労働契約法では、平成25年4月1日以降有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合は、当該有期雇用労働者の申込みにより、期間の定めに転換される仕組み(無期転換ルール)が導入されました。これに関して、定年後に再雇用された者にも適用されることには疑問があるとの意見がありました。本年4月1日より、定年後再雇用者および高度専門職は、この無期転換ルールの適用外とすることを定めた有期雇用特別措置法が施行されました。この適用外の対象となるためには、『雇用管理措置の計画』を作成し、都道府県労働基準局の認定を受けることが必要となります。
①
国により行われているキャリアアップ助成金(有期契約雇用労働者を正規雇用等に転換した場合)の助成の概要は以下のとおりです。
有期契約労働者を正社員にした場合 50万円(40万円)
有期契約労働者を無期契約社員にした場合 20万円(15万円)
無期契約労働者を正社員にした場合 30万円(25万円)
※上記金額は中小企業、( )内は大企業の額。
◆中小企業とは以下のとおりです。
小売業 資本金5千万以下または常時雇用する労働者の数が50人以下
サービス業 資本金5千万以下または常時雇用する労働者の数が100人以下
卸売業 資本金1億円以下または常時雇用する労働者の数が100人以下
製造業等その他業種
資本金3億円以下または常時雇用する労働者の数が300人以下
※上記金額は平成28年3月31日までとなり、以降は変更される予定です。
②
上記助成金の支給申請をした2か月以内に東京都に支給申請すれば、東京都より以下のような上乗せ(東京都正規雇用転換促進助成金)を受けることができます。有期契約労働者を正社員にした場合、中小企業では100万円受給できます。
有期契約労働者を正社員にした場合 50万円(40万円)
有期契約労働者を無期契約社員にした場合 20万円(15万円)
無期契約労働者を正社員にした場合 30万円(25万円)
※上記金額は中小企業、( )内は大企業の額。
※上記措置を行う予算には限度があります。
60歳定年後希望者全員を65歳まで再雇用することを義務付ける改正高年齢者雇用安定法が、8月29日に成立しました。施行日は平成25年4月1日です。
改正の大きな柱は60歳定年後、高年齢者雇用確保措置のうち再雇用制度を選択している事業所においては、60歳定年に達した者が希望した場合は65歳までの雇用を義務づけたことです。しかし、いきなり希望者全員の65歳再雇用義務というのではなく、以下のスケジュールにそって65歳まで段階的にもっていこうとするものです。
平成25年4月より
61歳までの希望者全員再雇用義務づけ(61歳以降は再雇用基準で選別できる。)
平成28年4月より
62歳までの希望者全員再雇用義務づけ(62歳以降は再雇用基準で選別できる。)
平成31年4月より
63歳までの希望者全員再雇用義務づけ(63歳以降は再雇用基準で選別できる。)
平成34年4月より
64歳までの希望者全員再雇用義務づけ(64歳以降は再雇用基準で選別できる。)
平成37年4月より 65歳までの希望者全員再雇用義務づけ
これは、平成25年4月から男性の老齢厚生年金報酬比例部分の受給開始年齢が61歳に引き上げられ、以降段階的に65歳まで引き上げられるのに伴い、給与も年金もない「空白」期間を回避することが目的と考えられています。この改正により、60歳以降の再雇用は、労使協定の定める基準によって再雇用対象者を選別する方法を選択できなくなるわけです。
ただし激変緩和措置がとられ、平成28年3月まで61歳以降の再雇用、平成31年3月まで62歳以降の再雇用、平成34年3月まで63歳以降の再雇用、平成37年3月まで64歳以降の再雇用については、現行の労使協定の定める基準によって再雇用対象者を選別できます。
この改正は企業にとって大きな負担になると予想されるので、60歳以降の賃金、従事業務、勤務時間等全ての再検討が必要とされます。なお、厚生労働省は今後、勤務態度や健康状態が悪い人を希望者全員再雇用の対象外にできる指針を作る方針ということですが、その内容に注目したいと思います。
有期労働契約期間が5年を超えて更新されたとき、労働者が使用者に申し込むことにより、無期労働契約にすることを使用者に義務付けることを柱とする改正労働契約法が8月10日に公布されました。
主要な改正点は以下の3点です。
1.
