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DP-750プレーヤ試聴

 今日は2020年の1月2日。1971年から会社勤めを始め、今年で49年。途中何度かブランクがあったとはいえ、半世紀近い会社生活をこの3月で終えることにしました。ともかく出張の多い仕事で、昨年は延べ4か月強の海外出張で、演奏会もままならない生活から抜け出したいという気持ちに加え、最後の仕事と位置付けていた地上システムの開発も一段落し、一区切りついたということが大きな要因です。さて久々のレポートですが、暮れから借用していたアキュフェーズのCDプレーヤ、DP-750の試聴報告です。
 実はこれに先立ち、2015年に一新されたB&Wの802D3を試聴し、そのあまりの違いに大いに刺激されたわけですが、新型802Dといっても、すでに発売から4年。そろそろバージョンアップの時期でもあり、スピーカはしばらく様子を見ることにし、一方でCDプレーヤもK-01を購入して8年経過しており、最新の音を聞いてみたくなり、DP-750の自宅試聴を依頼したという次第。現機種がエソテリックゆえ、順当ならばK-01Xsとなるところですが、何しろ価格差が40万もあり、かつステレオサウンドではDP-750の評価が高く、まずはアキュフェーズを聞いて、それで良ければ乗り換えるのも手かと思い、まずは聞いてみることにしました。

 さて、その音ですが、K-01を聞いた時のような大きな違いはありません。最初のCDは802D3の試聴でも使ったヘレヴェッヘ、コレギウム・ヴォカーレ・ゲントのクリスマスカンタータ集のBWV110「笑いはわれらの口に満ち」。管弦楽組曲第4番の序曲と同じ曲ですが、管弦楽、合唱、そして独唱まで何でも入っていて、試聴にはぴったりの曲ですが、もちろん聴いて楽しい曲であることはいうまでもありません。

一聴して感じるのはステージが広がること。しかし、音そのもの、つまり分解能とか、レンジ感とかはさほど違いがありません。言い換えればK-01は8年経過してもなお、性能的には遜色ないということです。もっと圧倒的な差が出ると思っていたので、これは意外でした。以前、といってもすでに12年も前ですが、アキュフェーズのDP-800+DC-801を聞いた時、低音の締まりがなく聞こえたのですが、DP-750の解説によると、ドライブメカが相当に強化されているようで、その効果でしょうか、K-01との比較でも低域が弱いと感じることはありません

 続いて、これも最近の試聴で良く使うプレトニフのベートーベンピアノ協奏曲第1番。こちらも同じで、音楽の表現は異なるものの、音質には大きな差は感じられません。となると、またK-01に戻して聞いてみたくなります。最初はK-01を置いているラックのところにDP-750を入れていましたが、そうなると、簡単には入れ替えができません。幸いなことに、DP-750の出力端子は裏面の右側に寄っており、ラックの外においても、DG-48との接続に問題ないことがわかりました。そこで、下の写真のように、パワーアンプの横において、バランスケーブルの抜き差しだけで、入れ替えができるようにしました。
 何度か入れ替えているうちに、気づいたのは、DP-750の再生する音楽が新鮮に聞こえること。つまりオーディオ的観点からすれば差はないのですが、音楽の力感や各楽器の存在感があって、とても生き生きとした音であるということ。一方のエソテリックは生真面目というか、もちろんここぞという時の迫力はありますが、全体的にはおとなしい印象を受けます

 これは最近のアキュフェーズの音が変わったと言われる所以で、非常に積極的な音楽を聴くことができます。空間的広がりについては、以前からアキュフェーズのCDプレーヤの特徴ですが、エソテリックのように求心的ではなく、各楽器がその存在を主張するような聞こえ方となります。エソテリックはワイドレンジを感じさせるすっきり系の音、片やアキュフェーズはのびのびとして、弾力に富んだ音というところでしょうか。いわば、エソテリックが絹こし豆腐とすれば、アキュフェーズはプリン。ワイドレンジ感は引っ込み、音楽を楽しく聞かせるというところで優位差を感じます。

そういった差が良くわかるのが声楽、それも合唱曲で、これまたヘレヴェッヘのロ短調ミサ。K-01は隅々まで澄んだ合唱を聞かせるのに対して、DP-750は肉声を感じさせるもの。その違いは良い悪いではなく、好みの問題ですが、エソテリックがさらに先にある音を思わせるのに対して、DP-750はこれで完成された世界を感じさせます。

 ところでこのDP-750ですが、変則的配置、つまりリスナーから90度横を向いているにも関わらず、リモコンが使えます。 赤外線と思いますが、光も回り込む性格があるようで、これは非常に便利でした。最近はオーディオもすっかり熱が冷めて、というよりも現状に満足な状態でしたので、こんなに集中して聞いたのは久しぶりです。ただ、結果的にはDP-750に代えるだけの大きな差異は認められず、安心するとともに、もしかしたら、差を感じないのは自分の耳の劣化のせいではないかとの不安も生じました。とはいえ、新型802D3を聞いた時は、リスニング環境の違いにもかかわらず、現用802Dとの差は明瞭に聞き取れましたので、やはりCDプレーヤの違いがさほど大きくないということなのでしょう。その観点では、CDプレーヤより、スピーカの方を優先した方が、総合的に良い結果をもたらすことは間違いないと思います。
 ことCDプレーヤについては、まだK-01Xsを聴いていないので、なんとも言えませんが、自分にとってはエソテリックの方が好ましい、というのが今回の比較試聴の結果で、オーディオというのはやはり自分の耳で聞かないと判断できないということを再確認することになりました。オーディオというのは音楽を楽しむための道具ですから、音楽的とかオーディオ的とかいうこと自体、無意味な気もしますが、やはりオーディオ的快感を優先してしまうのは、オーディオマニアの宿命でしょうか。(2020年1月)