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 就業規則は、10人以上の事業場は労働基準法により作成、届出が義務づけられているので、10人以上の事業所ではほとんど備え付けられていると考えられています。しかし金庫や机の中にしまってあったり、文房具店から買ったものをそのまま使っていたり、あるいはホームページなどからひな型を引っ張り出してそのまま使っていたり、作成したはいいが1回も見直したことがない、といったことが頻繁にあるとよく聞きます。就業規則の作成、備え付けが労働基準法によって義務付けられているから仕方なくやっているという考えをしていることが、背景にあるようです。
 また、経営者の中には、就業規則は法律で決められたものであり、仕方なく作っていると、就業規則を消極的に考えている方もいらっしゃるようです。
 しかし、平成20年3月1日付けで施行された労働契約法では、就業規則を以下のように定めています。
 『労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。』
 これをみていただければわかるように、就業規則は単に労働時間等の労働条件を定めたものでなく、まさに労働契約の内容そのものであると位置づけられています。でもよくよく考えてみるならば、就業規則は使用者の一方的な意思で定めることができるので、何故これが労使相互の合意による労働契約になるのか疑問が生じます。
 契約は双方の合意によってなされるという近代法の精神に反していますし、『労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする』とする他ならぬ労働契約法の考えにも矛盾しているようにも見えます。
 しかし、労働者が事業場で複数勤務している以上、その規律秩序を維持するため労働条件一般を集団的に定めてきた就業規則は、例えそれが使用者の一方的な意思により定められたものだとしても、その内容が合理的でありかつ労働者に周知されているならば、労働契約として認めるというのが司法で培われた考え方であり、それが労働契約法に反映されたようです。ただ、気をつけなければならないのは、就業規則が労働契約となるためは『その内容が合理的であり、かつ労働者に周知されている』という要件を満たさねばならないことです。
 この合理的という要件はあまりにも抽象的なので、少々やっかいです。この合理的かどうか、その是非を最終的に決定するのは司法です。それは個別事案毎に審査されていますので、その個々の内容を述べることはできませんが、法に抵触しないのは当然だとして、経営者が経営上必要とする通常の労働条件であり、労働者に過剰な不利益をもたらすものでなく、また公序良俗に反することなく、社会通念上相当であれば、言い換えれば社会の考え方に合致していれば合理的な内容となると思います。従って、合理的でない場合は、無効(効力がない)とされます。例えば、『他の会社等に雇用され勤務することは禁止する。違反した場合は懲戒処分にする。』といったいわゆる就業規則の兼業禁止規定に関する裁判例では、兼業により疲労が蓄積して業務の遂行に支障が生ずるおそれがある場合や、兼業先が同業他社(ライバル)のため事業の運営に悪影響が及ぶ場合、あるいは兼業することにより事業の名誉が傷つけられる場合等に限定して懲戒処分が許容されるとし、兼業した場合は無条件に懲戒処分に処するとする規定は、労働者に過剰な不利益をもたらし、合理的でないとされ、無効とされたものもあります。
 それではもう一つの要件である周知とは、どういうことでしょうか。
 就業規則の不利益変更の場合は、その不利益の内容がわかるように説明しなければ周知したことにならないというきびしい裁判例もありますが、一般的には労働者がいつでもその内容をみることができるようにしておけば(例えば職場のわかりやすい場所に常時おいておく)、周知義務をはたしたことになるでしょう。従って、就業規則を机の中にしまっておいたというのではこの周知義務をはたしたことになりませんので、効力がないということになり、その就業規則は労働契約の内容とはなりません。
 このように内容が合理的で、かつ労働者に周知していれば、労働契約の内容になると労働契約法で認められた就業規則の役割は今後ますます大きくなるでしょう。
 就業規則は、内容が合理的で、かつ労働者に周知していれば、労働契約となり、そこに記載があれば時間外労働命令権、懲戒処分権、配転命令権等の経営者の各権限が認められます。また、経営者の考え方、理念を従業員に浸透させるツールとなります。また、万が一紛争が生じたときに、企業を守る防波堤にもなります。
 雇用形態が多様化し、『名ばかり管理職』問題、『非正規雇用』問題といったような労働問題が複雑化する現在だからこそ、時代の流れにふさわしいように就業規則を見直すべきでしょう。

 

小渕社会保険労務士事務所  特定社会保険労務士 小渕 匡高(こぶちきよたか)
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