有期労働契約期間が5年を超えたとき、労働者が使用者に申し込むことにより、使用者に有期労働から無期労働に転換することが義務付けられたこと。
※
有期労働契約期間が5年を超えたときとは、更新した労働契約中に契約通算期間が5年を超えることが見込まれる労働契約の初日以降をいいます。
例 1年契約の更新の場合は5回目の更新の初日以降が、5年を超えたとき
3年契約の更新の場合は2回目の更新の初日以降が、5年を超えたとき
2.
有期労働契約が反復更新により無期労働契約と実質的に異ならない状態にあるとき、または有期労働契約の継続について、合理的期待が認められる場合には、その雇用契約の打ち切り=雇い止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときであり、労働者が雇用契約更新の申し込みをした場合は、従前の雇用契約の継続を承諾したものとみなす。(雇用契約の打ち切り=雇い止めは無効)これは最高裁判所の判例を法律にしたものです。
3.
期間の定めがあることによる、無期契約労働者との不合理な労働条件の相違の禁止。
2 は公布日(8月10日)に即日施行されましたが、 1 と 3 の施行は公布日から1年以内の政令で定める日(平成25年春が有力といわれている)となっています。また、経過措置により
1 で定める5年を超える労働契約の起算点は、施行日以降の初めて締結した労働契約、更新した労働契約の初日とされています。仮に、この規定が来年4月1日に施行された場合、一番早い起算点は同日ということになり、1年ずつ契約更新を続けた場合、実際に申し込みの権利が発生するのは平成30年4月1日以降となります。実際に問題が生じるのは先ですが、あと5年もあるから対策はいいというのは考えものです。契約社員の側からすると正社員への期待が大きくなるということもあるので、早いうちからの対応が必要です。
この法改正は、いわゆる『少子化対策』『仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)』のためになされものです。就業規則の変更等、法改正に対応する必要があります。主な改正事項は以下のとおりです。ただし、1、3、4に関しては、常時100人以下の労働者を雇用する事業主であれば、平成24年6月29日までは適用猶予となっています。
1.短時間勤務を認める制度の義務化、所定時間外労働の免除
現行法では3才までの子を養育する労働者について7つの措置(短時間勤務、フレックスタイム制の導入、所定時間外労働の免除、始業・終業時刻の変更、事業所内託児施設の設置運営、事業所内託児施設の設置運営に準ずる便宜の供与、育児休業に準ずる制度の創設)のいずれかを講じることを義務付けています。
今回の改正においては、3才までの子を養育する労働者について、7つの措置のうちの短時間勤務制度(就業時間を少なくとも6時間とする)を設けることを事業主の義務(ただし給与の支払義務はない)としました。また、労働者の請求があれば所定時間外労働を免除しなければならなくなりました。(現行法では、小学校就学前の児童を養育する労働者が請求した場合は、法定時間外労働が月24時間、年150時間まで制限され、かつ深夜労働をさせてはならないこととなっています。)
2.看護休暇制度の改正 現行法では、小学校就学前の子の病気等の看護のため年5日の看護休暇の付与が義務付けられています。(ただし給与の支払義務はない)今回の改正においては、看護休暇の日数を小学校就学前の子の人数に応じたものとし、小学校就学前の子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日と増やされることとなりました。
また、看護休暇の取得理由が、今までは子の看病に限られていたところ、今回の改正で次の2点は追加されました。
・子に予防接種を受けさせること。
・健康診断を受診させること。
3.育児休業期間の延長 現行制度では、育児休業期間は原則1年間(母親の育児休業の場合は産後期間を含めて1年間)となっています。(ただし保育園がみつからない等特別な事情がある場合は、子が1才6ヶ月に延長できる。)
今回の改正においては、男性の育児休業を促進させる観点から、父母が共に育児休業を取得する場合、育児休業取得可能期間を、子が1才2ヶ月に延長できることとなりました。ただし、父母それそれが取得できる期間の上限は現行と同様1年です。(母親の育児休業の場合は産後期間を含めて1年間)また現行制度においては、1度育児休業を取得したことがある労働者は、配偶者の死亡等特別な事情がない限り再度の育児休業申出はできないこととなっていますが、それが改正されました。妻の出産後8週間以内の期間における男性の育児休業取得を促進させる観点から、この期間内に男性が育児休業を取得した場合には、特別の事情がなくても、再度の取得が可能となりました。
4.介護休暇の創設 現行制度では、要介護状態にある対象家族1人につき通算して93日の範囲内で、介護休業の取得が認められているが、今回の改正で、現行の介護休業とは別に、要介護状態にある家族の通院の付き添いなどのため、短期の介護休暇制度が創設されました。
