、また従業員も了解しているにもかかわらず、外形(手当に時間外手当が含まれている旨の就業規則、雇用契約、合意書)が整っていなければ、法律違反ということで、過去に遡って残業代支払の是正勧告を受けてしまう。残業協定の届け出をしていないなどの労働基準法違反があれば、遡及期間はより長くされる。また退職した従業員が、弁護士を代理人として過去2年間の残業代請求をしてきた場合、外形が整っていなかったら、敗北は必至だ。災難は、いつやって来るかもしれない。
 どのような監督、勧告や、理不尽な過去の残業代請求もはね返せる制度の整備がいかに必要か、痛感した。(2012.9.7)
 今、『消費者金融等への過払い請求』ブームが終息にむかいつつある。過払い請求とは、消費者金融等貸金業者が定めてきた貸出し利率が、出資法の上限利率(年29.2%)に依ってきたが、それが利息制限法の上限利率(貸出金額により、年15〜20%と定められている)に抵触し、大幅に超えていることから発生した。
 最高裁判例によりこの金利の差は不当利得ということになり、利息制限法の上限利率より高い利率で消費者金融等貸金業者から借り入れた人は、返還請求することができ、取り戻すことができるわけだ。しかし、この取り戻す作業は素人ではなかなか難しいらしく、ここで出番とばかりに一部の弁護士や司法書士が、群がって仕事を発掘してきた。彼らは、その取り戻した金額の一部を成功報酬として得ているが、補助者を使えば一度に大量に処理できることもあり、かなりの収入になるらしい。
 平成22年4月25日付の東京新聞によると、債務整理件数が国内最大規模のある法律事務所では
 1.依頼者からの電話受付
 2.債務状況の聞き取り
 3.貸金業者への受任通知発生と取引履歴開示請求
 4.利息制限法に基づく債務の再計算を外部に委託し、債務整理を大量に処理している
ということだ。また、成功報酬についてもトラブルが発生しているらしく、まさに債務整理が金儲けの手段と化しているような状況になってきた。
 だから、電車広告、ラジオ、テレビ、個別投げ入れビラと派手に宣伝が流され、返還金請求バブルといえるような状況になっていた。しかし、平成22年6月18日には、貸金業法が完全施行され、出資法の上限利率が20%となり、完全にグレーゾーンがなくなった。金銭貸借について正常なルールができるということだが、これは同時に一部の弁護士や司法書士にとってみれば、過去のグレーゾーンによって発生してきた利息の過払い請求という『おいしい仕事』がなくなっていくということ、大きな収入源がなくなるということを意味する。だから、ブームは終わりつつあるのだ。
 次の『おいしい仕事』を捜すのが人間の性だろうか?一部の専門家が、次の収入源(おいしい仕事)として、『サービス残業や管理職等に関する時間外労働手当請求』が検討しているようだ。もうすでに、ホームページで、未払い残業代請求を掲げているものが、多数見うけられ、ラジオで未払残業に関する宣伝を聞いたことがある。
 これは、企業に時効にかからない2年分の未払い残業手当請求、及び利息請求を求めるもので、訴訟をも視野にいれているものだ。訴訟になった場合は、未払い賃金と同額の労働基準法第114条による付加金請求を求めてくることは必至だ。
 『残業手当を営業手当として支払っているから大丈夫だ』『管理職には管理職手当の中に残業代が含まれているから払う必要がない』と安心していたら、退職者が選任した代理人たる弁護士から『残業代支払請求』の内容証明郵便がきて青ざめたなんてことが、これから頻繁にあるかもしれない。一部の弁護士等の専門家は、ビジネス(金儲けの手段)として割り切り、会社の経営がどうなろうと関係ないだろうが、これで数百万、数千万も支払わされては、現在の厳しい経済環境で経営が立ち行かなくなることもあるだろう。場合によっては、会社存亡の危機に陥るかもしれない。
 事実、『消費者金融等への過払い請求』により、消費者金融大手のアイフルが経営困難に陥り、平成21年9月に事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)の申し立てを行わざるをえないほど、消費者金融各社は追い詰められた。