要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者は、一の年度(事業主が別段の定めをする場合を除き4月1日より3月31日)において、5日(要介護状態にある対象家族が2人以上であれば10日)の介護休暇の付与が義務付けられました。(ただし給与の支払義務はない)
※
育児休業取得者が初めてでた中小企業主(従業員100人以下)には、中小企業子育て支援助成金があります。具体的には育児休業取得者が平成24年3月31日までに初めて出る場合、1人目には100万円、2人目〜5人目には80万円支給されるというものです。ただし、一定の要件を満たす必要があるので、興味ある場合はご連絡いただければ幸いです。
※
少なくとも3歳の子を養育する労働者(100人以上の規模の企業にあっては少なくとも小学校就業の始期までの子を養育する労働者)が利用できる短時間勤務制度(1時間以上の時間短縮)を設け、実際に6ヶ月以上の短時間勤務をした者がでた場合は、以下の両立支援アップ助成金が支給されます。ただし、一定の要件を満たす必要があるので、興味ある場合はご連絡いただければ幸いです。
●従業員数100人までの企業
最初の短時間勤務者が出た場合100万円
2人目〜5人目の短時間勤務者が出た場合は80万円
●従業員数100人〜300人までの企業
最初の短時間勤務者が出た場合50万円
2人目〜10人目の短時間勤務者が出た場合は40万円
●従業員数300人以上の企業
最初の短時間勤務者が出た場合40万円
2人目〜10人目の短時間勤務者が出た場合は10万円
1.対象者
特定受給資格者(倒産や解雇等による離職)、特定理由離職者(有期雇用契約の雇止め等による離職)として失業給付を受けている人が対象となります。
2.軽減額
国民健康保険料は、前年の所得等により算定されますが、本制度適用対象者については、前年の給与所得をその3割とみなされ、それにより保険料負担がかなり軽減されることとなります。
3.軽減期間
離職の翌日から、その翌年度末までの期間となっており、雇用保険の失業給付を受ける期間とは異なります。軽減期間中に再就職し健康保険に加入した場合は、国民健康保険の資格は喪失となりますので、本制度の適用は終了となります。
4.予想される離職理由をめぐるトラブル
本制度により、失業給付内容に加えて、国民健康保険料の負担が雇用保険の離職理由により大幅に異なる(優遇される)ことになるので、雇用保険の離職理由をめぐるトラブルが従来以上に多発することが予想されます。
1.時間外労働手当割増率のアップ
現在は時間外労働手当割増率は2割5分以上となっていますが、平成22年4月1日より時間外労働が一月60時間を超えた場合は、超えた時間の時間外労働手当割増率は5割となります。また、45時間以下の時間外労働割増率は従来どおりですが、45時間超60時間未満の割増率は2割5分を超える率にするよう努力義務が課せられました。
ただし、中小企業への適用には猶予措置が設けられており、法の施行に関しては3年経過後に改めて検討されることになっています。
2.年次有給休暇が時間単位で付与 これまでは年次有給休暇は1日単位(就業規則等で定めあれば半日単位も可能)であったのが、従業員を代表する者との労使協定を締結すれば、5日を限度に時間単位で付与することが可能となりました。工場等のラインで仕事をしている場合で、時間単位で与えることのデメリットがあまりにも大きい場合は、導入はお勧めできませんが。
いわゆる非正規雇用者のセーフティネット対策として雇用保険の被保険者の適用範囲が
1.31日以上の雇用見込みがあること
2.1週間の所定労働時間が20時間であること になりました。
ちなみに以前の雇用保険の被保険者の適用範囲が
1.6ヶ月以上の雇用見込みがあること 2.1週間の所定労働時間が20時間であること
なので、適用対象者は大幅に増大すると思われます。
また事業主から雇用保険料を天引きされていたことが給与明細書等の書類によって確認された場合は、2年以上遡ってを雇用保険の資格確認を受けることができました。ちなみに以前は資料があっても、資格確認は2年前まででした。但し、この措置は公布日(平成22年3月31日)から9ヶ月以内となっていますので、実施はいま少し先です。他に雇用保険料率のアップが実施されます。
緊急少子化対策として、平成21年10月より平成23年3月31日までの間、出産一時金が4万円引き上げられることとなりました。これにより、産科医療補償制度に加入している病院で分娩した場合は、出産一時金は38万円から42万円に引き上げられます。
また、出産一時金は、原則として各医療保険者から病院などへ直接支払われるようになりました。ただし、希望すれば直接被保険者本人が受けることができます。
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