 例え管理職手当、営業手当、業務手当等に残業手当分を含まれているという労使の暗黙の了解があったとしても、いざ退職者等から請求があった場合、就業規則、労働契約にその根拠がなければ到底対抗できない。これは就業規則等社内制度の不備によるものだが、残念ながら法違反として多大な出費を強いられることになる。しかし、法にもとづいて企業を防衛できる方法はいくらでもあるはずだ。また、労働時間の変形性を使えば、無駄な残業時間が削減できることも考えられる。とにかく訴えられてからでは遅いのだ。
 従業員にとっても、納得のある給与体系は必要です。万が一消費者金融等への過払い請求という対岸の火事が押し寄せる前に、そうならないにしてもリスク回避と円満な労使関係構築のために、給与体系を見直すことをお勧めします。
 ご心配なことあれば、ぜひご相談ください。(2010.9.21)
 日本の年金制度は昭和17年6月。このときから、民間会社で働いていた現業の男子に厚生年金が適用されるようになり、その2年後の昭和19年10月より事務職の男子や、女子にその適用が拡大された。
 これを聞いたら、『えー戦時中に年金制度がはじまったの!』と驚かれるのではないでしょうか。実をいうと、この戦時中の年金が、『消えた年金問題』の一つの大きなファクターとなっている。
 戦時中に開始、年金制度の創設には、国の『戦費調達』という動機が強く働いたのではないだろうか。集まった『保険料』は戦争という事業(戦費)に投資され、つぎ込まれたのだろうが、給付の対象が老齢であり、巨額の保険給付が必要となるのは『遠い将来』であるということから、その給付の設計が軽んじられていたに違いない。(積立て金がなくなれば、現役世代が保険給付を支える、賦課方式にすればよいと考えていたのかもしれない。)そして、その体質は、戦後も受け継がれたのではないだろうか。
 敗戦、および戦後の混乱によってそのつぎ込んだ保険料(戦費)はほぼ無に帰したであろうが、保険給付義務だけは残った。しかし、その年金の存在を当時の労働者(軍事工場徴用がかなり多いと思われる)の中で、どのくらい認識されていただろうか。
 戦後の混乱、再建への、国をあげてのダイナミックな動き、そして度重なる年金制度の変更のなかで、『戦中年金』世代の大多数が老齢年金受給世代となった昭和50年から60年のころには、『戦中年金』の存在がほぼ忘れられてしまっていたのではないだろうか。もっとも戦中の年金加入分をもらおうとしても、戦後確立された年金制度での自分の年金番号と違う番号となっていたため、戦中の年金記録を探し出すのは至難の技だし、また国もあえて、その『戦中年金のもらい忘れ』防止の努力もしなかった。
 それがここ数年の『消えた年金』問題でクローズアップされた。しかし、戦争が終わってから64年が経過した。終戦当時20才であった者も、今年(平成22年)で85才。男であれば、平均寿命をとうに超えている。また、存命だとしても、自分が何年頃、どこで、なんという会社で働いていたのか思い出すのは、かなり困難だ。当時の年金記録は紙台帳で保管されているということなので、何年頃、どこで、なんという会社で働いていたのかという申告がないと年金記録は捜しだせないということだ。
 また申告をしたとしても、最低数ヶ月はかかるらしい。存命中に年金を受け取るという意味では、あまり時間がないのにだ。しかし、『自分の年金記録』がわからずに請求できなかった年金に関しては時効が撤廃され、受給権が生じたときから現在までの年金は全て保証されることとなった。また、例え亡くなっていても、遺族がそれを受給できる。もしもらえることになれば、かなりの額になるので、あきらめてしまうのは、もったいない。
 困難はあるが、身のまわりに戦中、戦後の困難な時期にがんばったおじいさん、おばあさんがいれば、その頃の様子を聞いて、年金加入歴がありそうだったら、調査してみたらいかがでしょうか?
 不明なことがあれば、ぜひご相談ください。(2010.5.24)

 

小渕社会保険労務士事務所  特定社会保険労務士 小渕 匡高(こぶちきよたか)
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